身軽さと手堅さ、そしてHOUSE2.0

住宅産業界でもスタートアップ企業などを中心に新しい風が次々と吹きはじめている。異業種からのアプローチも増えており、こうした動きのなかから、これまでの住宅供給のあり方とは一線を画すような、新たな住宅ビジネスが生まれそうな予兆も感じられる。

こうした企業の多くは、身軽にトライ・アンド・エラーを繰り返しながら、次々とアイデアを形にしていこうとしている。こうした姿勢は、従来型の住宅産業界に不足していた部分である。軽やかにアイデアを形にしていく彼らの存在が、いつのまにか保守的になった住宅産業界に一石を投じつつあるのは間違いないだろう。

しかし、その一方で一抹の不安を感じることもある。住まいとは、個人の資産でありながら、国民の生活を支える重要な社会インフラでもある。その点が他の耐久消費財と大きく異なる。また、住民の健康や財産をまもるシェルターでもあり、住まいを供給するという職務には、大きな責務も求められる。東日本大震災の時、ある住宅の営業マンがかつて自ら販売した住宅が津波で流され、家族全員が亡くなったという事実を知り、「あの時、自分があの住宅を販売しなければ…」と泣き崩れたという話を聞いたことがある。その話を聞いた時、住まいを売るということの本質的な意味が少し分かったような気がした。


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