高性能化・温暖化で変わる「防蟻」の新基準 多層防蟻と保証の最前線

 

温暖化の進行と高断熱住宅の普及──。
住宅性能が向上する一方で、シロアリを取り巻く環境も確実に変化している。
建築基準法では地面から1m以内の防腐・防蟻処理が求められているが、その基準の妥当性を疑問視する声もある。
さらに、海外ではより強い繁殖力を持つハイブリッド種の存在も報告された。
いま、防蟻対策は“従来通り”でよいのか。
各社のエビデンスと保証制度から、長寿命住宅時代の最適解を探る。

温暖化と高断熱化が招く「通年食害」のリスク

温暖化の進行や高断熱住宅の普及により、住宅を取り巻く環境は大きく変化している。断熱等級6、7といった高性能住宅が増加し、基礎断熱工法の採用も拡大するなかで、こうした建物の変化が温かい環境を好むシロアリにとって快適な住まいへとつながっている可能性もあり、これまで以上にシロアリ対策が重要視されてきている。こうした状況下で、シロアリ対策の前提条件も見直しを迫られている。

建築基準法では、防蟻に関して「構造耐力上主要な部分である柱、筋かい及び土台のうち、地面から1m以内の部分に防腐処理と必要に応じて防蟻その他の虫による害を防ぐ処置を講ずる」処置を求めている。しかし、防蟻の最前線に立つ企業からは、「地面から1mという基準には科学的な根拠が乏しく、現代の住宅においては不十分」との見方もあり、実際には(公社)日本しろあり対策協会の「基礎天端から1m以内」への散布が業界的なスタンダードとなっている。

また、近年の猛暑や暖冬といった気候変動は、シロアリの活動域を北上させ、冬場の休眠を奪い、通年での食害リスクも高まっている。例えば、これまでシロアリ被害のリスクが低かった北海道から各社への防蟻製品への問い合わせが急増しているという。

さらに、昨年、フロリダ大学の研究チームがイエシロアリとアジアの地下シロアリのハイブリッド種を発見したという報告もある。従来のイエシロアリ、アジアの地下シロアリの特性が強化され、巣をつくるスピードが速くなり、女王アリの寿命が延びるなど、新たな脅威となっている。

温暖化が進み、住宅の置かれる環境が刻々と変わりゆく中で、今はシロアリの脅威が低い地域であっても、30年後、50年後にはどうなっているか分からないのが現状だ。長寿命住宅にはシロアリ対策が欠かせないものとなっている。

工法別・部位別に見る防蟻処理の最前線

基礎断熱・打ち継ぎ部の隙間を埋める「物理的・化学的バリア」

建物の寿命を延ばすためには、シロアリの侵入経路、住宅の弱点に合わせた製品選択が一層重要になってきている。特に基礎断熱工法は、断熱材内部がシロアリの「安全な通路」になりやすいデメリットがある。そこで有効なのが基礎断熱・打ち継ぎ部の隙間を埋める「物理的・化学的バリア」だ。

基礎断熱工法は床断熱工法に比べ、床下空間を室内と同じ温度・湿度環境に保てるため、冬場の足元の冷え込みを解消し、全館空調の効率を最大化できるメリットがある。コンクリートが外気に触れないため断熱欠損が生じにくく、断熱性能を効率的に高められる。一方で、基礎外断熱は地面から立ち上がる断熱材が直接土に触れるため、シロアリが断熱材の内部を「外敵から守られた安全な通路」として利用し、建物本体へと侵入するリスクが高い点がデメリットとなっている。

こうしたリスクを回避し、シロアリの心配をせずに住宅の断熱性能を向上することができるのが、デュポン・スタイロが2005年に発売した防蟻成分入りの断熱材「スタイロフォームAT」だ。押出法ポリスチレンフォーム断熱材のスタイロフォームに防蟻薬剤を混入し、断熱材自体がシロアリの食害を防ぐ性能を持つ。断熱性能は熱伝導率0・028W/(m・K)以下で、高断熱住宅の実現に十分な性能がある。「北海道を中心に基礎断熱工法の採用が伸びており、温暖地でも断熱等級6以上の住宅には基礎断熱工法が採用されることが増えている」(技術・開発本部 製品技術部 松本崇 主任技術員)という。

