ストック時代の窓戦略 改装・物流改革・ヘルスケアへ広がる成長領域
YKK AP 魚津彰 代表取締役社長
新築縮小時代に入り、窓メーカー、YKK APにとっても事業方針の転換が迫られている。
どこに持続的成長の活路を見出そうとしているのか。
また、新規事業の道筋は見えてきているのか。魚津彰社長に聞いた。
── まず、現在の住宅市場の現状をどのように捉えていますか。

正直に申し上げて、非常に厳しい局面にあると認識しています。2025年の住宅着工戸数は、74万667戸と、約62年ぶりの低水準となりました。資材価格の高騰、人件費の上昇、そして「2024年問題」に伴う職人の残業規制など、現場を縛る要因が重なっています。
住宅市場では、物価高や金利動向を見据えた「様子見」のお客様が増えており、戸建てよりも集合住宅の着工が目立つ状況です。さらに、省エネ基準の適合義務化が始まり、高性能化が進む中で、窓の面積が小さくなったり、窓の数自体が減ったりする傾向にあります。加えて、少子高齢化や地震への意識の高まりから、2階建てではなく平屋を選ぶ方が増えており、新築木造戸建ての約2割が平屋という状況です。2階がない分、窓の総数はさらに減ります。
こうした背景から、私たちは新築依存の体質から脱却し、「リフォーム(住宅)」および「改装(ビル)」という、ストック市場の開拓に大きく舵を切っています。
改装・リフォーム比率を引き上げる全国体制
25年度4支社・13支店体制に
── ストック市場を掘り起こすために、どのような体制を整えているのでしょうか。
特にビル事業においては、築35年以上の「改修適齢期」を迎える物件が今後急増します。2035年から2040年にかけてピークを迎えるでしょう。我々はこの市場を確実に取り込むため、体制を大幅に強化しています。
人口の多い首都圏や関西、中部、九州といった主要エリアに「改装支社」および「改装支店」を戦略的に配置しています。2025年度には4支社・13支店体制としました。これまでのビル営業はゼネコンや設計事務所が中心でしたが、現在は管理組合や管理会社への直接的なアプローチを強化しています。
また、住宅リフォームに関しても、全国のホームセンターや家電量販店、ハウスメーカーのリフォーム部門との連携を強化するため、本社直轄の「全国リノベ営業統括部」を新設し、よりエンドユーザーに近い「BtoBtoC」のチャネルを強化しています。
補助金をきっかけとした内窓設置だけでなく、将来的にはビル商品やエクステリアまで提案できる「チャネルのカバー率」と「顧客内シェア」を高めていくのが狙いです。
2024年度実績でビル事業における改装比率32%、住宅事業におけるリフォーム比率38%を、それぞれ2028年度までに37%、50%まで引き上げる計画です。利益率で見ても、競争の激しい新築に比べてリフォーム・改装分野は比較的高く、バランスの良い経営には不可欠な領域です。
アルミ高騰の影響と「樹脂窓」への注力
── コスト面では、特にアルミ価格の高騰が話題になっています。
円安の影響が直撃しています。アルミ地金の価格は10〜15年前の約2倍に高騰しており、収益を圧迫しています。
この状況下で私たちが注力しているのが、「樹脂窓」です。樹脂もナフサ価格の影響を受けますが、アルミほどの劇的な変動はなく、インフラとしての安定感があります。何より、日本の断熱性能の基準が強化される中で、欧米並みの断熱性能を実現するには樹脂窓が最適解です。現在、出荷構成比で樹脂窓は約41%ですが、これを2028年度、あるいはそれ以前に50%まで引き上げたいと考えています。
── 「木製窓」にも挑戦しています。
オール木製だとメンテナンスが大変なため、外側はアルミでメンテナンスフリー、内側は木という「アルミクラッド構造」の商品を展開し、ビルやマンションの専有部などへも広げていきたいと考えています。
これまでの木製窓は「作品」のような高額なものでしたが、我々は工業製品としてコストを抑え、普及モデルを目指し、トリプルガラス樹脂窓に比べて約2倍の価格に抑えて発売しました。しかし、性能と意匠の両立を求める層には響くと確信していますが、建築コストが上がる中で、想定通りに販売が伸びていないことは事実です。そこで、様々なコスト削減を図り、2026年度に、樹脂窓の2倍以下に抑えた中価格帯のラインアップを投入する検討をしています。
2024年問題と物流構造改革
── 物流の「2024年問題」については、どのような対策を講じていますか。
非常に泥臭い努力を積み重ねています。まず、トラックの荷待ち・荷役時間を削減するため、トラック予約受付サービス「MOVO Berth(ムーボ・バース)」を全国製造・物流30拠点に導入しました。以前は手作業で時間管理を行っていましたが、システム化によって「何時にどのトラックが入り、2時間以内に積み込んで出す」という流れを厳格化しています。
また、積載効率を上げるために「手積み」から「パレット輸送」への転換を進めていますが、パレット化するとデッドスペースが生まれるため、積載率は従来の約7割から、空車も考慮すると半減してしまいます。これを補うために、同業者や異業種との「共同配送」の拡大、鉄道や船を利用した「モーダルシフト」への切り替えを加速させています。
改正物流効率化法により、2026年度から一定規模以上の荷主・物流事業者等は「特定事業者」として指定され、中長期的な計画の作成、物流統括管理者の選任、定期の報告などが義務付けられます。今後は、流通店やサッシ店などの取引先とも役割分担を明確にして一層の物流効率化に取り組んでいかなければいけません。そうした踊り場に来ていると思います。
ベトナム拠点で進める施工人材育成
── 施工現場の人手不足も深刻です。
昨年、職人不足を補うため、ベトナムのハノイにエクステリアの研修所を設立しました。半年間の研修期間で、8割を日本語、2割を施工技術の習得に充てています。現地で研修を受けた若者たちが、すでに日本の施工店で活躍し始めています。
当初はエクステリアの職人育成からスタートしましたが、今後はビルサッシの組み立てや窓の取り付けなど、ニーズに合わせて多能工化を進めるヒアリングを行っています。日本の現場で「YKK APにお願いしたいが、施工の手が足りないから他社にする」という機会損失を防ぐためにも、施工管理・施工ができる人材を安定的に確保することは最優先事項です。
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