2022.10.26

【国産材活用 最前線レポートVol.4】モノ、カネ、そして情報をつなぐ

3日間のツアーを終えた率直な感想は、机上で考えている以上に、国産材の活用は難しいということであった。その難しさの根幹はどこにあるのだろうか―。

現在の林業の問題点として、公的な補助金を前提としなければ、事業が成立しないということがある。

先進的な循環林業を実践する佐伯広域森林組合でさえ、「育てる責任」を全うしようとすれば、現時点では補助金に頼らざるを得ない。

国産材を使おうという川下、つまり建築側のプレイヤーにとっては、自分が必要とする材料を、自分が好きな時に、できるだけ安く調達したい。この要望に山側が応えようとすると、勘や経験などを頼りに木材を伐採・製材し、時には大量の在庫を持ちながら、多様なサイズの製品を品揃えする必要がある。その上できるだけ安く供給しなくてはいけない。しかも工業製品ではなく、自然が生み出すものを相手にこの要求にこたえることは、容易ではない。

ある意味では、山側の人々はこの一聴すると「不可能」とも思えてしまう難題を突き付けられ、混乱しているようにも見える。この混乱はどうすれば鎮静化されるのだろうか。

ある関係者は、モノとカネ、そして情報をつなぐことではないかと指摘する。需要側の情報を山側に伝え、高い精度で売れるものだけを伐採・製造する。

さらに言えば、ITやAIなどの最新技術を活用し、山林にある木材の“在庫量”を可視化しようという取り組みも始まっている。山にどのような木材があるかをデータ化できれば、需要側との情報と紐づけながら、より効率的で無駄がないサプライチェーンがつながっていく。

今回のツアーを通して、国産材活用の最前線で難しさを痛感しながらもチャレンジを続ける方々の想いを、より具体的にイメージすることができた。

大分空港へと向かう途中、思いがけず大分県杵築市に立ち寄った。江戸時代の面影を残す城下町。帰京後に調べてみると、南北二つの高台に武家屋敷が立ち並び、その谷間に商人の町が細長く続いており、「サンドイッチの町」とも言われているそうだ。

坂を上り切った高台にある木造の武家屋敷を眺めながら、「ツアーで出会った人達のように、呆然とするような壁を前に、自分ならあきらめることなく前に進むことができるだろうか」と考えてみた。容易に「YES」とは言えそうにない。まずは、その難しさを建築側も共有し、同じ立場で構想を共有していくことからスタートするべきなのかもしれない。