New   2025.11.17

パナソニック ハウジングソリューションズ、YKKグループ傘下に

35年度に1兆5000億円目指し 

 

YKKとパナソニック ホールディングス(PHD)は、パナソニック ハウジングソリューションズ(PHS)に関する株式譲渡契約を締結した。PHSはYKKグループ傘下に入ることになり、シナジー効果によって2035年度に1兆5000億円の売上高を目指していく。新たな建材・設備の総合メーカーが誕生する。

YKKが中間持株会社を設立し、グループを再編

今回の株式譲渡契約により、2026年4月までにPHDが保有するPHS株式のうち80%を、YKKが設立する中間株式会社が取得する。また、2027年4月以降にはYKKの子会社であるYKK APも中間持株会社の傘下に入る。中間持株会社の下にYKK APとPHSが並列に並ぶ形でシナジー効果の最大化を図っていくというわけだ。

YKK APの堀秀充会長は、PHSのグループ会社であるエクセルシャノンやケイミューなども含めて、「(ブランド名について)現時点では残すつもり」と語っている。

今回の株式譲渡については、24年11月にパナソニック側からYKKに打診があり、1年かけて協業の検討を進めてきたという。

「国内の新築市場が縮小するなかで、リフォームやIoT住宅といった部分でお互いのシナジーを発揮し、新たな商品や価値を提供できると判断した」(YKK AP堀会長)

「(両グループが協業することで)リフォーム、海外、非住宅などの取り組みスピードを上げていくことができる」(PHS山田社長)。

パナソニックグループの他の企業との連携も

PHSの株式20%をPHDが持ち続ける理由について、PHSの山田昌司社長は「PHSでは、エコキュートや太陽光発電など、パナソニックグループの他の会社の商材もワンストップで提案している。こうした連携を今後も継続することで、単なる住宅設備というカテゴリーとは異なる形でシェアを獲得できる」と説明した。

つまり、YKKグループとパナソニックグループのつながりの”証”として、PHSが20%の株式を持ち続けるといわけだ。

よりシナジー効果を得やすいYKKグループとの協業で改革スピードをアップ

パナソニックグループでは、グループ全体で事業改革を進めており、今回のPHSの株式譲渡については、ある意味、自力再建に限界を感じたと捉えることもできる。PHDの隅田和代グループCSOはこの点について、「グループ内で改革を進めるよりも、YKKさんのお力を借りた方が実行性や改革のスピードを向上できると判断した」と語っている。

例えば海外事業で言えば、YKK APは24社の海外子会社を持っており、PHSの海外拠点は4拠点に留まっている。

PHD全体でみると多くの海外拠点を有しているが、PHSの住宅建材事業などについては、受注産業であり、家電などと比較するとリードタイムが長く、必要とされる人材や技能も全く異なる。そのため、パナソニックグループ内だけではシナジーを発揮にしにくい。

対して、YKK APの海外拠点については、同じ建材事業を展開しているだけに親和性が高く、より効率的に海外事業を拡大できる可能性があるというわけだ。

また、YKK APのカーテンウォールとPHSのグループ会社であるケイミューの外装材、さらにはパナソニック アーキスケルトンデザインが展開するテクノストラクチャー工法などを融合することで、「住宅建築の工業化、効率化を進め、人手不足を補う新しい価値を提供していくことも考えられる」(PHS山田社長)ともしている。

写真左からPHSの山田社長、YKK APの堀会長、YKK APの本田取締役、PHDの隅田グループCSO

海外シフトもより鮮明に

2024年度の売上高は、YKK APが5616億円で、PHSが4795億円。単純合計すると売上高1兆411億円の建材・設備メーカーが誕生することになる。両社では、2035年度までに売上高1兆5000億円を目指していくという。

YKK APの堀会長は「(売上高1兆5000億円のうち)半分以上は海外になるのではないか」としている。今回のグループ再編で海外シフトの姿勢もより鮮明になってきそうだ。

再燃するか⁉ 建材・設備業界再編の動き

2001年、当時のトステムとINAXが経営統合し、純粋持株会社「INAXトステム・ホールディングス」(現LIXIL)が設立され、業界に大きな衝撃をもたらした。その際に有力な”対抗馬”のひとつと目されていたのが、幅広い建材・設備商品を展開していた松下電工(現PHS)であった。

また、YKK APは、TOTO、DAIKENと資本関係無き協業グループ「TDY」を立ち上げ、LIXILグループのトータルハウジング戦略に対抗してきた。なお、TDYについてYKK APの堀会長は、「できればPHSさんを加えた形で関係性を継続していきたい」という考えを明らかにした。

LIXILの2024年度の売上高は1兆5047億円。PHSの山田社長は、「(LIXILとは)同じような商品を取り扱っているようで、実は違っている部分も多く、すみ分けを行いながらシェアをとっていくことは可能」と語る。今後、LIXILグループとPHSを含むYKKグループが建材・設備業界の中心的存在になることは間違いないだろう。さらに言えば、”第三極”の誕生を誘発する可能性さえある。

国内の新築市場の縮小を受けて、建材・設備業界の主戦場はリフォーム、さらには海外へと変わってきている。こうした市場環境の変化もあるだけに、今回の件をきっかけとして、建材・設備業界で業界再編の動きが再燃しそうだ。