デュポン・スタイロの「スタイロフォームAT」は、高い断熱性能と防蟻性能を有していることから、基礎外断熱工法での採用が増加

エービーシー商会は、基礎の打ち継ぎ部に使用する防蟻成分入りの止水材「インサル基礎防蟻ジョイントハード」と、木造住宅の断熱・気密性能を高める1液タイプの発泡ウレタンフォーム「インサルパック」に防蟻性能を付与した「防蟻フォーム」を展開している。高断熱住宅への移行やそれに伴う、基礎断熱工法の増加などで売れ行きは伸びている。同社の製品を使用することで、断熱・気密性能の向上に加えてシロアリ対策もできるため、高性能ゆえにシロアリ被害のリスクが高まるという矛盾を解消できる。そのため、意識の高い事業者ほど、気密施工の延長線上で防蟻処理まで行えるメリットが響きやすいという。さらに、「インサル基礎防蟻ジョイントハード」は、防蟻成分入りのブチルゴムが生コンクリートの水和反応の進行とともに結合し、打ち継ぎ部の隙間を埋めるため、施工者による品質の差が生まれにくく、水害対策にもなる。防蟻対策を、住宅性能を向上するプロセスに組み込める点が同社製品の特徴と言える。

インサル事業部 セールス・テクニカルマネジメントチーム 田中大輝 主任は「北海道の住宅事業者の防蟻に対する注目度は高く、提案を強化している」という。一般的には南部の函館エリアまで北上しているとされているが、実際には函館エリア以外の住宅事業者からも注目度が高いようだ。

エービーシー商会の発泡ウレタンフォーム「防蟻フォーム」は、防蟻・断熱・気密効果を発揮。基礎断熱工法の増加などで売れ行きが伸びている

日東エルマテリアルは、「一度断熱材に侵入してしまうと、断熱材を食べ進めて住宅全体にシロアリ被害が及ぶ危険性もある」と防蟻防湿シート「ターミダンシート」の販売を強化する。九州テクノ工販が製造する防蟻防湿シートで、忌避剤を練りこんでいるため、シートに触れるとシロアリの体がしびれ活動できなくなる。こうした情報をシロアリの伝達能力で仲間と共有し、シロアリがシートに近づかなくなるという。通常の防湿シートの代わりに基礎下に敷きこむだけのため、施工性が高い。

近年は北海道の住宅事業者からの問い合わせが増えている。「以前はシロアリの活動地域から外れていたため、防蟻をしてこなかった住宅事業者が多い。また、基礎外断熱工法を採用している事業者も多く、土壌から断熱材への侵入を防ぐことが重要になっている」という。

構造材を守る「ホウ酸処理」と
「保存処理木材」

構造材を守る「ホウ酸処理」と「保存処理木材」への注目度も高まっている。

日本ボレイトは、25年1月に発売した「ボレイト防蟻コーク」や「シロアリエンキリテープ」による「一次防蟻」と「ボロンdeガード」による責任施工の構造材処理である「二次防蟻」を組み合わせる重要性を指摘する。「基礎断熱を取る場合に主流なベタ基礎構造は、シロアリ対策として非常に優れた構造だが、それでも基礎の1㎜の隙間からシロアリが侵入するリスクがある。一次防蟻でこうした隙間を埋め、二次防蟻として構造躯体にホウ酸を処理することで、万が一シロアリの侵入があった場合にも被害を防ぐことができる」(浅葉健介 代表取締役社長)。

日本ボレイトの「シロアリエンキリテープ」は、土台と木部の縁を切り、シロアリの侵入を防ぐ

エコパウダーは、基礎断熱工法を採用している住宅事業者が「エコボロン PRO」を標準採用し、断熱施工の方法と合わせて防蟻対策についても施主に説明することが増えているといい、そうした事業者からの採用が伸びているとする。

