【検証】ウッドショックが突きつけた教訓「木材を誰でも、いつでも、どこでも調達できる時代の終焉」
品質と価格で結ばれた国産材の新たなサプライチェーンの構築が急務
コロナ禍のなかで発生したウッドショック。世界的な木材の需給バランスが変化したことで、日本の建設業界を深刻な木材不足が襲った。ウッドショックはなぜ発生したのか。ウッドチェンジの流れがより鮮明になってきているからこそ、ウッドショックが突き付けた教訓をあらためて検証する必要があるのではないか。そこで、国内外の木材事情に詳しい木村木材工業の木村司社長と、ウッドステーションの塩地博文会長に話を聞いた。
日本企業の買い負けから始まったウッドショック
―まず木村さんにお伺いします。そもそもウッドショックはなぜ発生したのでしょうか。
木村 発端は欧州材の不足です。東京木材埠頭の在庫状況を見ると2020年後半に在庫量が減少しはじめ、14万㎥ほどあった在庫が5万㎥まで減りました。この在庫量の減少を引き起こした主な要因が欧州材だったのです。
なぜ欧州材の在庫量が減ったかというと、世界的な木材需要の高まりを受けて欧州材の価格が上昇したときに、日本の商社などは国内需要不振のため購入価格を上げることができずに買い負けたのです。その後、コンテナ不足などがウッドショックに拍車をかけたわけですが、国際商品である木材を日本が買い負けたことが大きな原因です。
2022年8月、東京木材埠頭の在庫は20万㎥を超えました。東京木材埠頭の蔵置数量は19万2000㎥です。20万㎥という在庫量が、いかに異常かが分かります。その後、損切りをするなどして在庫を減らし、今秋の在庫量は10万㎥を切るという見方もあります。今後も在庫過剰と不足のサイクルを繰り返し、木材価格も乱高下を繰り返すのではないでしょうか。
ウッドショックの際に、商社が大きな利益を得たことを批判する声もありますが、彼らは絶えず損をするリスクを抱えながら木材を調達しています。そのリスクの大きさを考えると、決して法外な利益を得ているとは私は思いません。木材貿易はそれだけ難しいビジネスなのです。
塩地 私がウッドショックで感じたのは、誰もが噂話レベルの情報で右往左往してしまったということ。明確なエビデンスや数字に裏付けされた情報を基に行動している人は、ほとんどいなかった。
穀物や原油などであれば、こうはならない。噂話レベルの情報で企業が今後の方針を決めることはあり得ないでしょう。なぜ、日本の木材業界がこういう状況になっているのか。私はメジャー企業が不在だからだと思います。メジャーと呼ばれるほどの大手会社であれば、噂話レベルの情報は相手にしないし、エビデンスがしっかりした情報を入手する術を持っているでしょう。
さらに言えば、需給の大きなうねりを調整するバランサー的な役割も果たします。残念ながら、今の木材業界にはそれだけの役割を果たせるメジャー企業は存在していません。
―ウッドショックが国際的な市場での買い負けから始まり、なおかつ日本にバランサーもいないとなると、今後も同様の事態が発生するリスクがあるということでしょうか。
続きは書籍でご覧ください
森とまちをつなぐ 木と建築 No.2
ISBN-13 : 9784883511525
発行: 株式会社 創樹社
体裁 : A4変形/ 本文112頁 / オールカラー
発売日 : 2023年8月10日
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