New   2025.5.2

住宅着工が急増 法改正睨み着工前倒し

反動減の懸念も高まる

 

国土交通省が2024年度の新設住宅着工戸数を発表した。前年度比2%増の81万6018戸となり、3年ぶりの増加に転じた。住宅市場にようやく明るい兆しが見えてきたと考えたいところだが、実態はそうとも言えないようだ。

2024年の暦年ベースでは15年ぶりに80万戸を割り込んだ住宅着工戸数であったが、年度ベースでは一転して増加に転じた。

利用関係別では、持家が同1.6%増の22万3079戸で3年ぶりの増加となった。貸家は同4.8%増の35万6893戸。分譲住宅については、同2.4%減の22万9440戸で、2年連続での減少となった。分譲のうちマンションは同5.0%増の10万5227戸、戸建住宅は同8.5%減の12万2319戸という状況だ。

なぜ、暦年ベースで80万戸を割り込んだ住宅着工戸数が、一転して年度ベースでは3年ぶりの増加に転じたのか―。2025年3月の住宅着工戸数を見ると、その理由は明白である。

25年3月の着工戸数は、8万9432戸で前年同月比39.1%増という伸びを見せている。利用関係別でも、持家が同37.4%増、貸家が同50.6%増、分譲マンションが同20.4%増、分譲戸建てが同23.3%増となっており、いずれも急増している。

急増の要因については国土交通省では、「複数の事業者へのヒアリングによると、2025年4月1日からの法改正の影響で、着工を前倒ししたものが多かったようだ」と述べている。つまり、4月1日からの4号建築特例の縮小と省エネ基準の適合義務化を睨み、駆け込み需要が発生というわけだ。

貸家については、4号建築特例の縮小の影響を受ける物件は少ないだろうが、省エネ基準の適合義務化の前に着工してしまおうと考える事業者が多かったようだ。

分譲マンションについては、今回の法改正の影響というよりは3月に着工する物件がたまたま多かったというのが増加の要因のひとつになっている。

3月の急増が駆け込み需要であるとすると、今後の反動減が懸念される。この点について国土交通省は、「ヒアリングを実施した事業者からも、消費者マインドが回復したわけではないという声が聞かれ、今後の住宅着工戸数の動向を注視する必要がある」と見ている。