2024.2.20

ウッドステーション、PDF図面から積算情報などを自動抽出

手拾いやCADへの再入力作業を一掃

ウッドステーションは、PDFの意匠図面から積算業務などに必要な情報を自動抽出し、手拾いやCAD入力作業などを大幅に省力化する技術を開発した。将来的にはプレカットCADとの連携や構造計算、省エネ計算、工程管理などにデータを活用していくことも視野に入れているという。

ウッドステーションは、大型パネル生産パートナー会の総会を開催し、その席上で次世代情報処理システムに関する発表を行った。

同社では、工場で製造した大型パネルを活用することで木造住宅の工業化を推し進めている。大型パネル生産パートナー会には、大型パネルを製造する事業者などが参画している。

総会で発表した次世代情報処理システムは、AIを活用しPDF化された意匠図面から、積算業務などに必要となる情報を抽出し、最終的にはExcel形式のデータで出力できるもの。

通常、設計者が作成した図面をもとにして、建材メーカーや販工店などは、自ら取り扱っている建材の割付けや材料の拾い出しなどを行うことになる。また、プレカット工場では構造伏図や加工図を作成する。

こうした一連の作業は、多くの場合、人力で行われていることが多い。データ連携が取れているCADシステムなどを活用していれば、一気通貫で設計データから拾い出し作業などを自動で行えるが、実際にはそれぞれのプレイヤー間でのデータ連携は行われていない。そのため、設計者が作成した平面図や立面図から、人力で拾い出し作業などを行い、その情報を自社で利用しているシステムに再入力するといった手間が生じているのが実情だ。

ウッドステーションの大型パネルについても、PDFで送られてきた意匠図から、大型パネルの製造に必要になる情報を人力で抽出しており、その点が業務効率化とコストダウンを阻害する要因になっていたという。

次世代情報処理システムは、こうした問題を根本から解決するものだ。

CADソフトを使わずにPDFから3次元データを生成

PDF化された平面図、立面図をアップロードすると、AIによって画像、線分、文字、座標などの情報を解析しながら、自動で3次元情報を生成していく。この3次元情報から積算業務などに必要になる情報を簡単に抽出できるというわけだ。

例えば、屋根材の拾い出しだけを行い、その結果をもとに概算見積を作成するといったことも行える。建材の販工店などにとっても、大幅な業務効率化につなげることができるツールとなっている。

抽出されたデータは、最終的にはExcel形式でアウトプットすることができる。ソフトやシステムの相互連携が取れていないために、結局は再入力が必要になるといった状況も変革していくことができる。

同社の塩地博文会長は、「一切CADソフトを使うことなく、意匠図からあらゆる情報を抽出することができる。例えるなら、自動で建物のレントゲン写真を生成していくようなもの」と述べている。

この技術の開発に当たっては、森にある樹木を伐採前にリモートセンシングするテクノロジーを活用しているほか、同社がこれまで大型パネル製造の中で培ってきた技能やデータなども利用しているという。

プレカットCADなどとの連携も視野に

塩地会長は次世代情報処理システムについて、「図面からの手拾いや再入力の業務のために、1棟当たり120人工ほどを要している。この業務負担を一掃したい」と語っており、将来的には各種プレカットCADとの連携なども進めていきたい方針だ。

また、4号建築特例の縮小や省エネ基準の義務化などを視野に入れ、構造計算や省エネ計算にもAIで抽出したデータを活用できるようにしていくことなども考えている。  

2024年春くらいには実用化に踏み切る予定で、まずは大型パネル生産パートナー会の会員に無料で提供し、データのさらなる蓄積と進めながら、AIの機会学習を行いながらシステムのブラッシュアップを図っていく。次のステップとして、サブスク形式でオープン化していきたい考えだ。