CLTと地域産材を融合した森林事務所
メーカーなどと協働しCLT建築の普及を目指す
【物件 】安芸森林管理署 野友・北川・安倉 森林事務所高知県安芸郡
【施工】株式会社 響建設高知県高知市
高知県高知市の響建設が施工を手掛けた安芸森林管理署 野友・北川・安倉森林事務所は、CLTと地域産材を融合した木造建築。響建設では、これまでもCLT建築に積極的に取り組んでおり、その可能性や課題も見えてきているという。
安芸森林管理署 野友・北川・安倉森林事務所は、四国森林管理局が管理する森林事務所の建替え工事。設計をあすなろ建築設計、監理を森の香設計工務が手掛け、施工を響建設が請け負った。

この森林事務所では、廊下と事務所棟の間の壁に長さ5m、高さ3mのCLTを利用している。愛媛県のメーカーで製造したCLTを利用しており、CLTとしてはそれほど大きなサイズではないが、現しで仕上げているため室内の木質感を演出するうえで重要な要素を担っている。
また、柱にはヒノキ、梁にはヒノキの積層材やスギなどの県産材を活用した。これらの材料については、多くを職人による手刻みによって加工したという。高知県内にプレカット事業者が少ないということもあり、手刻みで対応したそうだ。地域産材を木造建築に利用するうえで、こうした点も課題のひとつになりそうだ。


仕上げでも内外装に木材を使用しており、森林事務所らしい様々な木質材料を活用した建物になっている。
自社敷地内にCLTを活用した第一号物件を建築
響建設では、10年ほど前に銘建工業を介してCLTの存在を知ったそうだ。
その建築材料としての可能性に着目し、まずは自社で保有する160 坪ほどの敷地内で建築する3階建ての賃貸共同住宅にCLTを活用することにした。床と屋根は一般的な梁と合板で構成し、壁にCLTを採用した。銘建工業からの指導を受けながら、地元の職人による施工を行ったが、「それほど大きな混乱もなく、当初の想定通りの期間で施工は完了した」(丁野敏明社長)という。
「設計段階から、設計者、施工者である我々、そして銘建工業さんと連携しながら設計を決めていきました。こうした下準備さえしっかりやっておけば、CLTであっても施工自体がそれほど大きな混乱が生じることはないと思います。ただ、木造住宅とは違う構造設計が求められるので、まずはCLTのメーカーさんと協力していくことが大事ではないでしょうか」(丁野社長)。

その後、前述の森林事務所を含めて、いくつかの建物でCLTを施工しており、CLTのみで構造躯体を構成する長屋住宅なども手掛けている。コスト的には在来工法と比較すると補助金などを活用すれば同じくらいの水準になるという。
ただし、鉄骨造などと比較すると、構造躯体の部分でもコストダウンにつながるだけでなく、地盤補強や基礎の部分でもコストを圧縮できることが分かってきた。
一方で課題としては、現場への運搬の問題や施工中の雨に対する養生の問題などがある。養生の問題は、養生塗装を塗るといった対応策があるほか、時間をおけば乾燥するが、コスト増や施工時間が長くなるという課題もある。
さらに近隣にCLTを製造する工場がなく、県産材を活用しようとすると、高知県で調達した木材を、他の県のCLT工場に持ち込み、再び高知県の現場に戻すという工程が必要になる。地域産材の活用先としても注目されるCLTだけに、今後はこうした問題の解決にも取り組む必要がありそうだ。

響建設 丁野敏明 代表取締役社長
CLT については、規格化された部屋が連続するような建物には最適ではないかと思い、自社で保有する賃貸共同住宅に使ってみました。施工はそれほど苦労することなく出来たという印象です。基礎のコンクリートとCLTをアンカーボルトで固定する部分で多少の慣れは必要かもしれませんが、最近では簡単に施工できる金具なども開発されているようです。課題は、やはりコストの問題ではないでしょうか、また、敷地条件や周辺の環境によってはクレーン車を使えない場合もあるので、状況に応じた使い方が求められるのではないでしょうか。
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