民藝と住まい【前編】便利になっても満たされない 民藝を求める若者が増えている
明治大学理工学部 准教授 鞍田崇
近年、若者を中心に暮らしのなかに民藝を求める人が増えている。竹などで作られたかごやざるなどを街中でよく目にするようになったが、なぜ今、民藝を求める人が増えているのだろうか。哲学者でありながら、民藝の可能性を探る明治大学理工学部の鞍田崇准教授に話を聞いた。
──近年、“民藝”という言葉を頻繁に耳にするようになりました。そもそも、“民藝”とはどのようなものなのでしょうか。
“民藝”と聞くと多くの人が無骨で粗野な、場合によっては素人が作ったような風合いの食器・道具などの工芸品、つまり“モノ”を想像するのではないでしょうか。近年、民藝は食器や道具などのモノとして捉えられることが多いですが、元々は思想家の柳宗悦氏(1889-1961)や陶芸家の濱田庄司氏(1984-1978年)らによって1925年に作られた概念です。
もちろん、モノを指す場合もありますし、最終的には食器や道具といったモノにアウトプットされていくわけですが、決してそれだけではありません。モノを生み出すまでの暮らしや、そのモノを使う暮らし、モノを使うための空間など、生活文化全般を表します。モノだけでなく、自分にとって心地よい空間を構成するための欠かせないピースの一つと私は考えています。
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