2023.9.27

パナソニック ホームズが志向する 家で街をまもるための地域連携とは

展示場から街へ繰り出そう!!

パナソニック ホームズは、東京都品川区の戸越銀座商店街との防災連携の取り組みを進めている。そのテーマは「街を、家でまもろう」。なぜ、同社は戸越銀座商店街との連携に至ったのか―。

東京都品川区の戸越銀座商店街。全長1.3㎞にも及ぶ日本屈指の商店街には、休日にもなると2~3万人もの人が訪れる。

江戸と相模の国との境界線に位置しており、「江戸越えの村」と呼ばれていたことから「戸越」という名が付けられたという。また、「戸越銀座」という名前には関東大震災が深く関係している。震災後、東京・銀座で大量に発生したレンガの瓦礫を譲り受け、水捌けが悪い地域に敷き詰めていったという歴史があるそうだ。こうした歴史もあり、銀座のような賑わいのある街にしたいという想いから、戸越銀座商店街と名付けられた。

その戸越銀座商店街の一画にパナソニック ホームズが運営する「住まいのよろず相談所」がある。近隣に2カ所の展示場があるにも関わらず、なぜ、戸越銀座商店街にこのような施設を設ける必要があったのか―。

戸越銀座商店街の一画に開設されたパナソニック ホームズの「住まいのよろず相談所」

同社の東京支社城南支店の阿部亮介支店長は、「(住宅市場の環境変化によって)展示場で待っているだけではなかなか結果が出ないという状況になる中で、我々の方から街へ出ていき、地域住民の方々のニーズにあった提案をしていくことが求められているのではないか。そう考えるようになりました」と語る。展示場から街へ繰り出そう―。新たな営業手法の模索がはじまる。

商店街とのタッグで木密地域の防災性の向上へ

戸越銀座商店街の周辺地域には、木造密集地域が残る。首都圏直下地震などが発生すれば、倒壊した建物などによって緊急車両の通行を妨げてしまう懸念がある。大規模火災が発生する恐れもある。

戸越銀座商店街の周辺に残る木造密集地域

国士館大学防災・救急救助総合研究所の小滝晃 客員教授は、「関東大震災の影響で居住者が増えた結果、木造密集地になってしまった地域が多く残っています。そのようにして誕生した木造密集地が今、地震対策という観点で問題になっているわけです。その意味では関東大震災の因縁を感じます」と語る。

東京都では、2012年から不燃化を強力に推進する「木密地域不燃化10年プロジェクト」を推進し、対象エリアを不燃化特区に指定し、市街地整備を進めようとしている。

戸越銀座商店街の周辺でも、市街地整備が進んでおり、例えば道路の拡幅によって地震後も緊急車両の進入を妨げない環境整備などを進めている。しかし、拡幅工事のための土地取得にはそれなりの時間を要する。小滝氏はこうした行政の取り組みと並行して、「住宅で街の防災機能を高めていくことが必要」と指摘する。

道路の拡幅工事のために土地の取得が進んでいる地域も

具体的には、災害時に延焼火災が燃え広がる経路を可視化する延焼ネットワーク図を活用し、「選択的不燃化」を進めるべきだと主張する。延焼ネットワーク図は、建物が延焼していく様子を線で表現したもの。

この図を見ていくと、多くの線が集中するエリアがあるという。つまり、延焼拡大につながる「ハブ」が存在するのだ。その「ハブ」にある建物の建て替えを促進し、街全体の不燃化を効率的に進めていこうというのが小滝氏の言う「選択的不燃化」だ。

なお、戸越銀座商店街の周辺エリアでは、東京都と品川区の補助を合わせると、住宅の建替え時に800万円以上の支援を受けることも可能だ。公的な支援策も活用しながら住宅の建て替えを促していき、延焼を拡大させるハブを解消していく。住宅が新しくなっていくことで、街の防災機能が向上していくというわけだ。

パナソニック ホームズはこの点に着目し、戸越銀座商店街との協働へと乗り出した。戸越銀座商店街連合会の山村俊雄会長は、「はじめに説明された時、正直、何を言っているのかしっかりとは理解できませんでした」と当時の状況を振り返る。パナソニック ホームズとしては、商店街と連携することで街へと入り込み、地域住民と一緒になって街の防災機能を向上していこうと考えたが、いきなり商店街と防災を結び付けて考えることは難しいだろう。

パナソニック ホームズでは、前出の小滝氏の力も借りながら、木密地域解消の必要性などを丁寧に説明することで、商店街の理解を得ていく。