新築住宅への太陽光発電の設置義務化は実現するのか
3省共同の検討会で議論
小泉進次郎環境相の発言もあり、議論が高まっている新築住宅への太陽光発電の設置義務化。国土交通省、経済産業省、環境省の3省が合同で開催した「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」でも論点のひとつとして取り上げられた。果たして新築住宅への設置義務化は本当に実現するのだろうか―。
国土交通省、経済産業省、環境省の3省は、「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」の第1回目となる会合を開催した。この検討会は、住宅・建築物への省エネ基準の義務化や既存建築物の省エネ対策の今後のあり方などを検討するためのもの。座長は早稲田大学創造理工学部建築学科の田辺新一教授が務める。
第1回目の検討会では、主な論点のひとつとして新築住宅などへの太陽光発電の設置義務化が取り上げられた。太陽光発電の設置義務化については、小泉環境相がその必要性について言及したことが報道されるなど、議論が高まりつつある。
検討会では、太陽光発電の設置義務化の賛否に関する意見が委員からあがった。住宅・建築物の環境対策において先進的な取り組みを進める鳥取県の平井伸治知事は、「一律義務化は難しく、やるなら思い切った助成制度が必要」と指摘した。
住宅用の太陽光発電については、FIT(固定価格買取制度)が普及を大きく後押ししたが、余剰電力の買取価格は年々減少しており、2021年度は1kWh当たり19円(搭載容量10㎾未満)となっている。買取価格が減額されるなかで、とくに多くの発電量を期待できない多雪地域などでは、太陽光発電設置に伴う初期費用を回収することが難しくなってきている。
また、「電力の需給ギャップを埋めることができるのか」という点も論点になりそうだ。日中に太陽光発電が多くの電力を生み出すのに対して、一般的な住宅では夕方以降に電力需要が高まる。いわゆる”ダックカーブ”と呼ばれる現象だ。結果として発電された電力の多くは自家消費されるのではなく、余剰電力として売買されることになる。そうなると電力系統への負荷が高まってしまう懸念がある。
ちなみに日本では、2014 年 9 月に九州電力 などが、太陽光発電をはじめとした自然エネルギーの急増し、電力系統への接続可能量を上回る懸念が出てきたことを理由に、10kW 以上の再生可能エネルギーの接続申込みの回答を一時保留するという事態が発生している。
検討会の委員会からもこうした問題点を指摘する声が挙がる一方で、「公共施設などへの設置をまず優先すべきではないか」、「多雪地域は除外するような形で義務化すべき」、「住宅の屋根を活用することは検討すべきだが、電力会社などが屋根を借りるような形で設置するやり方も考えられる」といった意見が寄せられた。
米国のカリフォルニア州では2021年1月から新築住宅などへの太陽光発電の設置義務化に踏み切っている。ダックカーブの問題を解消するために蓄電池の設置も同時に促進しようとしているほか、太陽光発電パネルをあまり設置できない住宅などへの免除措置も設けている。
現状を考慮すると、日本で設置義務化を実現するためには、まだまだ解決すべき課題が山積みである。初期費用無しで太陽光発電を設置できる第三者保有モデルや蓄電池、さらにはデマンドレスポンスなどの仕組みを活用し、義務化を阻む障壁をどこまで取り除くことができるのか―。こうした点が今後の焦点になりそうだ。
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