住宅・建築業界でデジタルツインの活用拡大
施工品質の担保、維持管理の効率化などに寄与
住宅・建築業界で、リアルな空間情報をリアルタイムにデジタルの仮想空間に反映させる「デジタルツイン」と呼ばれるソリューションの活用が拡大している。
建材商社、野原ホールディングス(HG)の野原住環境は、空間3D撮影サービス「INTO(イント)」を開始した。高性能な3Dスキャナーで建物の内観をスキャンし、WEBサイト・スマートフォン・VRゴーグルで、いつでもどこでも実空間を疑似体験するギャラリーを提供する。1500社以上のメーカーの商品を取り扱う野原HGのノウハウをもとに、様々な建材設備のデジタル情報などを空間にタグづけて組み込むことも可能だ。サービス提供の対象者は、建築事業者、不動産事業者で、企画から施工、集客、販売、維持管理まで、様々な段階での利用を想定している。不動産的な視点では、建築的な魅力の訴求を補い物件の集客・入居・販売を促進する効果が期待できる。建築的な視点では、現場調査時の正確な情報を共有することで、施工品質の信頼性を担保できる。将来的には、グループ会社で「BIMobjectクラウド」を通じて建材設備メーカー各社の製品に関するデジタルコンテンツを提供するBIMobject Japanと連携して、INTOの機能拡充も目指す。例えば、リアルな3D空間の中に、建材設備、家具などのデジタルコンテンツを組み合わせて、既存住宅の改修のシミュレーションを行うツールなどの開発を進める。
シンメトリー(米国デラウェア州)は2019年9月、建築・土木業界の業務効率化を目指し、NTTドコモと協力してデジタルツインを活用した共同実証実験を開始した。ドローンやレーザースキャナーで取得した大容量のデータを、第5世代移動通信方式「5G」を通じて、「ドコモオープンイノベーションクラウド」上に収集し処理することで、仮想空間上に現実世界の空間を再現する。VR・ARを活用することで、実寸かつ現実と同様の色や質感を立体的に再現し、遠隔地にいても現場にいるかのような環境を実現する。測量技師などは、現場に行かなくても再現された空間上でデジタルツインを活用して何度でも調査・測量ができるほか、現場指揮、未来予測などを行うことも可能で、大幅な業務効率化が期待できる。
2020年春から5Gの商用サービス化が予定され一層円滑なデジタルコンテンツのやり取りが可能になるだけに、住宅・建築業界においてもデジタルツインの活用が加速しそうだ。
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