建材 |  2017.6.9

全国陶器瓦工業組合連合会 「瓦屋根は地震に弱い」という誤解の払拭へ 

耐震シミュレーションの検証結果を周知徹底

全国陶器瓦工業組合連合会(全陶連、理事長・野口安廣氏)が、「瓦屋根は地震に弱い」という誤解を払拭するために、耐震シミュレーションソフトウェア「wallstat(ウォールスタット)」を使った検証を行った。
検証結果を用いてパンフレットなどを作成し、正しい情報や知識の普及を進め、出荷が減少傾向にある瓦屋根の復活を目指す。

平成6年には12億8200万枚だった瓦の出荷量は、平成28年には3億6000万枚にまで減少した。また、製造業者、施工業者も減少傾向にあり、業界は厳しい状況が続いている。

瓦の出荷量減少の原因のひとつに、化粧スレートや金属屋根に比べて初期費用が高いという理由があげられる。住宅需要の中心である30歳代~40歳代の所得水準が低下傾向にある中で、初期費用が高くなる瓦屋根は敬遠されがちとなる。

しかし、化粧スレートや金属屋根の多くが、定期的な再塗装を必要とするのに対して、塗装がされていない瓦は塗り替えが不要。しかも1枚からでも差し替えが可能な瓦は、長い目で見ると経済的だ。全陶連の小林専務理事は、「30年後の総コストを考えて選択をして欲しい」と話す。

そして、コスト面の問題以上に瓦の出荷量減少の大きな原因となっているのが、平成7年に発生した阪神淡路大震災時の誤った報道である。震災発生後、さまざまな場面で「瓦が重いから住宅が倒壊した」という報道がなされたことにより、多くの住宅で瓦屋根から軽量の化粧スレートや金属屋根に変えるケースが発生。その後も大震災が発生する毎に同様の報道が繰り返しなされたため、消費者に「瓦屋根は地震に弱い」というイメージが定着し、深刻な瓦離れへと繋がっている。

こうした瓦屋根に対する誤解を払拭するために、全陶連ではさまざまな取り組みを行っている。その一つが、平成13年に策定されたガイドライン工法での施工の徹底。

ガイドライン工法は、建築基準法で定められた耐風・耐震性能を試験などによって確認し、満たすことで一定以上の強度を持つ工法である。一定基準以上の「性能」を満足させる設計、施工指針が定められている。全陶連の小林専務理事は、「ガイドライン工法で施工すれば耐震性には問題が無く、倒壊もほとんど無い」と太鼓判を押す。

「瓦屋根は地震に弱い」というイメージの払しょくが求められている
画像は耐震シミュレーションソフト「wallstat」を使った検証結果。耐力壁を増やした住宅モデルは倒壊しなかった

耐震シミュレーションで倒壊のリスクを検証

瓦屋根の復権に向けた次の一手として全陶連が打ち出したのが、今回の耐震シミュレーションだ。検証には、国土交通省国土技術政策総合研究所の中川貴文氏が開発した耐震シミュレーションソフト「wallstat」を使用。このソフトでは、パソコン上で木造住宅をモデル化し振動台実験のように地震動を与え、建物がどう揺れて壊れるのか、どうしたら壊れないのかをシミュレーションすることができる。

具体的には4つの住宅モデルを使ってシミュレーションを実施した。1つ目は瓦屋根の住宅で耐震性能を示す評点は0.51、2つ目は屋根を軽量化するために瓦屋根からスレート屋根に変更した住宅で評点は0.62、3つ目は瓦屋根から金属屋根に変更した住宅で評点は0.62。4つ目のモデルは瓦屋根のままで評点1.0以上を目指して改修計画を立て、耐力壁を増やした住宅で、評点は1.11となっている。建物の耐震性を示す評点は、1.5以上なら倒壊しない、1以上なら一応倒壊しない、1未満なら倒壊する可能性がある、0.7未満なら倒壊する可能性が高いと判断される。

検証では、これら4つの住宅に、1995年の兵庫県南部地震で観測された地震波(JMA神戸)を同時に入力した。

シミュレーションによる検証の結果、標準的な瓦屋根の住宅は地震が起きると一階部分に損傷が見られ、最初に倒壊した。その後まもなく、化粧スレート屋根の家と金属屋根の家も同様に倒壊した。しかし瓦屋根に耐力壁を増やした家は、一階の部分に損傷や変形は見られたものの、倒壊にまでは至らなかった。

この検証から、化粧スレートや金属への葺き替えは耐震性向上に一定の効果はあるが、大地震が発生した際には瓦屋根の住宅と同じように倒壊のリスクがあることが分かった。これに対し、耐震補強計画に基づいた耐震改修を実施した場合、瓦屋根の住宅でも大地震に耐え得ることも判明した。つまり、適切な耐震補強を施せば、瓦屋根の住宅であっても倒壊リスクを十分に軽減できる。反対に、屋根を軽量化しても適切な耐震補強を行わなければ、大地震により倒壊する懸念が残る。倒壊リスクは屋根だけではないということだ。

住宅の耐震補強は、第一に壁の筋交いや補強用面材による壁の補強、第二に基礎のひび割れの補修や無筋基礎の有筋化、第三に土台や柱下が腐朽している場合における改善・劣化対策が重要であり、その他の項目として壁や屋根の軽量化が有効だと言われている。熊本地震での木造住宅の倒壊も、その多くが壁量や柱の固定が不十分だったことによるものだったことが分かっている。

全陶連では、今回の検証結果をわかりやすく説明したパンフレットの作成を予定している。パンフレットを使用して消費者や行政機関、ホームビルダーなどに対して、瓦屋根に関する誤った知識の改善を図っていく考えだ。

現在、多くの自治体が屋根の軽量化で耐震性能が向上するとの情報を発信しているという。そこで、まずは自治体を最大のターゲットとして、パンフレットの配布を含めて正しい情報の普及を進めていく方針だ。パンフレットの完成は9月を予定している。


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