2022.11.21

設計事務所との連携で実現する住宅建築の良さを活かした保育園

アフターサービスを通じたノウハウ蓄積も

物件】ちゅーりっぷ保育園 兵庫県神戸市
施工】日置建設 株式会社 兵庫県明石市

日置建設は、設計事務所とも連携しながら、木造の保育園の施工を手掛ける事例が増えている。そのひとつである「ちゅーりっぷ保育園」でも、設計事務所と一緒になり木造の良さを活かした建築を提案している。

日置建設はここ最近、1年間に1億5000万円~2億程度の非住宅の木造建築を受注するようになってきたという。以前、非住宅の公共工事などを請け負っていたこともあり、入札や現場管理のノウハウがあったが、同社の日置尚文社長は、「施主や設計事務所の方々と良い形でタイアップができるようになったことで、非住宅の木造建築を受注する機会が増えてきました」と語る。

オリジナルの壁紙を使用

埋蔵文化財の問題で木造を選択

ある保育園の施工を担当した例では、当初は鉄骨の建物を建築する予定だったが、建築予定地の土地に埋蔵文化財がある可能性があり、鉄骨造の建築が難しいということが分かった。

そこで、日置建設から木造化の提案を行った。

この工事を通して設計事務所との関係性も構築することができ、2021年7月に竣工した「ちゅーりっぷ保育園」でも施工を担当することになった。

「ちゅーりっぷ保育園」の設計に当たっては、建物設計を担当した時設計と連携しながら施工を進めた。例えば、この建物は住宅レベルの断熱性能を備えており、一般的な家庭用エアコンでも十分に快適な温熱環境を実現できる。非住宅用のエアコンを入れるとコスト負担も増えるため、家庭用エアコンを採用することにした。

また、構造計算については、日置建設と取り引きがあるプレカット事業者が経営する設計事務所を紹介し、一般流通材だけで実現できる設計を採用するなど、木造の特徴であるコストパフォーマンスの高さを最大限に発揮させることを目指した。

プレカットを行った一般流通材を利用し、コストを抑えながら木造化を実現

その一方で、「例えば指はさみ防止機能が付いたドアや、上下に2カ所にクレセントが付いたサッシを使うこと、コンセントは高い位置に配置することなど、保育園ならではの配慮も求められ、設計事務所の方々などから教えてもらうことも数多くあります」(日置社長)という。

さらには、「住宅と同じように引渡後のアフターメンテナンスによって信頼を獲得するだけでなく、今後の建築物に活かせるノウハウを蓄積していくことも大事ではないでしょうか」と日置社長は語る。

日置建設が施工を行ったある保育園では、耐候性の問題などから樹脂製デッキを設置したが、子ども達がデッキの上で遊ぶと静電気が発生するという問題が分かったという。そこで静電気防止剤を塗布することで対応を図ったが、一般の住宅ではあまり起こらない問題から学ぶことも多いようだ。

日置社長は、「設計事務所やオーナーの方々のなかには、まだまだ木造を意識していない場合も多く、我々がお手伝いをしながら、良好な関係性を築くことができれば、価格競争に巻き込まれずに非住宅を受注できるようになるのではないでしょうか」としている。

日置建設 日置 尚文 社長

大型の木造建築になると、入札で施工者を決めることが多くなりますが、場合によって価格だけの競争になることもあります。こうした状況を避けるためにも、設計者や発注者の方々との関係性を築いておくことが大事だと思います。また、設計段階で我々のような木造建築に慣れている施工者がアドバイスすることで、コストを抑制しながらより質の高い木造建築を具現化できるのではないでしょうか。