住友林業 木造350mの超高層計画を本格化
新研究拠点を来年5月に竣工
住友林業は、木造で350mの高層ビルの建築を目指す「W350計画」を本格化させる。2019年5月に竣工する筑波研究所の新研究拠点などで技術開発を進め、まずは2020年に6~7階建て・高さ30m程度の木造中高層ビル「W30」を建築、その後、段階的に階層を増やしていきたい考えだ。
住友林業は、木造で350mの高層ビルの建築を目指す「W350計画」の取り組みを本格化させる。同計画は、住友林業の会社創設70周年の記念事業として昨年2月に発表された。街を森に変える「環境木化都市」の理念の具体化を目指すもので、その一環として計画されている“木造による350mの高層ビルの建築” という野心的なプロジェクトが注目を集めた。
まずは高さ30mの中高層ビルから
新研究棟に最新技術
「W350計画」のロードマップによると、今年5月に筑波研究所に新研究棟を竣工、ここを拠点にW350の研究を本格化させる。そして、2020年にまずは6~7階建て・高さ30m程度の木造中高層ビル「W30」を建築、その後、段階的に階層を増やし、最終的にW350の実現を目指す。
新研究棟の建築には、W350の実現に向けた最新の要素技術も取り入れている。例えば、W350では木造の強固な構造が必要になるが、新研究棟では1200mm四方、厚さ300mmのLVLのブロックを市松状に積み上げたうえで引張力のある鋼棒を施工した独自の耐力壁を採用。LVLをブロック状に小さくすることで、施工時の重さを軽減しながら、構造の強度を高めることに成功した。
また、W350の実現には、木造でありながら高い耐火性能を有することも必要だが、新研究棟では大梁に準耐火60分大臣認定を取得した合わせ梁を採用、高い耐火構造も実現した。
一方で、新研究棟の完成後は、ここを拠点にさらなる研究開発を推進する。W350には強度が高く品質の良い木材が大量に必要になるため、ゲノム選抜と、苗木の育成技術の研究を行う。「こうした研究開発を行っていることは、他の住宅メーカーとの大きな違い」(筑波研究所・中嶋一郎所長)と語る。また、W350の建築には鉄骨の倍のコストが掛かるという課題もあるが、これらの研究で品質の良い木材を大量に生産できる体制を整え使用木材のコスト低減も図っていきたい考えだ。
耐火性能の向上の研究も推進する。「W350の実現には3時間耐火が必要だが、まだ1時間耐火の大臣認定しか取得できてない。最終的には3時間耐火の認定を取得したい」(同)としている。
350mの超高層ビルを木造でつくる計画の実現に向けて本格的に取り組み始めた住友林業——。計画実現に向けた過程の中で、木造建築の新たな技術開発が進むだろう。それはW350だけでなく、中高層や低層の戸建住宅の建築に活かせる可能性もあるだけに、取り組みへの注目度は一層高まりそうだ。
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