(一社)板硝子協会が実証実験の成果を報告 建築用ガラスのリサイクル可能性を確認 脱炭素社会の実現へ大きな一歩
(一社)板硝子協会(会長:森重樹・日本板硝子執行役会長)は「第1回板ガラスリサイクルシンポジウム」を開催し、2024年度に発足したサステナビリティ特別委員会での取り組みを報告。実証実験を通じて、使用済みの建築用板ガラスを原料として新たな板ガラスを製造する「水平リサイクル」が可能であることを確認した。
同協会は、24年4月よりサステナビリティ特別委員会(委員長:同協会 森重樹 会長)を設置。傘下にホールライフカーボン部会(主査:芝浦工業大学 秋元孝之 教授)、板ガラスリサイクル・再資源化部会(主査:東京大学 清家剛 教授)を置き、板ガラス製品のリサイクル制度の確立と、「窓」によるホールライフカーボン削減効果の算出、普及に向けた活動を行っている。
戸建住宅やマンション、ビルの改修現場を対象に、適切な取り外し・分別・保管を行う実証実験を実施し、いずれの実証でも、回収したガラスが板ガラス原料として使用可能であることを確認した。一方で、実用へ向けてはそれぞれ課題も見つかった。
最も大きな課題は、コストだ。神奈川県横浜市の大規模マンション「市ヶ尾プラーザビル」の窓改修工事に伴い、56戸分、4320㎏の窓ガラス回収を試みた実証では、現場工事の遅れ等により合意形成に時間を要し、遠方の倉庫を利用せざるを得ないなど制約が生じた。そのためカレット単価で418円/㎏(合計約180万円)の費用がかかった。倉庫などの制約を除いた試算でも100円/㎏前後かかると想定され、回収や物流の効率化によるコスト低減が足元の課題となっている。
また、北海道にある戸建住宅からのガラス回収実証では、複層ガラスの回収・処理において、単板ガラスに比べてサッシの解体に約1.5倍、破砕作業に約2倍の時間を要した。加えて、足場のない高所窓やFIX窓(固定窓)への安全な対応、破砕作業スペースの確保が課題として浮かび上がった。
ビルからの回収では、東京建設会館(東京都中央区)の建て替えに併せて、8階北側窓の飛散防止フィルム付きグレー色フロート板ガラス56枚(回収量:1040㎏)を対象に実施。現地でフィルムにカッターを入れて剥離し、粘着剤を除去した上でガラスを取り外した。回収したガラスはカレット化・選別を経て、型板ガラスの原料に使用し、生産された製品に異常がないことが確認された。
作業にあたっては、気温が低い午前中や影になる部屋では粘着剤が固くなってフィルムが途中でちぎれやすく、作業時間が大幅に延びる要因となることが分かった。
地域循環スキームの構築とガイドライン策定に注力
実証実験で得られた知見を踏まえ、26年度は、「地域循環スキームの構築」と「回収促進ガイドラインの作成」に力を注ぐ。
地域循環スキームの構築へ向けては、26年5月25日に、「ガラスカレットリユニオン協議会」を発足した。全国各地のガラス特約店(卸業者)を集積拠点(キーステーション)とし、地域のガラス販売店や施工業者から廃棄ガラスを回収してカレット業者へ渡す、地域循環システムの構築を目指す。
また、ガラス専門事業者以外によるリサイクルも促進するため、26年4月から「解体現場等から排出される板ガラス製品のリサイクルを促進するための回収ガイドライン」の作成を進めている。北海道の実験では、普段自動車の解体を行っている作業員が専用装置を用いてスムーズにガラス回収を行えたことから、ガラス専門事業者以外の解体事業者であっても適切なガイドラインと指導があれば板ガラスリサイクルを行える可能性が高い。
脱炭素実現へ
板ガラスにもリサイクルが不可欠に
板ガラスの水平リサイクルが求められる背景には、建築分野における脱炭素化や資源循環への社会的な要請の高まりがある。2028年からは5000㎡以上の大型オフィスビル等を対象に、建物のライフサイクル全体にわたるCO2排出量(ホールライフカーボン)の計算・評価義務化が予定されており、資材調達や製造段階における環境負荷の低減要求が強まっている。
建築物に多く使用される建材において、鉄は有価物として回収され、コンクリートや木材も建設リサイクル法に基づき再資源化が進められている。こうしたなか、未だ大量に埋め立て処分されているガラスは、サーキュラーエコノミーの文脈で「次にリサイクルを求められる建材」(清家教授)とされる。
また、ガラス製造において、使用済みのガラスを破砕した「カレット(再生原料)」の利用率を高めることは、珪砂やソーダ灰などの天然資源の採掘・輸送負荷を減らすだけでなく、溶解窯のエネルギー効率を向上させ、炭酸塩原料からのCO2発生を直接的に抑制できる。「リサイクルが直接的にCO2排出量削減に繋がらない建材も多いなか、ガラスはリサイクルによってCO2を直接削減できる極めて恵まれた建材」(清家教授)だ。
これまで板ガラス業界では、自社工場内の製造・加工工程から発生する「プレカレット」については、ほぼ100%が製造原料として再利用されてきた。しかし、製品使用後の「ポストカレット」については、かつて単板ガラス主流の時代には回収・再利用のルートが存在していたものの、複層ガラスや合わせガラス、フィルム付きガラスなどの多機能・複雑化が進んだことで、ポストカレットの受け入れは途絶え、産業廃棄物として処分される状態が続いていた。
同協会は、25年12月に、「板ガラスリサイクルビジョン ~ファーストビジョン2025~」を発表。①「2030年度のCO2排出量を2013年度比で38%削減(目標排出量:72.6万t-CO2)」、②「2030年度までに年間11万t、2050年度までに年間30万tのポストカレットリサイクル実現」という目標を掲げ、特に国内で年間推定約70万~80万tが発生している建築分野の廃ガラスを主要な回収ターゲットに位置付けている。
資源の質を落とさず循環させ続ける水平リサイクルは、CO2削減だけでなく、近年の資材高騰や地政学的リスクを背景に、「国内で発生した建材を国内で再び使う」というサプライチェーンの構築という面でも注目されている。解体現場から発生する建材を「資源」と捉え、多様なプレーヤーが連携して回収・分別・物流などの仕組みを整備する取り組みが、板ガラスに限らず建築業界全体に広がっていくことが期待されている。
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