2018.1.26

工法の提案から“ブランド”の価値訴求へ 健康・快適、エネマネなどを付加価値に

カネカのお家

カネカ(東京都港区・角倉護社長)・カネカソーラーサーキットのお家(東京都千代田区・吉田秀典社長)は工務店に向けて、これまで「ソーラーサーキット」という“工法”の提案を行ってきたが、今後は「カネカのお家」という“ブランド”の価値の訴求に力を入れていく。健康・快適・安心やエネルギーマネジメント、デザインなどで付加価値の高い住宅の提供をサポートする。


カネカ・カネカソーラーサーキットのお家(以下、カネカのお家)は2017年、住宅の新たなブランド「カネカのお家」を立ち上げた。これまで同社では全国の工務店に対して建築工法「ソーラーサーキットの家」の技術ノウハウの提供を1988年から約30年にわたり行ってきた。140〜150の工務店と契約しており、同工法による住宅の供給は累計2万1000棟を超える。

一方で、これまでは「ソーラーサーキットの家」という“工法”の提供を行ってきたため、「カネカ」という名称は積極的には表に出してこなかったが、「ソーラーサーキットの家」工法を採用した「カネカのお家」というブランドを新たに創設、カネカの知名度や商品力を前面に出した提案を行っていこうとしている。

「カネカのお家」というブランドを新たに創設、カネカの知名度や商品力を前面に出した提案を行っていこうとしている

高断熱高気密でも熱がこもらず快適

今後、新築市場の縮小が見込まれる中で、工務店にはより付加価値の高い住宅づくりが求められる。このため、「カネカのお家」では工務店に対して、独自の工法や自社開発の建材・設備の提供を通じ、「健康・快適・安心」、「エネルギーマネジメント」、「デザイン」などで高い付加価値を持った住宅づくりをサポートしていく。

「健康・快適」については、「ソーラーサーキットの家」工法を提供。特徴の一つが同社の高性能断熱材「カネライトフォーム」を採用した外張り断熱だが、2018年春には押出法発泡ポリスチレンフォーム断熱材としては世界最高の断熱性能(熱伝導率0.020W/m・K)を持つ「カネライトフォームα」も採用し、ZEH基準さらにはHEAT20のG2レベルの高い断熱性能の仕様を設ける。

同工法のもう一つの大きな特徴が「二重通気」。高断熱住宅では冬季は暖かく快適である一方で、夏季は熱がこもってしまう。このため、「カネカのお家」では、躯体に二重の通気層を設け、床下と小屋裏に設けた開閉ダンパーを温度センサーにもとづき自動で開閉することで壁内、屋根裏に気流を作り出し、夜間の熱ごもりの解消を促す工夫を施している。

これにより、一年を通して快適な室内の温度環境を実現。朝夕の温度変化の大きい季節の変わり目などにも室温の変動が小さく身体への負担も少なくできる。加えて、オプションで全館除湿する「リフレア」という仕組みをも用意しており、より快適で室内空気環境を実現できる。

「安心」については長期優良住宅の認定基準を達成する性能基準を全棟に課すことで担保。加えて、2018年4月には「オーナーズクラブ」も創設する。設備機器等の10年保証やシロアリ対策の延長保証制度、緊急トラブル駆け付けサービス(24時間365日対応)などを行う。

工務店のエネルギーマネジメントサービスの提供もサポートしていく。カネカが開発した意匠性にもこだわった瓦一体型太陽電池「Visola(ヴィソラ」、化粧スレート瓦専用の太陽電池「SoltileX(ソルティレックス)」、大容量発電を実現する太陽電池「GRANSOLA ヘテロタイプ」を導入。一棟ごとに発電量シミュレーションを行い、どのくらいのメリットが出るかを全国の電力会社のプランごとに算出できるタブレット向けアプリも提供する。

また、今後高まっていくことが予想される太陽光発電の自家消費ニーズに対応するため、「住宅用蓄電システム」も用意。HEMSについても、現在、自社開発の製品の提供を目指している。太陽光発電、蓄電池だけでなく、「ソーラーサーキットの家」のシステムとも連動し、換気フィルターの交換を知らせる機能なども搭載していく予定。「電機メーカーよりも進んだ製品を提供するという意識で取組んでいる」と、カネカ・住宅 Strategic Unitの池上淳リーダーは意気込む。さらに、IoTを導入したコネクティッドハウスの開発も視野に入れており、「どういった価値を提供できるのか探りながら、開発の検討を行っている」(同)としている。

「ソーラーサーキットの家」工法の大きな特徴は高性能断熱材「カネライトフォーム」を採用した外張り断熱。2018年春には押出法発泡ポリスチレンフォーム断熱材としては世界最高の断熱性能(熱伝導率0.020W/m・K)を持つ「カネライトフォームα」も採用
「カネカのお家」では、高性能断熱材の他にも、カネカの開発している様々な部材を供給。画像は、太陽光発電(左)、住宅蓄電システム(中)、有機EL照明(右)

デザインも付加価値に 建築家とコラボでサポート

デザイン性に対して高まるニーズに対応するための新たなサポートも2018年4月から行っていく。「カネカのお家」のコンンセプトを理解した建築家を工務店に紹介することで、ひとつ上のデザイン性の高い住宅の供給を実現する。通常、工務店が建築家に設計を依頼する場合よりもコストを抑えてサービスを提供していく。また、建築家のデザインした規格プランの提供も行っていくことで、高いデザイン性の住宅をよりリーズナブルに工務店が提供できるようにする。

デザイン性という点では、カネカが開発した有機EL照明を取り入れた住空間デザインの提供にも取り組んでいく。1.1ミリと薄く、ひとつあたり18グラムと軽いため、設計の可能性が広がる。例えば、ミラーに埋め込むこともでき、化粧品メーカーの店舗のミラーに採用されている。また、自然光に近い安らぎを与える柔らかい光も特徴で、ホテルのベッドサイドや美術館などの照明に採用されている。

カネカのお家では様々な面で付加価値の高い住宅を実現しているが、その価値を消費者に伝えるためには、何より実際に体験してもらうことが重要と考えている。このため、契約工務店に対して住宅購入検討者が宿泊体験できる体感型モデルハウスを設置する際のサポートも実施。例えば、カネカのお家が建築費を負担し工務店にリースするといった取り組みを行っている。

提供メニューの豊富さや手厚いサポート体制にもかかわらず、加盟契約のイニシャルコストは30万円、年間のライセンス料も30万円だ。「開発を行っている建材設備を供給していきたいという面が大きいので、コストを抑えている。建材設備メーカーならではであり、他では真似できない強みなのではないか」と、池上リーダーは自信を見せている。