「エコボロン PRO」は、同社が20年以上研究開発を続け、水やホウ酸にこだわることでホウ素系薬剤の中でも高い浸透率で木材に浸透する特徴がある。「2002年からホウ酸系の防腐防蟻材を取り扱ってきているが、防蟻施工をした住宅がシロアリ被害にあったのは数えるほどで、原因も雨漏りなどによってホウ素系薬剤の効果が薄れていた箇所がほとんどであった」(齋藤武史 代表取締役社長)と、実績の高さがうかがえる。また、鹿児島県の厳しい環境下での野外試験も行っており、防蟻効果の確認とより効果の高い薬剤の開発に努める。

同社は、基礎天端から1mまでの構造材へのホウ酸処理に加え、シロアリが侵入しやすい基礎立ち上がり部、配管回りへも防蟻処理を行うよう指導を行っている。さらに、よりリスクを低減するために全構造材処理の提案も行っており、採用件数が増えてきている。特に、外来種のアメリカカンザイシロアリは蟻道をつくらずに屋根裏やベランダなどいたるところから侵入するため、全構造材処理での対策が必要となる。そのため、「アメリカカンザイシロアリの被害が多発している地域では、工務店から積極的に全構造材処理の依頼が来ることも増えてきた」(齋藤社長)という。非住宅案件などを中心に大手ハウスメーカーからの採用も出始めている。また、入居者がいる環境下でも使用しやすいため、防蟻業者が駆除剤として「エコボロン PRO」を採用していたこともあったという。

エコパウダーは「エコボロン PRO」の全構造材処理の提案を進めており、採用が増えてきた。外来種のアメリカカンザイシロアリ対策にも有効だ

兼松サステックの「ニッサンクリーンAZN処理木材」は業界唯一の乾式保存処理木材で、住宅、非住宅問わず様々な場面で使用されている。最大の特徴は、水を使わない乾式加圧注入処理により寸法変化が少ない点で、水が抜ける際の反りや曲がりも発生しないため、プレカット材にも使うことができる。外来種のアメリカカンザイシロアリ対策にも有効だ。

同社は、シロアリ被害が見つかった場合、防蟻処理の2倍~3倍のコストがかかるとして住宅事業者への防蟻の必要性の周知を継続している。こうした周知活動により、住宅事業者にも少しずつ意識の変化が生まれている。ヒノキ材を使用する住宅事業者が増えたことで、差別化として、防蟻処理を検討する流れもある。また、非住宅での採用も伸びている。木材を現しで採用するケースも多く、防腐防蟻処理をしても木材の色が変わらない点が高い評価を受けている。

木材・住建事業部 開発部 品質管理課 小林亮介 課長は、「住宅が高断熱化する一方で、資材価格の高騰などを受け、少しでもコストを抑えたいという背景から、無処理のヒノキ材を使用する住宅事業者も増えている」と指摘する。ヒバ材やヒノキ材は、一般的にシロアリ被害に対する安全性が高いとされており、建築基準法でもヒバ材やヒノキ材を使用していれば防蟻処理を行う必要はないとされているが、シロアリが嫌う成分は心材に多く含まれており、柔らかく忌避成分も少ない辺材は被害に遭いやすい。「建築物を長く持たせるためには、土台や構造材への防腐処理は必須」だとする。

外周部からの侵入を阻む
「土壌バリア」

外周部からの侵入を阻む「土壌バリア」も防蟻対策の王道の一つだ。

日本長期住宅メンテナンス有限責任事業組合の行っている土壌処理「タームガードシステム」は、シロアリの多いオーストラリアで開発された防蟻方法で、基礎型枠を外す時に基礎外周にパイプを埋設し、土壌を埋め戻した後に薬剤をポンプで注入する方法。パイプの20㎝間隔で開いた穴から薬剤が噴出し、建物外周全体の土中に染みわたり、薬剤のバリア層が形成される。

「タームガードシステム」は、新築時に一度パイプを埋めてしまえば、定期的に注入口からの薬剤を注入するだけで簡単に再施工を行うことができるため、注目度が高まっているという。薬剤は建物外周のパイプから地中に直接注入されるため、室内へ成分が漂う心配がなく、施工にあたって作業員が室内に入ることもないため、施主への負担が小さいことも魅力だ。

