2024.12.16

センコーと大手ハウスメーカー3社 共同輸送で物流危機に一石

共同調達にまで踏み込みサプライチェーンを改革

 

物流会社のセンコーと、旭化成ホームズ、積水化学工業 住宅カンパニー、積水ハウスは、住宅物流での協業を開始した。住宅物流4社協議会を発足し、持続可能な物流体制を構築していく方針だ。また、共同調達の検討も既にスタートさせているという。

2024年4月に時間外労働の上限規制がトラックドライバーにも適用されたこともあり、トラックドライバー不足が深刻化している。こうした状況に対応するために、センコーと大手ハウスメーカー3社では住宅物流の効率化に向けた検討を進めてきたという。そして、今回、住宅物流4社協議会を発足し、共同輸送を実施していくことを発表した。

全国7エリア、29カ所ある物流拠点について、4社での共同利用・統合を検討していくほか、「デジタル情報プラットフォーム」を構築し、情報を共有化しながら、より効率的な物流の仕組みを構築していく方針だ。積載効率を向上するために「共通パレット」の導入も検討していく。

また、物流拠点だけでなく車両の共同利用を進める。同時にダブル連結トラックなどによる車両の大型化と、センコーの中継基地「TSUNAGU STATION」を利用した中継輸送にも取り組む。

センコーでは24年8月、静岡に「TSUNAGU STATION」をプレオープンさせており、25年2月には倉庫設備とドライバーの休憩所を併設する形で本格オープンさせる予定だ。この「TSUNAGU STATION」にハウスメーカー3社の工場から出荷された部材などをダブル連結トラックなどで輸送し、そこから各工事現場へと配送していくことで、2025年までにドライバーの運転時間を約1万7000時間(トラック2160台分)削減し、輸送CO2排出量を約500t削減することを目指していくという。

センコーの杉本健司社長は、「まずは4社でしっかりと(効率的なサプライチェーンの)形をつくり、他の企業の方々にも広げていきたい」と語っている。

3社での共同調達も行う。4社の物流拠点とサプライヤーの拠点などを踏まえて、より効果的な共同調達の手法を検討していくという。サプライヤーまで巻き込んでの動きに発展していくことで、住宅業界全体のサプライチェーンに変革をもたらす可能性も出てきそうだ。

左から積水化学工業 住宅カンパニー渉外・購買部長の丸山聡氏、センコーの杉本健司社長、旭化成ホームズ施工本部長の阿部俊一氏、積水ハウスの技術・生産部門担当R&D本部長の野間賢氏。後ろの車両はダブル連結トラック

協働によって物流の効率化へと踏み出した4社だが、今後に向けた課題も残る。センコーの杉本社長は「今回の取り組みで幹線輸送の部分は大きく効率化できるだろう。施工現場への輸送については大きな効果は見込めない」と語る。

住宅物流は、住宅が密集する場所に大きな資材を運び込むことも多く、輸送業務の中でも特に注意が必要な分野である。施工現場と連携した荷卸しが求められるケースも多く、特殊技能を備えたドライバーが求められる。しかし、こうした特殊技能を備えたドライバーの数も減ってきているという。

それだけに、幹線輸送だけでなく、物流拠点から施工現場までの物流も効率化する必要がある。しかし、ハウスメーカーの場合、施工現場が個別散在しているだけでなく、工法などによって荷姿が大きく変わることもあり、ラストワンマイルの共同化が難しいという実情がある。

さらに言えば、ハウスメーカーとサプライヤーによって発注形式や商品情報の管理手法などが異なっているという問題もある。こうした状況が業務の重複・複雑化を生み出しているという実態もあるだけに、例えばJANコードのように企業を横断した形で商品情報の管理手法を統一化していくといった課題も残されている。

民間主導で動き出した住宅物流改革。改善の余地が数多く残されている分野だけに、4社連携によって生み出される今後の成果に期待が集まりそうだ。