住まいを彩る外装材の潮流 “陰影”で勝負!

スタンダードな白・ベージュ系に、こだわりの黒が急成長

住宅に対するニーズの多様化・高度化が進むなか、〝こだわり〟が重要なキーワードとなっている。それが顕著に表れるのが住宅の外観であろう。そのイメージを決定づけるのが外装材である。デザイン、色、素材感などさまざまな要素が住宅の外観を彩る。外装材の〝今〟を各社の商品動向とともに追った。

住宅の外観スタイルは、長くナチュラルモダンと呼ばれるシンプル系がメインとなっている。ケイミューによると首都圏ではシンプル志向のデザインが約8割を占める。また、ニチハがWebで行っている人気ランキングでもシンプルな流れを汲むコンテンポラリースタイルのデザインが上位となっており、現在の日本における一般的な住宅デザインになっている。こうしたデザインを中心に和風や洋風など、趣味・嗜好やライフスタイルなどによってさまざまな住宅デザインが存在する。

外装材の商品開発、また、そのアピールの仕方は外装材のデザインそのものの訴求はいうまでもないが、こうしたライフスタイルや嗜好に基づく住宅スタイルにあわせた提案が積極的に行われている。

例えば、LIXILでは、住宅デザインを「グレイス」(邸宅感)、「プレーン」(ナチュラルモダン)、「ミニマル」(シンプルモダン)、「インディビティ」(インダストリアル、南欧風など)、「クラシック」(和風)、「クラシック」(洋風)というスタイルにカテゴライズし、それぞれにあった商品開発を進めている。旭トステム外装も、このスタイルならばこの外装材がお薦め、このようなコーディネートが映える、といった“コト”提案を進めている。

主流となっているシンプル系の住宅スタイルにおいて「ハウスメーカーで1棟当たり単価がアップしていることに加え、近年18 mm厚品の比率が高まってきている」(ケイミュー)と、高級志向が強まっている。

こうしたボリューム層の高級志向の高まりに向けて、ケイミューが発売した次世代外装パネル「レジェール」は21mm厚で、最大9mmという深彫りが大きなポイント。表情豊かな陰影を生み、特に出隅部分は建物の輪郭が際立つ。全5柄・各4色を揃えるが、カタログでは朝、昼、夕方、夜の写真を掲載し、光の加減で表情が変わることを訴えている。また、陰影によってシーリングが目立ちにくいことも外観の高級感を高めている。

旭トステム外装の「ノエガVZ」は窯業系外装材「AT︲WALL」におけるシーリングレス工法の最上位商品「ガーディナル」シリーズの石積み柄。18mmという厚さを活かした本格的な石積柄で、柄の陰影感が壁面に高級感を与える。「従来、細かなボーダー柄がボリュームゾーンであったが、ここ2~3年ほど比較的大きな柄が人気」と、石積調の大きな柄が演出する邸宅感をアピールする。

ニチハは人気の「フュージェ」(厚さ16mm厚品のモエンエクセラード16シリーズのなかで長さ6尺、塗装に高耐候塗料を採用した四方合いじゃくり商品)の商品展開を加速している。「フュージェ」は板と板の間にシーリングを使わないことから、白やベージュといった人気色を採用しても縦目地が目立たず、一体感のある壁面を演出できることが特徴だ。この8月には「フュージェ」の「塗膜の変色・褪色30年保証」を付与したプレミアムシリーズに18mm厚品を設定し、こだわりのテクスチャーと深彫りによる陰影感を出した4柄の新商品を発売する。これまでの16mm厚のフュージェとの張り合わせを可能としており、デザインバリエーションの拡充とともに住宅スタイルの多様化にも対応する。

深彫りによる陰影感を強調したデザインが加速している。光の陰による表情の変化が住宅の外観に高級感を与える。ただ、陰影感は単に深彫りにすればよいというものでもない。「目地が深いだけでは深みは感じづらい。より凹凸感や陰影感を出すデザイン上の工夫が重要」と指摘するのは旭トステム外装。同社が今年2月に発売した「ヴェリエP」は15mm厚にもかかわらず、全面張りでも平坦に見えない自然な陰影感を持つ。柄の深さを強調するなど、平坦に見えないように工夫を施した。