日本長期住宅メンテナンス有限責任事業組合の「タームガードシステム」は、薬剤が建物外周全体の土中に染みわたりバリア層を形成

使用薬剤のひとつ、大阪ガスケミカルの「タケロック SC400」は高い安全性と土壌吸着性を持ち、環境への影響を抑えつつ、しっかりとした防蟻性能を発揮できる。安全性では、ラットの経口試験で食塩よりも毒性が低いと判断されている。また、筒の中に3種類の土を入れ、防蟻処理を行った上に降雨を想定した水を流すことで土壌吸着性を確かめる試験では、いずれの種類の土も土壌表面から5㎝の範囲において回収率99%以上で、水で成分が流出していないことが分かった。

「非忌避性」薬剤のため、シロアリが薬剤を避けることなく移動、体表に付着した薬剤が、仲間とのグルーミング行動で伝播する。薬剤の効果が出るまでには数時間かかるため、巣の中のシロアリまで薬剤が伝播し高い防蟻効果を発揮する。

近年は、構造材への処理に加えて、シロアリを構造材へ到達させないために「タームガードシステム」を併用するなど、二重の防蟻対策を講じる事業者も増えているという。

実績の蓄積やニーズの高まりで長期保証の提案が相次ぐ

住宅の瑕疵保険が長期化するなかで、免責事項になりやすいシロアリ被害についても安心した保証がほしいという住宅事業者のニーズが顕在化している。独自の長期保証の仕組みを整え、こうしたニーズに応えようとする動きが活発化している。

日本ボレイトは、25年8月より「ボロン de ガード工法」について、再施工無しで最長35年の防蟻保証を付与する「新築35年保証」を開始しているが、この超長期保証は「一次防蟻+二次防蟻」でシロアリの侵入対策をしっかり行うからこそ実現可能だとする。また、責任施工体制でホウ酸の弱点である雨の対策を万全に行っていることも保証の実現に寄与した。責任施工体制を取り研修事例の共有や現場の状況確認を徹底することで、施工精度を確保する。例えば、保証書の発行には施工現場の画像添付が条件となっているが、画像を同社がすべて目視で確認し、施工に不可解な部分があれば連絡を取っているという。「これまでにも新築15年、既築10年の保証を取り扱ってきたが、2011年~現在までの14年間で5万棟以上施工したうち、軽度な保証事故が3件しか発生しておらず実績は高い」(浅葉社長)。さらに、発生した保証事故については事例を踏まえ、施工方法やマニュアルの継続的な見直しも行っている。

例えば、最初の保証事故では構造躯体処理の範囲外としていた浴室の桁部分で蟻害が確認された。構造躯体処理を実施していない部位のため、本来は保証の対象外だが、制度運用の初期段階における判断の行き違いがあり、結果として保証による対応を行った。この事例をもとに、施工範囲の再検討を実施。蟻害リスクが高い水回りと玄関については、従来の「基礎天端から1mまで」の処理範囲を見直し、梁下まで施工範囲を拡大するよう施工マニュアルを改訂した。また、別の保証事故では、スリーブ管の隙間からシロアリの侵入が確認されたため、隙間を埋める一次防蟻処理剤の開発を行うなど事故を減らすためのアップデートを重ねている。

保証期間は、施工完了日から20年、25年、30年、35年のいずれかを選ぶことができ、施工後、5年ごとに有償の定期検査を行うことを条件に再施工なしで保証する。保証期間中、予防処理を行った木部にシロアリ被害が発生した場合に、無償で再施工し、合計300万円までの修復費用を補償する。

浅葉社長は「シロアリ対策の本質は、シロアリのリスクをどれだけ低くして、長期的に保つことができるか。効果の持続性が高いホウ酸による処理と、5年ごとの定期点検で確実にリスクが低い状態を保ちたい」と話す。

