サービスのカタチを変えるチャットボット

業務効率化の救世主となるのか!?


あらゆる業界において、チャットボットを活用し、業務効率化を図ろうという動きが目立ってきている。
果たして、チャットボットは、住宅業界でも業務効率化を促し、サービスのカタチを変えていく存在になり得るのだろうか。

そう遠くない将来、AIに多くの職業が奪われる―。こうした予測が現実味を帯び始めている。

2017年5月に経済産業省が発表した新産業構造ビジョンでは、大衆食堂店の店員や中低級ホテルの客室係、コールセンター、銀行窓口係といった低付加価値型の単純サービスに係る仕事は、人間ではなくAIやロボットが行うことになると指摘。この指摘を裏付けるように、2017年、メガバンク3行が合計約3万人以上の業務をAIなどで削減することを公表、大きなインパクトをもたらした。

AIに仕事を奪われるというネガティブな側面がクローズアップされがちだが、ますます深刻化する労働力不足のなかで働き方改革を遂行していくためには、低付加価値なサービスをAIやロボットに任せて、高付加価値なサービス提供へと人員をシフトしていくことが不可欠だろう。こうしたなか、業務効率化の救世主としてこれまで以上に注目を集めているのがチャットボットだ。

AMY AGENTの画面イメージ

住宅業界でも相次ぐ活用事例

チャットボットとは、対話形式で顧客対応を行うもの。その歴史は古く、1966年にマサチューセッツ工科大学で開発された「ELIZA」という自然言語処理プログラムが世界初のチャットボットだと言われている。

チャットボットには、大きく2つのタイプがある。ひとつは、あらかじめコンピューターに記憶させた情報のなかから、最適な答えを導き出し回答するもの。例えば、ある商品に関するFAQデータをインプットしておき、顧客からの問い合わせに応じて、最適な回答を過去のFAQデータから導き出す。このタイプのチャットボットについては、月額数万円という比較的低価格で利用できるものが多いが、インプットされたデータの中に最適な回答が見当たらないという事態も想定でき、顧客対応力という点で課題もある。

一方で最近になって注目度が高まっているのがAIを活用したチャットボットだ。機械学習などを活用しAIを学習させていくことで、様々な質問や問い合わせに対応できるようになる。ただし、利用コストは数千万円から億単位になることもあるという。AIソリューション「AMY」を展開するAutomagi(櫻井将彦社長、東京都新宿区)では、住宅・不動産関連企業のチャットボットを手掛けている。

同社が提供するチャットボットは、コスト的にはミドルレンジに当たり、本格的なAIを活用したオーダーメイドが可能なサービスとしては安価な部類に入るという。また、NTTドコモが提供するⅰコンシェルの受託開発で培った機械学習ノウハウをベースとした自然言語解析会話ソリューション「AMY AGENT」を利用することで、日本語ベースの高精度な回答判定を行うことができる。同社デジタルイノベーション部の鈴木英彦部長代理によると、「日本語は独自のゆらぎのようなものがあり、AIに学習させ難い言語。AMYはⅰコンシェルの受託開発で培った機械学習ノウハウがあり、日本語解析に強いAIであることが特徴のひとつ」と話す。

野村不動産アーバンネットでは、不動産情報サイト「ノムコム『住まいのAI ANSWER』」において、AMYを活用したチャット型Q&Aサービスを提供している。「物件をどうやって探せばいいの?」、「家を売りたいけど、何から始めたらいいの?」といった顧客からの問い合わせに対して、AIがチャット方式で即座に回答。住宅ローンの借入可能額もシミュレーションできる。

三井不動産レジデンシャルでは、AMYを活用した顧客コミュニケーションを展開(すでにサービスは終了)。同社が分譲する「パークタワー晴海」で、LINE上でAIを使いチャット形式で様々な質問などに対応するというものだ。利用者は個人情報を提供することなく、24時間いつでも物件に関する問い合わせなどを行うことができる。

低付加価値サービスを効率化し高付加価値サービスの充実へ

とくにLINEなどを用いたコミュニケーションに慣れている若い世代にとっては、いつでも・どこでもチャットボットで問い合わせができる方が利便性を感じるだろう。AIを活用したコミュニケーションプロダクトを開発しているモビルス(石井智宏社長、東京都品川区)が実施した調査によると、全回答者(562件)のうち、38.4%がチャットで問い合わせた経験があり、そのうち88%が今後も問い合わせ手段としてチャットを利用したいと答えているという。

今後、チャットボットはどのような可能性を住宅業界にもたらすのだろうか。例えば、アフターサービスの部分で、チャットボットを活用して一次的な対応を図ることは十分に考えられる。LINEなどを活用し、24時間体制で問い合わせに対応し、迅速な対応が必要な場合は担当者に連絡をいれるといったことも可能になるだろう。

顧客とのファーストコンタクトの機会を創出するツールとしても有効だ。顧客にとっては、個人情報を入力する必要がないため、より気軽に問い合わせを行うことができる。例えば、モデルハウスやショールームを自由に見学してもらい、問い合わせがあればチャットボットで対応を行うことで、見込み客の来場に関する精神的なハードルを低くする効果が見込まれるかもしれない。

一方、ヒノキヤグループでは、対話式のQ&Aサービス「ひのくまコンシェルジュ」を導入している。これは、LINE WORKSのトークで文字入力または音声で質問すると、注文住宅事業で蓄積してきたQ&Aデータをもとに最適な回答を複数表示するツール。これを活用することで、新人営業でも的確な提案ができるという。

労働力人口が減少するなかで、サービス品質を低下させることなく、働き方改革を推進していくためには、限られた人的リソースをより付加価値が高い部分へと投入していくことが強く求められるだろう。その際に、付加価値が低いサービスをどう効率化していくのかという点が重要かつ困難な課題になるはずだ。それだけに、住宅産業界においても様々な場面でチャットボットの活用を検討することになるだろう。どの部分までをチャットボットに任せ、どの部分を人手によってサービス品質を高めていくのか―。業務効率化を図るうえで、見逃せない論点になりそうだ。


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