2019.6.21

知っていますか? あなたも納める森林環境税

東日本大震災の復興税を引き継ぐ尊い税。今なぜ森?

令和元年がスタートしてはや3カ月。改元フィーバーも一段落しているが、新年度入りと共にいろいろな制度、法律もスタートしている。その中で意外に知られていないのが、「森林環境税」「森林環境譲与税」だ。ともすると、森林なんて関係ないと、都市に住む人たちは思いがち。ところがだ。森林環境税は国税とした個人住民税に年額1000円が上乗せされ、市町村から徴収されるのだ。納税義務者は全国でざっと6000万人なので、税の規模は600億円に上る。ただその徴収時期は東日本大震災の復興税(防災施策対応)が2023年度に終わった後にそのまま継承される形を取る。このあたりが増税感が薄く、大きな議論にならない理由かもしれない。そしてこの森林環境税と対になっているのが、森林環境譲与税だ。これは徴収した森林環境税を全額いったん譲与特別会計に預け入れた上で、市町村、都道府県に譲与、市町村はこれを間伐など森林整備の費用に当てる、と言う形を取る。まさに森林整備に特化した財源だ。ユニークなのはこの譲与税は本年度から課税に先行して施行されるという点だ。復興税の終わるまで待てないのでその間、譲与税特別会計からの借入金でまずは対応し、実際に森林環境税の徴収が始まる2024年度の税収分から徐々に償還していく。今のところ、全てを償還し、徴収額の全額、約600億円が使えるのは2033年度からだ。

そしてここで初めて議論が沸く。なぜ、今「森林」なのかーー。

そこにはいくら補助金をつぎ込もうが林業経営が立ち行かず、山が荒れている窮状が浮かび上がる。その一方で森林整備の重要性は高まる。地球温暖化防止に向けた新たな国際枠組み[パリ協定]や最近の山地災害の増加がそれだ。地球温暖化防止では、日本の温室効果ガス削減目標のうち、4分の3近くを管理された森林によって吸収、賄うことになっている。放置されたままの森林では吸収目標を達成できない。国際的な信用も低下する。また、頻発する豪雨災害は都市住民の生命、財産をも脅かす。それを軽減するのが森林であり、そのためにも森林整備が必要。森林環境税はまさにそのために創設された。

ただ、意外に思うかもしれないが、森林譲与税は森林の無い都市部にも配分される。これは、整備・管理された森林から生産される木材の利活用を都市に期待しているからだ。戦後、輸入材に押されてわが国の木材自給率は大幅に低下してきたが、ここに来て日本の森林の大半は50年生を超える利用可能な森林になりつつある。このため、2002年に19%まで下がった木材自給率は2017年には36%まで上昇した。この流れをさらに加速させるのが川上の森林整備と川下の木材の利活用なのだ。まさにそこに都市部の役割と期待があり、だからこその都市部への森林環境税の譲与なのだ。

議論はいろいろあるだろう。ただこれを契機に森林地域と都市部との多彩な連携、協力関係が生まれてほしいと思う。山林が国土の7割を占める森林国ニッポンでありながら、森への関心が薄れていることは確か。山と都市の人的交流があってもいいし、木材利用の多彩な商品開発も盛んになってほしい。

繰り返すが、この森林環境税、東日本大震災の復興税を引き継ぐ極めて重く尊い税なのだ。仇やおろそかには出来ない。国民の監視と検証は不可欠だ。そんな税金、知りませんではすまない。