2026.10.27

福田康夫氏が語った200年住宅ビジョンの真意とは―

問われる200年先に残すべき価値

福田康夫元首相が都内の病院で逝去された。2007年5月、自民党政務調査会住宅土地調査会から「200年住宅ビジョン」が発表された。その時の住宅土地調査会長が福田氏であった。その後、「200年住宅ビジョン」は「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」へとつながっていく。当時、福田氏は「200年住宅ビジョン」にどのような想いを込めたのだろうか。あらためて当時の本誌のインタビュー記事から考えてみた。

本誌では、自民党の「200年住宅ビジョン」の発表を受けて、2007年14号において「今、なぜ、200年住宅なのか~真の豊かさの実現へと脱皮する住まい~」という特集を組んだ。あらためてこの特集タイトルを見て、「我ながら随分と大上段に振りかぶったものだ」と恥ずかしさえ感じた。

しかし、当時の自民党政務調査会住宅土地調査会長であり、その後、首相に就任することになる福田康夫氏のインタビュー記事からは、住宅をひとつの突破口として新しい豊かさを創造していこうという想いが感じられた。

インタビューにおいて福田氏は「このビジョンは住宅だけで終わるものではなく、成熟社会にふさわしい生活文化の創造へとつながっていくもの」と語っている。

諸外国に比べて日本では、住居費に費やす経済的な負担が大きすぎると指摘されてきた。その結果、ゆとりが失われていると。

しかも、30年もすれば建物価格はゼロになるという状況は、どんなに住宅に投資をしても、国富が積み上がらないという悪循環を生んでいる。それによって580兆円もの投資額が消失しているという試算もあるほどだ。

この悪循環を断ち切るための手法として検討されたのが「200年住宅ビジョン」であった。建物を欧米並み、またはそれ以上に長持ちさせることで、将来世代の住居費負担を減らし、なおかつ国富が積み上がっていく状況を生み出していこうというわけだ。

この考え方は長期優良住宅へと引き継がれていくことになる。

2025年度までに長期優良住宅の認定を取得した戸建住宅は185万戸を超え、25年度に着工した戸建住宅のうち、49.8%が長期優良住宅となっている。戸建住宅においては、長期優良住宅の標準化が着実に進展していると言っていいだろう。

果たして、こうした状況の先に「成熟社会にふさわしい生活文化の創造」という最終ゴールが待っているのだろうか。

確かに中古住宅市場が拡大しているが、それを強力に後押ししているのは「住宅価格の高騰」という意図せぬ要因であり、豊かさを創造する過程にあるとは到底思えない。

さらに言えば、拡大するストック市場とは裏腹に、住宅の建物価値は未だに「30年もすればタダ同然」という状況が根強く残る。

福田氏は「建築業界の方々には、『200年先にどういった価値を残すか』ということをしっかりと考えて欲しいです」とも述べている。

200年先にどういった価値を残すのか―。この問いかけに対する答えを、今の住宅産業界は持ち合わせているだろうか。かつて住宅産業界が掲げた「豊かな住生活の実現」というお題目は、単なる”キレイゴト”で終わるのか。

あらためて福田氏の言葉を追っていると、「住宅が変われば、成熟社会に相応しい豊かさの輪郭が見えてくるのではないか」と高揚した当時の気持ちが蘇ってきた。

自分もまた、「200年先にどういった価値を残すのか」という福田氏の問いかけを忘れていたのだろう。

この問いに対する答えを導き出すことは容易ではない。しかし、住宅産業界は絶えず考え続けるしかないのだ。住宅とは生活の基盤であり、力強い生活の豊かさを示す象徴なのだから。

*福田康夫氏のインタビュー記事は弊誌の創刊40周年記念サイトで読むことができます。https://ht40th.sohjusha.co.jp/ht/330/