ものづくりの現場で価値を見る、聞く、体験する

トクラス 浜松本社工場“ルポ”


人造大理石を使った製品づくりを得意とするトクラス。同社は製品のすべてを静岡県浜松市にある本社工場で生産している。50年前に建てられたこの工場では、ピアノやスキー板などの生産を経て現在はキッチンやバスタブなどの邸別生産による一貫した丁寧なものづくりが進められている。

本社工場の敷地面積は約3万3000坪、東京ドーム約2.3個分の広い工場で同社の製品すべてを生産しており、ハウスメーカーや工務店などのプロユーザーを対象に積極的に工場見学も実施している。同社の強みである人造大理石を使ったキッチンやバスタブの生産過程を間近で見られるほか、ものづくりの歴史や人造大理石という素材についても知ることができるように工夫されている。

工場見学では、ものづくりに対する姿勢や熱意を強く訴求している。たとえば、同社は人造大理石をつくるための材料を業界で唯一自社開発している。明確な定義がない人造大理石は、メーカーによって材料やつくり方が異なるため性能の差が出やすい。これに対して同社は製品にあわせて材料を開発、調合することで高い性能を確保。フリットと呼ばれる色や柄を表現する材料の組み合わせを変えることで、デザインは無数に表現できるという。こうしたものづくりへのこだわりが、製品の品質や性能の高さにつながっている。

キッチンの生産ラインで人造大理石によるカウンターの生産工程を見ることができる。大きさや形の異なるキッチンカウンターの金型を18台用意。調合した樹脂を注文内容に沿った金型に流し込み、上下に流れる温水の熱によって硬化させる。温水の温度は人造大理石が完成したときの強度に大きく影響するため、機械を使って正確にコントロールしているという。金型から取り外したカウンターはその後、1度目の硬化よりも高い温度で2度目の硬化を行う。2回の硬化がカウンターの強度を高める。

業界で唯一、人造大理石をつくるための材料を自社開発している
金型に流し込まれた樹脂は上下に流れる温水の熱で硬化する

機械だけに頼らない、手作業が質の高い製品づくりのカギ

同社ではユーザーの暮らしに合わせてキッチンプランを提案する「くらしオーダー」を推進している。ミリ単位で加工できる「フリーカウンター」などは、工場の社員が一つひとつメジャーを使って手作業でサイズを決める。機械を使うより手作業のほうが効率が良いというが、これには社員の高い技術が必要不可欠だ。シンクにはカウンターと異なり研磨剤を配合した樹脂を使用。こちらは熱とプレスによる圧力で成型する。

キッチンの扉の表面は塗装やシートで仕上げるが、こちらも社員が手作業で行っている。鏡面性の高い扉は社員の丁寧な研磨によってつくり出されるもの。塗料の配合やスプレーによる吹きつけを行う社員の多くは、自発的に塗装技能士の資格を取得しているという。資格取得者の中で特に技術の高い社員数名は、さらなる技術の向上を目指す「道場」に入門することができ、約1年間、生産ラインを離れて複雑な立体物の塗装や木工品の制作などを通して塗装技術を学ぶ。同社では製品の生産に対して適正に人の手を入れることを重要視しており、OJTなどを通した育成プログラムには特に力を入れているという。

フリーカウンターなどは同社の社員が一つひとつ手作業でサイズを決める
鏡面性の高い扉は社員による丁寧な研磨で作られる

体験入浴を通して製品の良さを肌で感じて

工場見学とセットで体験入浴も提案している。本社工場には男女別で個室の洗面化粧台付き浴室が複数個あり、プライベートな空間を確保しながら入浴できる。保健所の公衆浴場営業許可を取得し、浴室にはボディソープやシャンプー、タオルなども用意、手ぶらで入浴できる。

今回、併設される浜松ショールームの商品の入れ替えに伴い、体験入浴できるバスルームも6年ぶりに一新。4月に発売したばかりのトクラスバスルーム「YUNO(ユーノ)」が体験できるようになった。複数ある浴室では、すっきりとしたシルエットの「ブロッコタイプ」と、半身浴・全身浴ともにゆったりと楽しめる「エルゴタイプ」の2つのバスタブを用意。さらに、風景をモチーフにした壁や、安らぎの空間をつくる「みなもライト」など、YUNOの特長を余すことなく体験できる。

体験入浴を躊躇し、工場見学だけで帰る人も少なくないというが、目で見るだけでなく体験することで製品の特徴や理解が深まることは間違いない。たとえば、人造大理石でできたバスタブの曲線のやわらかさは湯をはり、入浴してこそ体感できる。足を伸ばしたときに首や肩に触れるバスタブに、「硬さ」や「痛さ」は感じず、特に首とバスタブの曲線がフィットする。

また、湯に浸かった時に天井を見上げるとYUNOの特長のひとつでもある「みなもライト」による光の揺らぎを見ることができる。これも実際に入浴してみなければ体感できない。みなもライトは、バスタブの真上に設置されており、光の拡散を抑えつつ水面を照らすことで水面の揺らぎを天井に映し出すというもの。湯を溜める前や水面が静かな状態では揺れ動く光を映し出すことができないため、言葉だけでなく実際に使用することで製品の理解も深まり、ユーザーへの説得力のある提案にもつながるだろう。

体験入浴できる「YUNO(ユーノ)」。バスタブの曲線のやわらかさなどを体感できる
「工場見学を通して価値を提供したい」と語る営業本部 マーケティング部の津崎和俊部長

年間約200組が工場を見学 見学者からの評判も上々

同社が工場見学や体験入浴を実施するようになったのは20年以上も前になる。人造大理石を使った製品を生産する同社の歴史や、ものづくりに対する姿勢、製品をより深く理解してほしいという思いからスタートした。

ショールームには、4月に発売したトクラスキッチン「Berry(ベリー)」や「YUNO」などを展示。また、1887年にオルガンの製造から始まった同社の歴史も見ることができる。 近年、工場見学やショールームなどでものづくりの歴史を伝える取り組みが広がっている。企業姿勢をアピールするだけでなく、製品に開発背景などのストーリーを加えて価値を高めるのが狙いだ。

昨年は年間で200組近くが本社工場を見学。「今後も工場見学を通して当社ならではの価値を提供していきたい」(営業本部 マーケティング部 津崎和俊部長)と、ものづくりへのこだわりを訴求していく考えだ。

住まいの最新ニュース