木材が買えない!? 住宅市場に忍び寄る木材危機

国産材価格も上昇 試されるサプライチェーン力

世界的な建築需要の高まりによって木材価格が高騰している。また、ヨーロッパなどからの集成材の調達も難しい局面を強いられており、「そもそも木材を調達できない」という状況が表面化しつつある。コロナ禍から克服しつつあった住宅市場に大きな影響を及ぼすことになりそうだ。

コロナ禍の影響によって、世界中で建築需要が高まってきている。各国が金融緩和策を講じたことに加えて、アメリカなどでは在宅時間の増加によって都心の集合住宅から郊外の一戸建てへと移住する人が相次ぎ、住宅市場が好調に推移している。

こうした影響を受けて木材価格が高騰しているのだ。住宅需要やDIY需要の高まりを契機として、アメリカの木材需要が高まっている。その一方でカナダでは松くい虫の被害による構造的な供給キャパの減少に加えて、コロナ禍の影響でSPFの製造を減産していたため、需要の増加に対応できないという状況に陥ったのだ。

現在ではこうした状況は脱しつつあるが、まだまだアメリカの旺盛な住宅需要は続いており、木材の需給バランスが崩れつつある。

ここに追い打ちをかけたのが、中国の木材需要の増加と世界的なコンテナ不足。中国の木材需要については、アメリカ以上に今後の木材市場に大きな影響を及ぼすと考えられるが、足元ではコンテナ不足によってヨーロッパからの集成材が日本に入ってこないという状況が表面化している。

市場関係者からは「通常2カ月程度で日本に到着していたヨーロッパの集成材が、今ではいつ到着するのか分からない状況が続いている。2月到着予定のものが未だに届かないという状況が常態化しつつある」という声もあがっている。

コンテナ不足の大きな要因が、いち早くコロナ禍から脱出した中国がコンテナを買い集めていること。通常コンテナは荷物を積み込んだ状態で輸出され、帰りの便で別の荷物を運んでくる。中国では空のコンテナさえも高値で調達するケースもあるという。

コンテナ不足に直面したヨーロッパの集成材メーカーは陸路を利用して、ヨーロッパや中東へと集成材を輸出し始めている。先述したように世界的な木造建築需要の高まりによって、ヨーロッパや中東でも木材需要が高まっているからだ。

下のグラフは、集成材の日本への輸入量を示したもの。徐々に輸入量が低下していることが分かる。2021年2月の集成材輸入量は、前年同月比21%減の約6万㎥で、5カ月連続の減少となった。EUからの輸入量は同25%減という状況である。

プレカット材の供給ストップの懸念も 住宅取得支援策などにも影響が

こうした状況下で集成材の価格が値上がりしており、足元で2~3割は高くなっているという声も聞かれる。また、伊藤忠建材木材製品事業部の久村将英 木材製品第二部長によると、「今の状況を考慮すると、今後、さらに価格が上昇する懸念があり、先が見えない状況」だという。

さらに、材料調達の多くをヨーロッパに頼る国内のプレカット工場では、調達不足のために新規の受注を止めざるを得ない状況も近づきつつある。こうなってくると、今後の住宅市場への影響は避けられないだろう。「受注しても着工できない」という状況が多発する懸念があるのだ。

現在、住宅市場では国が打ち出したグリーン住宅ポイント制度やローン減税制度などの住宅取得支援策の影響もあり、郊外の分譲住宅などを中心として明るい兆しが見え始めている。しかし、多くの住宅取得支援策には期限が設けられており、木材不足により着工・引き渡しができない場合の対応が求められることになりそうだ。

また、住宅会社の多くがコロナ禍で建築が遅れたこともあり受注残が積み重ねってきており、こうした状況に木材不足がもたらす影響も心配される。

関連する商社やプレカット工場も材料確保に奔走しているが、「今までの常識が通用しない状況に苦戦を強いられている」という声も聞かれはじめている。

国産材への問い合わせが急増 これまでの調達姿勢が強みに

海外からの木材輸入量が減少する一方で、国産材の需要が高まっている。

下のグラフは製材用国産材の素材価格の推移を示したものだが、2020年7月あたりから上昇傾向にある。

前出の伊藤忠建材の久村部長によると、「国産材を扱う商社や製材工場に、これまで取引が全くなかった企業からの問い合わせが増えている」という。しかし、国産材の供給量が需要増に追いついていないだけでなく、中国などに輸出される量も増加傾向にあり、国産材であっても簡単には調達できない。

国産材を扱う製材事業者なども、かねてから取引きがある企業に優先的に国産材を供給しており、急な要求には対応できていないというのが実情だという。以前から製材業者やさらに川上も山側の事業者との連携を進め、国産材の安定供給を実現するサプライチェーンを構築してきた住宅企業にとっては、非常時にその取り組みの価値が際立ってきた格好だ。

世界的な木材市場については、中国などの需要増加によって日本市場の存在感が低下しつつあるという指摘があった。それだけに住宅事業者にとっては、リスク回避という意味でも国産材に関するサプライチェーンを構築することが求められている。しかも、過剰な価格競争を強いるようなサプライチェーンではなく、木材のサプライヤーと住宅事業者が同じテーブルにつき、同じ目線で持続可能なサプライチェーンと森林経営を検討する時期に来ているのではないだろうか。

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ハウジング・トリビューンVol.618(2021年7号)

特集:

SDGs、脱炭素達成に向け脚光

国産材を取り巻く環境は近年、劇的に変化している。
伐採期を迎えた国産材を積極的に活用しようという機運が高まり、また、SDGs、脱炭素といった観点からも国産材に脚光が集まる。
さらに、新型コロナ感染拡大の影響で、外材の輸入が滞り、外材が高騰、不足する逼迫した状況の中で国産材へのシフトが加速する。
こうした中で、持続可能な形で国産材活用を推進していこうとする住宅事業者などの取り組みも活発化しつつある。

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