ウイング、2×4工法のさらなる合理化へ着手
2日半で狭小地の3階建て住宅を上棟
2×4建築部材を製造・販売するウイングは、2×4工法のさらなる合理化に着手した。2×4材や2×10材の製材から、4×6材の集成材へと置き換えることで、強度性能の向上、材積低減によるコスト削減、工期短縮効果などが期待できる。「Union Frame」と命名し普及拡大を目指したい考えだ。
2×4建築のコンポーネント事業を展開するウイング(倉田俊行社長、東京都千代田区)などが中心となり、2×4工法のさらなる合理化を進める取り組みを開始した。2×4工法のルールに対応しながら、2×4材(断面形状:38mm×89mm)や2×10材(同38mm×235mm)の製材中心の構造を置き換え、4×6材(同89mm×140mm)の集成材を有効に配置し、床枠組や壁枠組を構成することで、強度性能の向上、材積低減によるコスト削減、工期短縮効果などが期待できる。
現在、2×4建築の2階以上の床面では、2×10材の製材を455mmの間隔で施工し、床枠組を構成することが一般的だが、今回、2×10材から、新たに4×6材へと置き換え910mmの間隔で施工する合理化を図った。これにより2×10材を455mmの間隔で施工した床枠組と比較して、材積の低減効果、床面の剛性を向上させる効果、配線・配管工事の簡易化などが期待できる。
また、2×10材の製材を使用して床枠組を構成する場合、どうしても経年劣化により材料が反る、やせるといった懸念があるが、4×6材の集成材を使用することで、そうした懸念も抑制できる。
4×6材を用いて床枠組を構成して床剛性を高めることで、下層階の壁枠組の「まぐさ」を省略できるというメリットももたらす。
「まぐさ」とは、開口部の上に取り付ける横材で、上層階のから伝わる建物の荷重を受ける役割を果たす。2×4建築では上層階からの建物荷重に耐えられるようにするため、「まぐさ」のサイズを大きくして対応する必要があるが、その分、「材積が増える」、「開口部を設計する自由度が狭まる」といった制約を受けるほか、壁枠組自体も大型化、重量化し、扱いにくくなる。工場で壁枠組をパネル化して現場に搬送し組み立てる場合も、重機が必須となり、狭小地などには対応しにくいという課題があった。
対して、今回の合理化により4×6材を用いて床枠組の剛性を高め、上層階の荷重をより効果的に受けられるようにしたことで、下層階の壁枠組の「まぐさ」を省略できるようにした。これにより、壁パネルを人力で無理なく持ち運べるほど小型化、軽量化することに成功。狭小地にも対応しやすくなった。
さらに、今回の合理化では、床だけでなく壁にも、2×4材や2×6材の製材を置き換え、4×6材の集成材を多用した。ウイング執行役員の橋本宰氏は、「4×6材を柱としても使用している。これにより複数の2×4材を釘で固定し、『合わせ柱』を構成する従来の手間を解消できる」と解説する。
ウイングは2018年9月、合理化を図った2×4工法の有効性を検証するため、東京・北千束の住宅が密集する狭小地で、3階建の2×4住宅を建設した。施工・設計が重要なポイントになると考え、施工を担当するアサミホーム(更科敏明代表、神奈川県横浜市)や小林建創(小林直人代表、神奈川県伊勢原市)、構造設計を担当する夢現設計室(前野敏昭代表取締役、大阪府大阪市)などとプロジェクトチームを組み、1年以上打ち合わせを重ねた。橋本執行役員は、「従来の2×4工法の建て方で、現場での手組みだけで対応した場合、上棟までに約1カ月はかかる現場だが、合理化を図った2×4工法の建て方で、工場で製造したパネルと、現場での手組みを最適なバランスで組み合わせることで、2日半で上棟が完了し、圧倒的な工期短縮効果を実証できた」と話す。
国産材の大径木の活用促進にも4×6材が寄与
今回の2×4工法の合理化で鍵を握るのは4×6材の集成材だ。ただ、北米など2×4部材メーカーは製造しておらず、これまでほとんど使用されていない。そこでウイングでは、国内製材メーカーと連携を図り、国産材を活用した4×6材の集成材の供給体制構築に向け協議を進める。2×4建築の合理化を後押しする部材として、国産材を活用した4×6材への注目度が高まり将来的に利用量が増えていけば、国産材の大経木化問題の解消にもつながる可能性もある。住宅建築などに多用されている小中断面集成材の原料として用いられるラミナは幅89mmのもの、対して、今回の2×4工法合理化で鍵を握る4×6材の原料として用いるラミナは幅140mmのもの。「より幅の広いラミナを取り出すことで歩留まりが高まり、大経木も有効活用しやすくなる」(製材メーカー担当者)。
圧倒的な工期短縮効果が期待できるUnion Frameが、2×4工法のシェアの維持拡大に向けた切り札として注目を集めそうだ。
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