最大9mmの深彫りにより、光によって表情を変えるケイミューの次世代外装パネル「レジェール」
旭トステム外装の「ノエガVZ」は18mmの厚さを活かした本格的な石積柄が外観に高級感を与える

個性化、こだわりに応える素材感を活かす商品開発も

外装材のカラーに新たな潮流が生まれている。

「白が3割強、グレー、アイボリーやベージュなども含め薄い色が人気」(ケイミュー)であり、こうした薄い色をベース色に黒や木目柄などを合わせることが定番だ。全体としては、こうした薄い色がメインであることに変わりはないが、新しい動きとして急速に人気が高まっているのが黒である。

「ここ1~2年で急激にニーズが高まった。一棟当たりの面積だけでなく、出荷量の割合をみても増えている」(旭トステム外装)という。例えば、同社が2年前に発売した「ルフラン16PZ/P」は当初黒色の設定がなかったが、ユーザーからの要望を受け後に黒色を追加した。「この商品で認識が変わり、以降、柄にもよるがカラーラインナップには黒を入れるようにした」と、今では定番色になっている。

住宅スタイルでいうとブルックリンスタイルやインダストリアル系のデザインで、黒をベース色に張り分けるなどの使い方が増えている。どちらかというと男性から好まれているようだ。

分譲住宅のように不特定多数に好まれるような家づくりではスタンダードなナチュラルモダン系のスタイルに白やベージュなどの薄いカラーが定番で、大きなボリュームゾーンとなっているが、こだわりの強い注文住宅などで黒が使われるケースが急速に増えている。

旭トステム外装では今年8月に「セキボクPZ/P」を発売するが、“石墨”の名の通り、墨で仕上げたかのようなマットな色調が大きな特徴となっている。

ニチハでは「アクセント色としてネイビー色に対するリクエストが多くなっており、スタイリッシュな雰囲気で高潔な存在感を醸しだすキーカラーになりつつある」と、濃く強い色合いの外装材が増えてきている。

一方、素材感を活かした外装材も登場した。アイジー工業は「近年、板金製の横葺き屋根と同じ意匠で外壁材を仕上げたいというニーズが高まっている」というニーズに対応し「SF‐ビレクト」を発売した。金属という素材を活かした外装材で、断熱材を裏打ちする独自の技術を活用して表面を美しく仕上げ、ほかにはない意匠を実現したことが大きな特徴だ。

外壁のモチーフは石やタイル、木がメインであり、今後、これが大きく変わることはないとみられる。その一方で、個性化・多様化、こだわりなどのニーズを踏まえマーケット的にはニッチなデザインが求められてくることは十分に考えられる。例えば、設計事務所が使いたくなるようなデザインのものなどだ。

そうした商品開発における一つのポイントが素材感だ。「柄ではなく素材、サイディングならではの素材感を持つ外装材」(旭トステム外装)などが求められてくるのではないだろうか。

先にアイジー工業は、世界的な工業デザイナーである奥山清行氏と共同でプロダクトデザインを強化すると発表した。これまでの商品開発とは異なる視点で、新たな商品価値を生み出すことが目的。創業50周年の節目となる2020年に発表する予定で「サイディングのあり方を見直し、世界に通用する金属サイディングの新たな価値を示す」と力を入れている。

こうした新たな取り組みが住宅の外観イメージを大きく変えることになるかもしれない。

板と板の間にシーリングを使わないことから縦目地が目立たず、一体感のある壁面を演出できるニチハの「フュージェ
アイジー工業の「SF-ビレクト」は金属という素材感を活かし他にはない意匠が大きな特長

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特集:

2050年へのカウントダウン

PV、ZEH賃貸、100%再エネ街づくりなど2050年までの「脱炭素社会」の実現に向け、社会が大きく動き出そうとしている。
政府は2030年度までに全国で少なくとも100か所の地域で先行して「脱炭素」を達成し、多くの地域で2050年を待たずに「脱炭素」を実現する方針だ。
住宅分野でも省エネ基準適合義務化、ZEH・LCCM住宅の普及拡大、太陽光発電の導入拡大に向けた施策の検討がなされている。
こうした動きを受け、今後、住宅への太陽光発電の導入や、ZEH賃貸、脱炭素まちづくりなどの“住宅脱炭素化マーケット”が本格的に拡大していきそうだ。

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