エコパウダーは、「エコボロン PRO」による構造躯体処理に、シンジェンタジャパンの「アルトリセット 200S」による土壌処理を組み合わせた「eことアル工法」での施工を推奨する。「シロアリの侵入経路となりやすいのが基礎コンクリートの外側や、玄関ポーチ。土壌処理を行い、基礎にたどり着かせないことが大事だと考えている」(齋藤社長)。実際に、防蟻施工を行わなかった住宅で、基礎コンクリートの外側からイエシロアリが侵入し、築3年にもかかわらず一階の梁部分まで躯体が損傷していた事例もあった。

同社は「eことアル工法」を採用した場合、10年ごとに土壌の再施工を行うことで、新築住宅に30年までの保証を設定している。同社は、保証があることで安心感をもつ住宅事業者は一定の割合いるとしたうえで、「あくまで製品性能の保証のため、基本的にその製品を使用していない部分からシロアリが侵入した場合は保証が適用されない。住宅全体を守るために十分な防蟻の効果はあるのかなど、製品性能を確認する必要性は声掛けをしている」(齋藤社長)と、保証の有無だけに注目するのではなく、製品性能や保証内容を確認することも重要であると述べた。

日本長期住宅メンテナンス有限責任事業組合の「タームガードシステム」は5年ごとの再施工で保証が更新できる仕組みになっており、「再施工さえすれば保証は永続的に続く」(事務局 川端健人 技術コンサルタント)ことがポイントだ。大手メーカーである大阪ガスケミカルのバックアップ体制で信頼性が高く、万一シロアリによる食害が発生した場合には、被害箇所の修繕費用および無料の駆除工事が保証される。特筆すべきはその範囲で、防蟻処理を施した部分からシロアリに侵入された場合であれば、未処理部分でも保証対象となる。

また、「タームガードシステム」は日常的に注入口が目に入るため施主に防蟻の意識がつきやすく、再施工費用が安いため継続率は約8割に及ぶ。そのため住宅事業者は施主と長期的な関係を築くことができ、リフォーム相談など施主の悩みに継続的に対応することができる。「『タームガードシステム』の保証は非常にシンプルで明瞭。分かりやすい保証で数10年後も安心を継続することができる」(川端氏)。

一方で、九州テクノ工販は、「ターミダンシート」について、24年から従来の10年保証を見直し、20年保証を開始した。「ターミダンシート」に加えて、シートを留めるテープに防蟻テープ「ターミダンテープ」を使用すること、隙間を埋める防蟻ウレタンフォーム「テクノ防蟻フォーム」やシロアリの侵入経路になりやすい土台と基礎の間に「ターミダンシート虫返し」を施工すること、シロアリ被害が起きやすい玄関土間にはシートを2重で施工すること、10年経過時点での点検と保証更新を行うことが条件だ。

住宅の品質保証を手掛けるジャパンホームシールドは、24年から「地盤」、「構造躯体」、「防水」に「防蟻」を加えた「オール20年品質保証」の提案を開始しているが、防蟻の指定材料に「ターミダンシート」が設定されている。同社は「防蟻防湿シートはシロアリを侵入させない対策であり、薬剤による木部処理は侵入したときの対策。目的が異なるので併用することでより価値が高まる。新築時にこうした対策をするかしないかで被害リスクは大きく変わる。住宅を長く大切に使い続けていくために新築時に対応すべきことをパッケージ化した」とする。住宅事業者は、「地盤」や「防水」などの保証とワンストップでの保証申請ができ、ターミダンシートの10年点検はジャパンホームシールドが請け負うため、業務負担を軽減できるメリットがある。「ターミダンシート」を販売する日東エルマテリアルは「中小工務店にとって、独自の長期保証を維持することは、容易ではない。これまで資本力のある大手住宅会社しか掲げられなかった住宅の長期保証を、ジャパンホームシールドの仕組みにより、地方の工務店でも掲げられるようになった。この反響は大きい」と話す。

耐久性試験を重ね信頼性を向上

耐久試験や施工実績、保証事故の分析などなどを重ね、信頼性を高めようとする動きも顕著だ。

デュポン・スタイロは、「スタイロフォームAT」の販売を開始した05年から沖縄で耐久性の試験を実施。住宅基礎を模したコンクリート升の外周部に「スタイロフォームAT」を施工し、定期観察と薬剤濃度の測定を継続しているが、20年経過時点でも薬剤濃度にほとんど変化が見られなかった。今後も調査を継続し、30年、40年後の耐久性についても測定したい考えだ。

