日本最大級の木造耐火建築が開いた扉 医療福祉施設における木造の新展開
事例② メドックス(東京都新宿区) 物件:特別養護老人ホーム花畑あすか苑(東京都足立区)

一級建築設計事務所のメドックスは昭和46年に設立、医療福祉分野に特化して活動している。現在の顧客構成は、中小民間病院(200床以下)が中心で、社会福祉法人や福祉系施設も手がけている。以前は介護老人保健施設(老健)が多かったが、最近は特別養護老人ホーム(特養)が中心となっている。内訳は、医療施設が5割、福祉施設が4割、保育園・幼稚園関係が1割程度。建築構造としては鉄筋コンクリート造や鉄骨造も含め、全国で事業を展開している。
構造の軽量性と居住環境の良さがメリット
これまでに同社が手掛けた中大規模木造は12件、床面積約1300㎡のものから約9700㎡のものまで多岐にわたる。うち在来軸組工法は1件、ほか11件は枠組壁工法だ。同社が医療福祉分野の木造施設に強い設計事務所であるという認知が広まるきっかけとなったのが、2016年6月に東京都足立区で竣工した「特別養護老人ホーム花畑あすか苑」だ。建築主は社会福祉法人聖風会、施工は三井ホーム。1階が鉄筋コンクリート造、2階から5階までが木造(枠組壁工法)というハイブリッド構造を採用しており、床面積は約9773㎡と枠組壁工法の耐火建築物としては当時の日本で最大級の建物であった。
2階から5階の構造計画にあたり、耐火建築に伴う建物重量増加による耐力壁の必要水平せん断力の増加に対して、プラン自由度を確保するため高強度耐力壁が必要であった。そこで、内部耐力壁に枠組壁工法の高強度耐力壁としてカナダで開発されたミッドプライ・ウォール・システム(MPW)を、外壁に木割れ低減釘を用いた両面合板張りによる高強度耐力壁を採用している。MPWは、一般的なツーバイフォーの耐力壁が枠組み材で枠を組み、外側から合板を釘で打ち付けるのに対し、OSBの面材を枠材で挟んで釘で留めつける。釘は二面せん断を受けることになり、一面せん断に比べ、水平せん断耐力が1.8倍と優れた強度を発揮する。この建物がきっかけとなり、世田谷区や文京区など他の地域でも同様の構造を採用したプロジェクトが増えている。
同社の佐藤憲一取締役は、木造建築のメリットとして構造の軽量性と、居住環境の良さの二つの点を強調する。「木造は建物全体の重量が軽くなるため、基礎工事や地盤改良の負担が軽減され、コスト削減につながる。また、木造の床の柔らかさや空気感が、特に福祉施設や病院の病棟において入居者や患者にとって快適な環境を提供することができる」と話す。



特殊技術に頼らない大規模木造設計
2019年6月に東京都世田谷区で竣工した「特別養護老人ホームときわぎ世田谷」においても、中大規模木造の可能性を広げる挑戦を行った。地下1階、1階がRC造、2~4階が木造(枠組壁工法)、延床面積約4989㎡の建物だ。
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