建設業界、”待ったなし”の人手不足。 国土交通白書が示す日本のインフラを揺るがす危機的実態
高齢化や生産性の低さ顕著に
建設業における担い手不足がさらに深刻化していることが、国土交通省が公表した「令和7年度 国土交通白書」で明らかになった。このままでは、生活に不可欠なインフラの整備や維持、そして災害時の「地域の守り手」としての役割を担う建設業界の存続自体も危ぶまれることになりそうだ。
様々な業種・業界で表面化している担い手不足問題だが、建設業の状況は他業種と比較しても深刻な状況にある。国土交通白書によると、2024年における55歳以上の割合は、全産業の平均が32.4%であるのに対して、建設業は36.7%となっており、高齢化の進展が顕著である。
反対に29歳以下の割合は、全産業の平均は16.9%だが、建設業に限ると11.7%に留まっており、新規入職者の獲得という点でも後手を踏んでいると言えそうだ。
そのひとつの要因が労働時間の多さと賃金水準の低さ。同白書によると、建設業界の労働環境は他産業に比べて厳しく、2023年度の年間平均労働時間は全産業より62時間長く、休日は「4週6休程度」が最多で、週休2日の確保ができていない場合が多い。賃金水準も着実な上昇は見られるものの、全産業労働者(非正規除く)の平均508万円に対し、建設業生産労働者は432万円と依然として低い水準に留まっている。
こうした状況に建設資材価格高騰が追い打ちをかける。建設工事費デフレーター(総合)と建設資材物価指数を比較すると、2021年以降、建設工事費デフレーターが建設資材物価指数の上昇に追いついていない状況にある。つまり、建設資材の値上がり分を建設コストに十分に反映できておらず、そのしわ寄せが人件費へと押し寄せている懸念もある。

建設業の生産性の低さも目立つ。国土交通白書によると、建設業の労働投入量は2007年から2023年の比較で約20%減少し、労働生産性は約40%上昇しており、生産性が飛躍的に上昇している。しかし、その一方で産業別の労働生産性を見ていくと、例えば不動産業の労働生産性は建設業の7倍以上という試算結果もある。
このままでは建設技術者の需給ギャップが拡大していくことが見込まれるが、国土交通白書によると、経済成長率が実質2%程度で推移すると仮定すると、2030年度、2035年度に供給不足が生じるという。建設業の生産性が向上したパターンで試算すると、全ての年度で需給ギャップは解消できる。
こうした実態を踏まえて、国土交通白書では建設技術者の処遇改善や、女性などの担い手拡大、さらにはデジタル技術などを活用した生産性の向上が必要であると指摘する。
果たして、建設業は新3K(給与がよく、休暇が取れ、希望が持てる)を実現し、なおかつ他産業と同等の生産性を確保できるようになるのか―。もはや小手先の対策ではなく、業界挙げてムダ・ムリを削減するための標準化やDXなどに取り組むべきではないだろうか。
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