ウッドステーション 早稲田大学で大型パネル住宅の公開施工実験
木材のトレーサビリティなど共同研究
ウッドステーションは12月15、16日、早稲田大学西早稲田キャンパス敷地内で木造大型パネル住宅の公開施工実験を開催した。今回の実験データをもとに、早稲田大学の高口洋人研究室や共同参画企業ととともに大型パネルがもたらす省施工性や、木材流通におけるトレーサビリティなどの評価を行う。
公開施工実験1日目は、東京都新宿区の早稲田大学構内に木造大型パネルを用いて2階建ての木造住宅を建設した。設計者の伊礼智氏が設計を手掛けた。約1000人の見学者が訪れた。
木造大型パネルとは、住宅用資材として一般流通している柱や梁、耐力面材、断熱材、サッシ、金物、防水シートなどを一体成型したもの。従来からある羽柄パネルとは異なり、柱や梁といった構造材までもひとつのパネルに組み込み、躯体施工の部分を工業化することで大工の負担を軽減する。今回の公開施工実験では、通常10日~14日かかる工程を大幅に短縮し、約4時間程度で構造躯体や開口部、室内階段などの施工が完了した。午前10時に施工を開始し、10時半には、1階部分のパネル、11時10分には2階の床面、11 時50分には2階部分のパネル施工を完了。12時から50分間の休憩を挟み、14時までに屋根の施工を終えた。さら大開口のサッシ、階段下地ユニットなどを設置し、15時までにはすべての工事を完了。作業者の実労働時間は3時間10分だった。施工効率を大きく向上できることを示した。
仮想木材チェーンを構築
国産材が有効な資源に
今回の施工実験で得られた知見やデータなどを活用しながら、早稲田大学創造理工学部の高口洋人教授の研究室に加えて、共同研究参画企業とともに施工性の評価などを行っていく方針だ。
共同研究で明らかにする大きなテーマの一つが木材流通におけるトレーサビリティの評価だ。ウッドステーションは、大型パネル事業を通じて、林業から住宅建設までをつなぐ木材のサプライチェーン「仮想木材チェーン」の実現を目指す。大型パネルの受注情報は建設の約2カ月前にインプットされる。そのリードタイムを活用して必要部材の断面、数量を抽出し、それらの情報を林業につなげることで、計画的な伐採を促し、在庫を圧縮するなど、マーケットイン型の家づくりに導きたい考えだ。
公開施工実験の2日目に行った特別講演会で、高口洋人教授は、「過去に国産材の需要を増やすためには何が有効なのかシステムダイナミクスという分析手法を用いて研究を行った結果、素材価格を上げることが有効であることが分かった。素材価格を下げれば、需要が増えると考えられがちだが、実際には安すぎるために林業事業者のモチベーションが下がり、投資も行われないという悪循環を招いている。ウッドステーションは、仮想木材チェーンを構築し、木材の川上から川下までの事業者をつなごうとしているが、持続可能な森林経営を可能にする適正な素材価格とはいくらなのか。安く売っているものを高く買うには理由がいる。その理論構築と評価を研究のなかで明らかにしていきたい」と説明した。
ウッドステーションは、全国をカバーする大型パネルの供給網の構築を目指しており、それが実現すれば仮想木材チェーンの構築も現実味を帯びてくる。現在、テクノエフアンドシーの5工場で大型パネルを製造しているが、大型パネル生産パートナー会を立ち上げ、説明会を開催しプレカット工場などに参加を呼び掛けている。2018年12月時点で17社の入会が決定。2019年1月にも説明会を追加開催し、将来的に100社までパートナー工場を増やし、50~100km圏を1社で対応できるようにする計画だ。 ウッドステーションの塩地博文社長は「国産材は、生産現場に近く必要な木材を、必要な時に、必要なだけ生産しジャストインで供給できるという『場所メリット』を持っている。約2カ月のリードタイムを有効活用できれば、国産材だけが有効な資源になる」と解説した。
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