新型コロナショックで、リーマンを上回る企業倒産も 不動産業界の景況感も悪化──帝国データバンク
待ったなしの経済対策。急がれる中小企業への輸血
新型コロナウイルスの感染拡大の中、企業倒産が不気味に増え続けている。コロナ関連倒産は2月に2件だったのが、3月に26件と増え、4月が95件と急増、5月も15日現在で23件に達している。これに伴って、全体の倒産も増え、4月が前年に比べ16.4%増の758件と8か月連続の増加。この700件超は4月としては5年ぶりだ。現在までの倒産件数は今年に入ってすでに2849件に達しており、今後コロナ関連の倒産が本格化する恐れは十分であり、このままでは今年の倒産件数は1万件を超え、さらに09年の1万3306件をも上回る史上最悪の倒産に陥る可能性がある。また倒産に加え、昨年2万3634件だった休・廃業の増加も予想される。
こうした経済・産業界最悪のシナリオの見通しについて。帝国データバンクの東京支社情報部長の赤間博之氏がこのほど日本記者クラブのオンライン会見で明らかにした。
新型コロナウイルス関連倒産は現在、「ホテル・旅館」「飲食店」「アパレル・雑貨小売り」が上位となっているが、帝国データバンクの調査によるとこれにとどまらず今後、「娯楽サービス」、「繊維・服飾卸」「家具類小売り」をはじめ、多くの業種で倒産リスクが高まるとしている。こうした倒産の増加は、当然ながら雇用情勢に大きく影響し、コロナ終息が見えない状況の中、企業は長期戦を余儀なくされるとし、今後ヒト、モノ、カネの回復を見込むのは極めて難しく、深刻な不況への危機感が高まってきそうだ。
業界別の景況感についても企業からの聞き取り調査をしているが、その中でとくに「不動産業界」の景況感が4月に入って厳しさを加えているのが目立つ。例えば、「家賃減免の申し出が多く、新規顧客の獲得も難しい」「賃料の減免相談が管理戸数の10%超で発生」「来客点数の減少によりテナントの売り上げが大幅に減少し家賃収入の減額などもあり、営業収入が大幅に減少している(貸事務所)」などの声が寄せられている。そして先行きの見通しについても「飲食やライブハウスなどの自粛が続くとみられ打撃が大きい」「売り上げが集中する、ゴールデンウイーク、夏休みをはじめ、休業期間が長引けば状況はますます悪くなる」「コロナ終息が長引けば賃貸契約の解約が増え、賃貸収入が減少。新規契約は取れず、賃貸相場全体が下がる」など、予断を許さない状況にあることが明らかになっている。
また建設業界の景況感は他業種に比べれば、不安感は少ない。ただそれでも、「施主が設備投資を控え始めた」「建築資材のサプライチェーンがストップしている」「展示会・イベント・テレビ番組収録の延期・中止が相次ぎ、売り上げが激減している(内装工事)」「計画が止まった現場が多くなってきた」などの声が寄せられており、予断は許さない。
今後の見通しについて赤間氏は「調査は負債総額1000万円以上をカウントしているが、実際はそれ以下の負債を抱えての個人破産も増えてくるだろう。また、中小企業の保有する運転資金は多くが2か月程度であり、4月、5月は何とか持ちこたえても6月以降の経営環境は極めて厳しい。さらに中小企業の資金繰りを支えている金融機関の中心は地域に根差した信用金庫などだが、倒産による貸し倒れなど不良債権の増加が、金融機関を窮地に追いやる懸念もある。与信費用の積み増しなどを含め金融機関の資本力にも目配りが重要になるだろう」と語る。
今、様々な経済対策、中小企業支援策が政府から打ち出されているが、2か月に及ぶ新型コロナ感染防止のための自粛要請の中で、経済・社会活動の疲弊は予想以上のものがあり、今は各種支援策の一刻も早い実施が何よりよりも求められているといっていいだろう。今は「明日の1000円より、今日の100円」の切迫した状況なのだ。新型コロナ感染防止と経済活動の折り合いをどうつけていくかの両にらみが大事になることは間違いない。新型コロナウイルス感染対策では、検査対応の不備で救えたはずの命を救えなかったとの事例も指摘される。せっかくの経済対策も、運用の複雑化や遅拙のせいで、救える企業を見殺しにするような羽目にだけはなってほしくない。「六日の菖蒲、十日の菊」になってはならないのだ。
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