土佐組子 東京都内で組子耐力壁を採用した共同住宅完成
高知県産材とセットで採用を訴求
組子耐力壁を採用した初の共同住宅が、12月に東京都内で完成する。製造する土佐組子(高知県高知市、岩本大輔代表取締役)は高知県産材と合わせ、共同住宅を含めた非住宅への採用をさらに訴求していく方針だ。
組子耐力壁は、組子技法を使った商品の開発・製造・販売を行う土佐組子が開発した、伝統的な文様と組子の技法が特徴の耐力壁である。高知県の伝統木造建造物の改修を機に、2017年に木質構造家の稲山正弘氏と共同開発。21年12月から製品の販売を開始した。木の特性を生かした日本古来の構造原理を現代建築に応用した耐力壁は、高耐力はもちろん通風や採光にも優れ、和の意匠性も併せ持つ。グッドデザイン賞や国際的なデザイン賞iF DESIGN AWARDを受賞するなど、国内外の評価も高まっている。
これまで個人住宅や公共施設などで採用されてきたが、今回初めて共同住宅に組子耐力壁が採用され、12月に完成する。土佐組子の上田道秋営業部長は「共同住宅での採用、東京都内の案件、耐火建築への導入、木造3階建て、いずれでも初めて」と説明する。
物件は小田急小田原線経堂駅から徒歩9分に位置する木造3階建て。施主の自宅、賃貸住宅5戸の計6戸。組子耐力壁を7枚使い、構造材はすべて協同組合高幡木材センター供給による高知県の「しまんと製材」を使用している。一級建築士事務所秋山立花の秋山怜史氏が設計し、組子耐力壁の共同開発者である稲山氏が構造設計を担った。施工は中鉢建設。完成後の12月中旬から貸し出す予定で、賃料は約22㎡の1Kが約10万円、約40㎡の1LDKが約17万円(いずれも管理費込)となっている。
国産材の家に住みたいという施主の希望に合わせ、設計者の秋山氏が施主に組子耐力壁としまんと製材を紹介。実際に施主が高知に赴き、それぞれの製造現場を見学したことで採用が決まった。秋山氏は、組子耐力壁の魅力に加え、「スムーズな流通システムが決め手になった」と説明する。高知県では、県を挙げて土佐材の都市圏への販売に力を入れており、高知県から都市圏流通拠点に一度運び、そこから建築現場へ小口配送できるシステムを構築している。この案件も、1棟分の耐力壁と構造材を合わせて高知県から注文したことでコストダウンにつながった。秋山氏は「RCで集合住宅をつくるとなると今は坪単価200万円以上かかるが、今回は坪単価150万円をきることができた」と明かした。
建物は内装、外装ともに組子耐力壁の美しさを生かしたデザインとなっている。組子耐力壁は、各戸と共用部に使われており、いずれも道路に面する窓側に設置した。秋山氏は「組子耐力壁を出来るだけきれいに見せられるよう、さらに外から見てわかるように工夫して設計した。住人のみならず、地域の人にとっても魅力的な建物になってほしい」。各戸の玄関の間にある共用部分は、「組子からの光が差す空間とし、ここに帰ってきたという高揚感を出したいと思った」と、あえて暗い色の壁にした。
組子耐力壁の非住宅物件での採用問い合わせは増えているという。土佐組子の上田営業部長は「今回のように、高知県の製材とセットにできるメリットを生かし、共同住宅での採用も訴求していきたい」と話す。
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