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2021.5.14

脱炭素化の遅れを取り戻すためにも ZEHの義務化などを検討すべき

インタビュー  エコワークス 小山貴史 社長

米国が民主党政権に移行したこともあり、脱炭素社会の実現に向けた動きが世界規模で加速している。日本でも政府が2030年度の温室効果ガス削減目標を引き上げるなど、次のステージに移行した感がある。こうした状況のなかで住宅業界はどのような方向へと進むべきなのだろうか―。かねてから住宅の脱炭素化を訴え、先進的な取り組みを進めるエコワークス(福岡県福岡市)の小山貴史社長に聞いた。

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「2025年までに事実上ZEH義務化を」と語るエコワークスの小山貴史社長

―世界的な脱炭素化の流れが加速してきている印象がありますが。

私は、2015年12月にパリで行われた気候変動に関する国際会議・COP21関連ビジネス会合に参加しました。その際に当時、アメリカの国務長官だったジョン・ケリー氏のスピーチを聞き、資本主義社会から炭素主義社会へ変わるくらいの大きな社会変革が起きようとしていると感じました。

その後、アメリカはトランプ政権下で気候変動対策に消極的になった印象がありましたが、カリフォルニア州などでは先進的な取り組みが進められていました。ヨーロッパ各国はパリ協定以降、脱炭素社会に向けた取り組みをさらに加速させていったのです。

ちなみにケリー元国務長官は、バイデン政権では気候変動問題担当の大統領特使に指名されています。 

一方、日本では、欧州諸国などと比較すると、取り組みに物足りなさがありました。ところがアメリカの政権が変わったことをひとつの契機として、日本でも政治主導で脱炭素社会の実現に向けた急速に動き出そうとしています。

菅首相が国会の所信表明演説の中で2050年までにカーボンニュートラル社会の実現を目指すと述べ、状況が一気に変わってきているのです。また、政府の2030年度までの温室効果ガス排出削減目標も、それまでの13年度比で26%削減から46%削減にまで引き上げられました。

パリ協定から6年―。その遅れを取り戻すためにも、挑戦的な目標値の達成に向けて動き出しているのです。

全国知事会もZEHの早期適合義務化を求める

―住宅業界も今まで以上の対応が求められそうです。

日本全体の温室効果ガスの削減目標が26%減であった時点で、国では住宅(家庭部門)で39%削減という目標掲げていました。この目標値を算出した根拠資料が最近になって国土交通省から公表されましたが、これを見ていくと2030年の戸建住宅ストックのうち、227万戸がZEHレベルになっている必要があると試算されています。

現時点でのZEHのストック数がおよそ30万戸。そうなると、2030年までに約200万戸の戸建住宅がZEH化される必要があります。年間の戸建住宅の新築着工戸数を約40万戸とすると、新築される戸建住宅の5割をZEHにしなくてはいけない。

現時点での供給実績ベースでのZEH化率が20%。いきなり今年からZEH比率を5割以上に引き上げることができればよいでしょうが、現実的に難しい。そうなってくると、どこかの時点でZEHを事実上義務化しないと、2030年までに約200万戸のZEH化された戸建住宅のストックを創出することは不可能ではないでしょうか。

ここで注意すべき点が、この話の前提は日本全体の目標が26%減であること。先ほども言いましたが、既に目標値は46%に引き上げられているのです。つまり、もはや200万戸がZEH化されるだけでは足りないのです。

個人的には事実上2025年にはZEHを義務化し、2030年にはZEH+を義務化するべきだと考えています。

内閣官房が主催した「国・地方脱炭素社会実現会議(第2回)」において、全国知事会から「脱炭素社会の実現に向けた対策の推進に関する提言」が提出されましたが、このなかでもZEHの早期適合義務化を求めています。

―新築住宅に太陽光発電設置を義務化するという議論も高まっていますが。

太陽光発電の義務化については、既に菅首相も言及しています。難しいことは十分に分かっていますが、義務化を目指すべきだと考えています。もちろん多雪地域や寒冷地、低日射地、都市部の狭小敷地などの例外規定は設けるべきでしょう。

当社では、新築住宅の9割がZEHで、4割がLCCM住宅です。ただし、契約時点で太陽光発電の設置を決めているお客さまは2~3割に過ぎません。まずは信頼してもらい、そこから丁寧に気候変動に関する現状や太陽光発電を搭載するメリットを私自ら説明していきます。これまでに太陽発電を搭載した住宅の実績値を示しながら、光熱費の削減効果も説明します。その結果、9割のお客さまが太陽光発電を設置してくれます。

「お客さまが太陽光発電の搭載を希望しなかったので、ZEHにならなかった…」という話も聞きますが、私の経験から言うと、丁寧に説明すれば多くの人が納得します。説明が足りないだけではないでしょうか。さらに言えば、第三者保有モデルを活用すれば、初期費用の負担なく太陽光発電を設置することもできる状況になっています。

ZEHは、お客さま、住宅会社、そして社会全体にメリットをもたらします。これまでZEHを供給するなかで、そのことを実感しているところです。

省エネ基準の義務化の議論のなかで、「対応できない工務店が出てしまう」という意見がありましたが、元請けとして住宅事業を会社の柱としてやっていこうという企業であれば、省エネ基準への適合を難しいと捉えている企業はそれほどいないのではないでしょうか。ZEHについても、構造躯体の対応はそれほど難しくないので、残るは太陽光発電を搭載するか否かなのです。 冒頭にお話したように、世界は脱炭素へ向けて走り続けています。日本でもようやく今までの遅れを取り戻すべく、政治主導での取り組みが表面化している。それだけに、住宅事業者もまずはZEHを当たり前にしていくべきなのです。

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ハウジング・トリビューンVol.628(2021年19号)

特集:

住産業はどう対応する?

社会が大きく変わりつつある。
環境対策は待ったなしの緊急課題で、脱炭素社会の実現に向けた取り組みが急展開している。
少子高齢化は、わが国の人口構成を大きく変え、これまでになかった社会を迎えつつある。
また、地震や台風などの自然災害の激甚化・頻発化は気候変動への対策とあわせ、その対策が強く進められつつある。
さらにコロナ禍は、働き方改革やデジタル化を好むと好まざるとにかかわらず、強制的に進めることになった。
こうしたなかで人々の暮らしも変わりつつある。
生活を支える住産業は、こうした変化にどのように対応していくのか──。
各省庁がまとめた白書をベースに、さまざまなデータを紐解いた。

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