New   2025.12.9

(一社)高齢者住宅協会が研究発表 自立中心型のサ高住宅がQOLを高める

身体機能低下を抑制し、幸福度を高める住まいづくりを

 

自立中心型のサ高住宅の入居者は人生満足度が高い――
(一社)高齢者住宅協会の調査により、サ高住のハード面が健康・ウェルビーイングに与える影響が明らかになった。
同調査は、今後の高齢者住宅のあり方についてさまざまな示唆に富むものとなっている。

(一社)高齢者住宅協会(会長:芳井敬一・大和ハウス工業会長 CEO)の住宅・住生活部会が「調査研究報告会と意見交換会」を開催、「自立中心型のサ高住の住環境と健康の関連を探る調査」の結果を報告した。自立中心型サ高住の居住者は建物内居住者だけでなく地域との交流も多くQOLを高める機会が多いこと、また、地域在住の高齢者と比べて人生満足度が高く運動機能低下リスクが低い反面閉じこもりリスクが高いことなどが報告された。

宮本俊介部会長は、「75~85歳の人口1400万人のうち、介護を受けていない1140万人の健康寿命をいかに延ばすか、住宅を通じて環境をいかに整えていくかが重要な課題。介護施設とあわせて自立型の高齢者住宅をぜひ増やしていきたい」と話した。

キッチンの充実、多目的ホール設置が外出の増加、QOLの向上に効果

同調査では「自立中心型」を要支援2以下が7割以上、「中間型」を同3~7割、「軽度要介護中心型」を同3割未満・要介護2以下5割以上、「重度要介護中心型」が同3割未満・同5割未満とした。

調査報告の前半は、(一社)高齢者住宅協会の松本吉彦フェローが空間・サービス、また、居住者生活についての結果を報告した。

「入居を決めた理由」のトップ3は、「今後の高齢化に備えて早めに住み替えたかったから」、「配偶者がいなくなり、ひとり暮らしになったから」、「子供や親族に心配を掛けたくないと感じたから」。「自立中心型」では「子供や親族に心配を~」を除く項目で「中間型」や「軽度要介護中心型」を上回っており、「早目の住み替え」、「ひとり暮らし」が大きな理由であり、「不安に備えて早めに住み替えた」(松本フェロー)という例が多いようだ。これを住室面積別でみると、トップの「早目の住み替え」と「家の管理が大変」、「建物の魅力」の3項目は面積が広くなるほどその割合が高まる。

食事の用意と外出の関係

自分で食事の用意をしている居住者は、自立中心型で男58%、女76%であるが、軽度要介護中心型は男13%、女14%に過ぎない。一方、共用のキッチンの利用については、自立中心型が昼食32%、夕食57%であり、軽度要介護中心型は昼食が81%、夕食が96%と大きな差がある。自立中心型は自室にキッチンがあるため、その使い分けをしているようだ。住室面積別では、25㎡未満では「ほぼ毎日使う」が男74%、女79%であるが、40㎡以上は毎日ではなく週一回以上の利用が多いことが特徴だ。

さらに自分で食事の用意をしている人の約9割が「週に一回以上外出」しており、「キッチンを充実させることが自分で調理、外出へとつながり、おそらく健康にもつながる」(松本フェロー)とみられる。

外出を促進する要素として趣味についても自立中心型と軽度要介護中心型では大きな差が出た。3つ以上の趣味を持つ人は自立中心型の男42%、女40%であるのに対して、軽度要介護中心型は男26%、女40%であり、自立中心型は多趣味な傾向にある。この趣味がある人は週一以上の外出が多くなる傾向にあることも分かった。

事業者に聞いたところ、多目的ホール・集会室・ギャラリーなどがあると地域参加が可能な活動の開催頻度も高くなり、地域の友人・知人と直接会う頻度も高まることも分かった。活動・サークルへの参加は、家族以外との交流が増え、外出やQOLを高める機会が増加するようだ。

サ高住入居者は地域在住高齢者よりも幸せ


この記事は会員限定記事です。
無料会員になると続きをお読みいただけます。

アカウントをお持ちの方

ご登録いただいた文字列と異なったパスワードが連続で入力された場合、一定時間ログインやご登録の操作ができなくなります。時間をおいて再度お試しください。