LIXILが進める改革 数字に表れはじめた成果とは
LIXILは2021年3月期の第3四半期決算を発表した。売上、事業収益ともに前年度同期の実績を下回ったが、同社の瀬戸欣哉社長は、「組織改革、働き方改革、業務のデジタル化を実直に進めてきた結果が数字になってきている」と自信を覗かせた。
LIXILの第3四半期までに売上高は約1兆355億円で前年同期比9.9%減、事業利益は約452億円の同13.8%減となった。新型コロナウイルスの影響もあり、売上収益は国内事業が同11%減、海外事業が同6%減という厳しい状況だが、第2四半期から第3四半期にかけてはいずれも回復基調を示しているという。
在宅時間の増加に伴い住宅への投資意欲も高まっており、とくにリフォーム需要では高付加価値商品の割合が高まってきているといった好材料も出てきているようだ。

一方、同社では「変わらないと、LIXIL」を旗印に組織改革と生産性向上を推し進めている。瀬戸社長は、その結果がここにきて数字に表れはじめてきたことを強調する。
例えば、第3四半期までの販管費は、前年同期から275億円減少。第3四半期の3カ月に限った事業利益率も前年同期の4.7%から8.0%にまで改善している。第3四半期までの9カ月では、前年同期から0.2ポイント減少の4.4%だが、「コア事業に集中し、効率よい組織に変革していくという点については、やるべきことはやった」(瀬戸社長)としており、通期ではさらに改善すると見ている。
これまでに、LIXILビバの売却を完了したほか、川島織物セルコンとジャパンホームシールドの株式譲渡も発表し、矢継ぎ早に組織の簡素化と基幹事業への集中を図ってきた。積極的なM&Aによって、事業領域を拡大し、売上高を伸ばしてきた従来の戦略から大きく舵を切ったと言っていいだろう。
さらに、「ニューライフ」と称した希望退職プログラムの実施にも踏み切った。要望に応じて再就職の支援を行う形で1200人の希望退職者を募集し、965名の応募者があったという。募集人員は下回ったものの、販管費の削減に寄与している。
都内23拠点の集約も進め、来期以降、全国の営業拠点・ショールームの再編にも着手していく。統廃合の影響を見極めながら、営業拠点を半分以下にまで削減することも検討するという。
瀬戸社長は、「国内事業をキャッシュイーターからキャッシュジェネレーターに変えていく」という目標を掲げてきたが、キャッシュを消費していく事業から、キッシュを生み出していく事業へと国内事業を転換していく道筋は見えてきたと語る。
一方で、海外事業の強化やニュービジネスの創造といった“攻めの改革”については、今後の課題になりそうだ。
コロナ禍の中で思い切った改革を推し進めるLIXIL。これまでのレガシーが肩に重くのしかかり、本質的な変革に踏み切れない企業の好例となるのか。それともレガシーの価値を再認識することになるのか―。今後の手腕が試される瀬戸社長は、来期の業績に関して「自信はある」と断言しており、確かな手応えを感じているようだ。
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