2019.6.21

本誌記者が体験取材「セキスイハイムミュージアム仙台」

工場見学と展示場の機能が融合

セキスイハイム東北が4月に開業した「セキスイハイムミュージアム仙台」。これまでの成約率もまずまずと上々な滑り出しをみせている。工場見学と展示場の機能が融合したミュージアムは、家づくりを「体感的に」学べる施設で、「お客さんの疑問点を、その場で解消できるので、クロージングまで持っていきやすい」と松田東辰館長は手応えをつかむ。ミュージアムにはどんな仕掛けが施されているのか──。本誌記者が住宅購入希望者の視点から取材した。

セキスイハイムミュージアム仙台は仙台駅から徒歩3分の好立地にある。見学は予約制。訪れる見学者は、住宅展示場から誘導したり、ホームページを経由したりと様々だ。場所がら仙台市や周辺など宮城県内からの見学者が多いが、中には福島や岩手など他県からも。「遠方からの方には交通費を支給する」(松田館長)という。

受付

いつでも起こりうる災害

見学時間は1組約90 分。まず案内されるのが「日本の家づくりZONE」だ(写真①)。自然災害や地震災害を伝える「体験シアター」で地震の発生原因などを紹介。2011年の東日本大震災はもとより1978年の宮城県沖地震など、数度となく発生した地震を、パネルを使って説明する。特にこだわるのが地震の確率。東日本大震災では30年に1度起こる可能性を紹介。同時に16年に起きた熊本地震や昨年発生した北海道胆振東部地震など、これまで予期していなかった地震についても詳しく伝える。地震はいつでも、どこでも起こる可能性があることを示す。『頑丈な住宅を建てないといけないな。でもどんな建て方があるのだろう』。心の中で、こうつぶやく記者。

写真①

家の構造わかりやすく

そんな疑問点の解消を助けるのが「日本の家づくりZONE」にもう1つ用意されたエリアだ。ここでは、住宅の構造をわかりやすく紹介する。それぞれの持つ工法のメリット・デメリットも見学者に伝えるのも特徴の1つだ。最近の人手不足問題にも触れ、大工職人が、どれだけ大変なのかを紹介。建築物を建てる際に、建築基準法で許容されている傾きを、レールに数個あるパチンコ玉を転がし体験させるコーナーを用意。基準の傾斜範囲なら、すぐにレールの上で止まってしまう。こうした体験を見学者にさせ、家づくりの大変さの理解へ導く。『こんなに大工さんが大変な思いをしながら家をつくるのだから、大工さんを応援したい』。浪花節的な記者として一瞬頭によぎる。が、それ以上に記憶に残るのが冒頭に説明を受けた地震だ。工場で作られる品質の均一な工業化住宅への関心が沸く。『どのように住宅は作られるのだろう』

写真②

仮想の工場見学

次に案内されたのが「セキスイハイムの家づくりZONE」だ。セキスイハイム東北では住宅生産工場の見学も用意する。しかし、場所は宮城県亘理町にあり、仙台市から車で1時間程度かかる。セキスイハイムミュージアム仙台ではVRを導入(写真②)。生産工場に行かずに、製造工程が理解できる。本誌記者も頭からすっぽりVRを装着し、体験してみた。目の前には鉄骨が現れた。溶接され、住宅として組み上がっていく。そしてクレーンを使って土地に置くまでを映し出す。『なるほど。こうやって作るのか』と納得。さらにARを使って豪雪や寒波、地震などの災害が起こった際の仙台の街の様子をイメージ(写真③)。環境・災害リスクへの備えを再認識させる仕掛けだ。最後に控えるのは「未来の暮らしZONE」だが、VRやARといった最新技術にあまり縁のない記者にとっては、最後のゾーンに関心を持たせる伏線と思えた。

写真③

未来の暮らしを疑似体験

そして「未来の暮らしZONE」(写真④)。ここでは、AIスピーカーと家電の連動実演などIoT住宅の疑似体験ができる。また、将来の電力価格の上昇リスクや、万が一の自然災害へ備えるエネルギー自給自足の暮らしを映像と音声でわかりやすく解説する。ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の必要性や、セキスイハイムのスマートハウスをわかりやすく説明した。  『災害を意識し、それに対応する住宅』を押し出していると強く感じた。これまで100組がセキスイハイムミュージアム仙台に訪れ、16組が契約したという。松田館長は「20、30代が8割で、全国の展示場などと比べて引けを取っていない」と自信をのぞかせる。

写真④