日頃から書きなぐっていた取材ノートや備忘メモに埋もれていた諸々を拾い、不定期で自由気ままに綴ってみようと思います。落ちこぼれた種から何か芽が出てくるかな——。

古川興一ブログ「落ち穂ひろい」

YKKが定年制を廃止。働きたければいつまでも

生涯現役時代に向けて一石を投じる

ファスナー、建材事業を展開するYKKグループは新年度から社員の定年制を廃止する。人生100年時代に対応し、年齢にかかわらず、社員のやる気にこたえていこうというもので、働き改革が問われる中で、話題を呼びそうだ。

YKKは、かねてから社内に「働き方変革への挑戦プロジェクト」を設置し、その中の核に定年制問題を据えて、検討、議論を重ねてきた。その結果、人生100年時代が現実化しつつある中で、健康で、やる気のある社員には本人が希望する限り、働くことができるようにと定年制を廃止することにした。65歳で一律に退職するのではなく、会社の求める役割を果たすことができる限り、働くことができるわけで、「退職時期は自分で決める」という形になる。平均寿命、健康寿命が延びるなか、65歳を過ぎても元気な人は多く、専門的な知識、キャリアを持つ人も多い。こういった人材が定年だからと辞めてしまうのは企業にとってももったいない。人材活用という面でも定年制廃止はプラスに働く一方、社員にとっても年齢にかかわりなく働けるということで、いつまでも仕事に対する挑戦への活力、モチベーションを保つことができることの利点は大きい。

「一人ひとりが自分の人生と仕事について‘‘ありたい姿‘‘を設定し、目標の実現のために行動に移していく」(YKK会長・猿丸雅之氏)と社員の自立行動への期待を語る一方で、「挑戦し続ける社員を公正に評価・処遇していく」(同)ための人事評価を行うことも明らかにしている。

厚生労働省の「高年齢者の雇用状況調査」(令和元年)によると、人生100年時代に呼応するとともに人材不足への対応で、定年制を廃止する企業は増えてきている。同調査は全国の常時雇用する労働者が31人以上の企業16万1378社を対象にしたもので、規模別では中小企業(31〜300人)が14万4571社、大企業(301人以上)が1万6807社。この中で定年制を廃止している企業は前年の平成30年に比べ184社増え、4297社だが、内訳は中小企業が4209社(177社増)、大企業が88社(7社増)と、中小企業での定年制廃止が98%を占めている。中小企業では、人材確保が難しくなる中、優秀な人材の継続雇用、技術やノウハウの継続ができるなどの事情からとみることができる。大企業での定年制廃止が少ないのは、新陳代謝・世代交代が進まない、人件費の増加などが理由とみられている。

同省の高齢社会白書には「60歳以上の約57%が75〜80歳まで働きたい。あるいは、働けるうちは働きたい」との調査もある。海外ではイギリス、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドなど国として定年制を廃止しているところもあり、高齢者雇用は世界的な流れとみてよさそうだ。

大企業のYKKグループが定年制廃止に踏み切ることは、生涯現役社会の実現に向けてのフロンテイアの動きとも見ることができ、その行方が人事評価システムの在り方を含めて注目を浴びそうだ。

2021年3月10日