同社は26年2月、「スタイロフォームAT」と「防蟻防湿シート」を組み合わせて採用することで、20年保証を提供する体制を整えた。これまでも10年保証を扱っていたが、長期保証へのニーズが高く、寒冷地で組み合わせて使用されることが多い防蟻防湿シートとの併用で20年保証を提供することとした。基礎断熱工法だけでなく床断熱工法でも採用することができる。また、集合住宅や非住宅建築物にも対応しており、宿舎などで採用されたケースもある。

兼松サステックは、屋外でブロック塀の上に「ニッサンクリーンAZN処理木材」と未処理の木材を置き、土台環境を再現した耐久性試験を行い、木材の状態を被害の小さいほうから0~5で評価した。その結果、20年経過後の状態評価では、アカマツで処理材の平均評価値が0.33なのに対して未処理材は4.67、ヒノキでは処理材の0.33に対して未処理材は4.33となり、「ニッサンクリーンAZN」の処理に大きな効果があることが分かった。

同社は、保証のパッケージは用意しておらず、各社と個別に別途契約をするなど対応している。一方で、「住宅の多くの部材には保証があり、ほとんどの住宅事業者が、自社の住宅の品質を担保するために採用している」(小林課長)と、保証に対してのニーズの高さは感じているという。今後は、「保存処理に使っている薬剤は限りなく人体に影響のないものだが、イメージ的に不安に思われる方もいる」として、住宅に住んでいる人やペット、こどもなどにとって安全と言えるような、より安全性の高い薬剤の研究を行っていきたい考えだ。

兼松サステックは、「ニッサンクリーンAZN処理木材」で20年間の耐久性試験を実施し、処理材の優位性が実証された。左が処理材、右が未処理材

日東エルマテリアルが販売する「ターミダンシート」は、水に溶けにくい薬剤を使用しているため、防湿シートからの薬剤の流出や揮発が少なく、長期にわたって効果を発揮することも特徴のひとつだ。耐久試験では、10年の耐久性試験データは存在しているものの、それ以上の長期耐久性のデータは存在しなかった。

それらを踏まえ、日東エルマテリアル独自で20年以上の耐久性に関する試験を実施しており、近々結果が出る見込みだ。長期の耐久性・防蟻性能の検証を進めて製品の信頼性を高めていく。

エービーシー商会は、JIS及び(公社)日本木材保存協会の規格に準じた試験を行い、製品の防蟻性能を確認している。

同社の製品単体での保証は行っていないが、防蟻製品を扱う他メーカーと連携して、保証の条件として同社の商品を組み込んでもらっているケースはあるという。「販売実績も多く、信頼できる商品として認識してもらっている。『防蟻フォーム』であれば2階以上の部位にも使用しやすいため、アメリカカンザイシロアリ対策などでの活用も期待できるのではないか」(田中氏)とし、今後も他メーカーとの連携による保証には前向きな姿勢だ。

住宅を取り巻く環境が変わるなかで、「これまでの付加価値製品にさらに防蟻性能を追加するなどの工夫でより広い範囲で防蟻対策を行えるような商品も検討したい」とする。


日東エルマテリアルが販売する「ターミダンシート」は、防湿シートからの薬剤の流出や揮発が少なく、長期にわたって効果を発揮することも特徴のひとつ

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住宅を取り巻く環境が変化するなか、シロアリ被害へのリスクは確実に高まっている。こうした状況を背景に、複数の製品を組み合わせるなど、より強固な対策を講じる動きが広がりつつある。同時に、保証への関心も高まり、シロアリ被害へ万全の対策をしておきたいという住宅事業者の姿勢が鮮明になってきた。一方、防蟻市場では、住まい手が安心して暮らせる住宅を実現するため、多様な技術や提案が競い合っている。製品ごとの特性や性能データを見極め、自社の思想や住宅仕様に適した対策を選択することが求められる。