告示改正が及ぼす影響 大臣認定を超え耐力面材へのシフトが加速
筋かいのみの家はもういらない!?
木造軸組構法の戸建住宅で、まだ半数とみられる筋かいのみの家。そんな状況が告示の改正で一変しそうだ。
耐力面材に関する告示が改正され、対象が広がるとともに高倍率も追加された。耐力面材の市場拡大への期待が高まる。
2018年3月26日、国土交通省が耐力面材に関する告示を改正、施行した。
これまで軸組構法で採用できる耐力面材は告示で定められており、構造用合板、パーティクルボード(PB)、構造用パネル(OSB)で壁倍率1.5倍と2.5倍のみ定められていた。
例えば、PBでは厚さ12mm以上の仕様で2.5倍となっており、構造用合板(2.5倍は7.5mm以上)よりも重く厚いことから使い勝手が悪かった。MDFにいたっては告示に含まれてもいなかった。こうしたことからメーカー各社は、使い勝手の良い9mmで高耐力を確保できる大臣認定を取得し、住宅事業者に提案してきた。
今回の改正では、軸組構法においては、新たに構造用PBと構造用MDFが加わった。また、高倍率の仕様も拡充し、耐力面材の厚みや釘打ちの間隔などの組合せにより、PBとMDFで4.0と4.3、構造用合板とOSBで3.3と3.7の仕様が追加された。
一方、枠組壁工法では、これまで構造用合板と構造用PB、OSBの3種が対象で、壁倍率は構造用合板が2.5、3.0、3.5の3種、構造用PBとOSBが3.0であったが、改正により軸組構法と同様に構造用PBと構造用MDFが加わった。壁倍率についても、構造用合板で3.6、3.7、4.5、4.8が加わり、構造用PBとOSB、構造用MDFは4.8という高倍率が追加された。
また、軸組構法については、「床勝ち仕様」(床を壁よりも先に施工)において、床下地の上から土台などに受材を打ち付ける場合において、耐力面材を使用できることを明確化した。これにより狭小地など限られた面積の住宅においても内壁の高耐力化が図りやすくなる。
PBとMDFが追加され、高倍率も設定された告示改正。大臣認定は壁高さの下限・上限が決められていたり、釘の縁端距離が規定されるなど一定の制約を受ける。今回の告示改正で従来に比べて耐力面材がより採用しやすくなり、耐力面材の選択肢が広がったことになる。
筋かいから面材へ 告示改正が流れを加速
(独)住宅金融支援機構の「フラット35住宅仕様実態調査」(平成25年1月調査)によると、耐力壁の種類は「筋かい」が57.7%と6割弱を占め、「構造用合板」が22.3%、「OSB」が5.1%、「その他の面材」が14.9%となっている。10年前にはほとんどが筋かいであったと言われ、耐力面材の比率は順調に高まっている。
この調査は5年ほど前のものであることから、足元ではさらに耐力面材の割合が高まっていると考えられる。某メーカーの独自調査では、現在の耐力壁の比率は、筋かい45%、合板18%、PB10%、OSB8%、ダイライト8%、MDF7%と推計している。
筋かいから耐力面材へという流れは着実に進んでいる。特に先の熊本地震における調査において、筋かいだけでは構造耐力上十分でないということが明白になったことも耐力面材が注目を集める一因になっている。住宅の安全・安心を高めるために告示だけで対応が可能になったことは市場に大きな影響を与えそうで、「耐力面材の市場は確実に広がりつつあるが、告示の改正でさらに加速すると思う」(日本合板工業組合連合会・以下日合連)と期待は大きい。
同時に市場拡大のなかで「今後、耐力面材のシェア争いにし烈な競争が起こるのでは」という指摘もある。
住宅事業者からの反応が薄い? メーカーは提案活動を加速
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