時代を映すフローリング

制度改正が動かすフローリング市場

 

法改正などを機に、フローリングは新たな潮流を迎えている。施工性を追求する企業、天然木の質感を提案する企業、そして非住宅分野に挑む企業——。多様な方向性が交錯する今、フローリングの最新動向を読み解く。

2025年4月に施行した建築基準法および建築物省エネ法の改正により、これまで4号特例で確認申請が不要だった木造2階建て住宅などについても、確認申請が必要なケースが大幅に増えた。これにより、住宅全体のコスト増が見込まれるなか、「価格を抑えたシート系製品を中心に採用を広げる動きと、付加価値を重視した天然木系製品を提案する動きに二極化している傾向」との声もある。

4号特例の縮小はリフォームの分野にも大きな影響を与え、確認申請が不要な上貼りリフォームの需要が高まっている。

こうしたなか、各社は施工性とデザイン性を両立した新商品の開発や、用途・価格帯に応じたラインアップ拡充を進める。また、SNSなどを通して多様化するユーザーニーズに対応するため、意匠や質感、メンテナンス性などの幅広い提案力も求められている。

一方で、社会的に脱炭素への取り組みが加速するなかで、建材においても、環境配慮製品であるかどうかが採用に至る一つの軸となってきているようだ。メーカーによっては「環境に配慮した商品でなければ採用しない」という方針のハウスメーカーも出てきているといい、こうした要望への対応力が求められる。

フローリングを取り巻く市場環境が変化するなか、各社の取り組みを探った。

【新築】成熟市場で問われる〝次の価値〟 多彩な提案が広がる

新築分野では、住宅市場の成熟化に伴い、フローリングにも「意匠性」だけでなく「性能・環境」など、より複合的な価値が求められるようになっている。また、SNSの普及に伴いエンドユーザーのニーズも多様化を極める。こうした市場の変化に応じて、各社も新しい提案を次々と打ち出している。
パナソニック ハウジングソリューションズは、24年2月に床シリーズを刷新。「適材適床」をコンセプトに、部屋ごとに性能で選ぶ床材提案を進めている。

エンドユーザーが新築時に床を選ぶ際には、デザインを基準に選択することが多いが、使用後に性能面が気になるケースは少なくない。また、同社が行った調査では、睡眠時を除いた部屋別の利用時間はLDKが圧倒的に多く、他の部屋よりも高い性能が求められることが分かった。一方で、従来は性能ごとにシリーズを分け、異なる色柄で展開していたため、別のグレードの商品を採用すると、部屋ごとの色柄を統一しづらかった。また、一度商品を決めた後にグレードを変更する場合、色柄から選び直さなければならないため、選定に時間を要していた。

こうした課題を踏まえ、同社は床材の商品体系を2シリーズ×3グレードのシンプルな体系に再編した。シリーズは、高意匠シート仕上げの「ベリティス」と、天然木突板仕上げの「マイスターズウッド」の2つで、シリーズ内で性能グレードを選択できる体系にしたことで、グレードを変更しても、色柄を選び直す必要がなくなった。

性能グレードは「ベースコート」、「ダブルコート」、「トリプルコート」の3つを用意。ベースコートは一層のUVコート、ダブルコートは二層のUVコート、トリプルコートは二層のUVコートと溝への滝塗装による高密度コートが溝の奥まで施してある。例えば、滞在時間が長く、汚れやすいLDKのフローリングには、グレードの高いトリプルコートを選択し、廊下や寝室など床のキズや汚れの心配が少ない箇所にはベースコートを選ぶなどの使い分けができる。

サンプル帳や各パナソニック ショウルームでも、グレードごとのコーティングの違いを体感できる見本を展開し、性能の違いを分かりやすく伝えられる体制を整えている。

また、同社は職人不足へ対応する独自のサービスとして、今年4月からフローリングのプレカット加工も実施している。

同社と施工業者による事前打ち合わせで貼り始め位置や寸法などのルール決めを行い、施工業者はCAD図を提出する。それに基づき同社が作成した割付図を、施工業者が承認することで、同社の群馬工場にて割付図面通りに加工された床材を出荷する。30坪の住宅での実測値では、2人の職人で約2日かかっていた工期を1日に半減することができ、廃材の量も88㎏から4㎏へと大幅に削減できた。そのため、人員は増やせないが棟数を増やしていきたい住宅事業者に積極的な提案を行っていきたい考えだ。

ウッドワンは、ニュージーランドにおいて自社が経営する森林で計画的に植林、育林したラジアータ・パインを使用した無垢フローリングの「ピノアース」を販売している。木目が平行に並ぶ柾目取りによる、反りや狂いを抑えた安定性と、均一で真っすぐな木目の美しさが特徴。表面には木目を立体的に浮き立たせる「浮造り仕上げ」を施すことで、自然の木ならではの上質な素材感を引き出した人気商品だ。

ウッドワンの「コンビットソリッドJ」の施工例。施工性に優れた商品を安定品質で供給する

一方で、同社は広島県庄原市と19年11月に「庄原産材活用のための連携協定」を締結。「オーク材などを中心に海外材の価格が上がるなかで、安定的に供給できる」(商品企画開発部 間宮僚太郎 プロダクトマネージャー)国産材の活用へ向け、備北地域の林業組合とも連携を取りながら検討も行ってきた。

こうしたなかで、今年6月から出荷を開始した注力商品が、国産ヒノキを使用した無垢フローリング「コンビットソリッドJ」だ。無節、上小節、節ありの3グレードで、塗装はクリアホワイト色と無塗装の2タイプ。ヒノキ材を使った無垢フローリングは、小規模加工会社による販売が多いが、同社はフローリングメーカーの強みを生かして、施工性に優れた商品を安定品質で提供できる。

具体的には、長さ方向のさね加工に加え、短辺側にもさね加工(エンドマッチ加工)をすることで、4辺すべてを噛み合わせて、高い一体性を確保。湿気や温度変化によるフローリングの膨張に伴って端部や継ぎ目が持ち上がる〝突き上げ〟などの動きを抑制。また、節の部分についても、表面が平滑になるよう埋め木やパテで補修することで経年時の割れやささくれを防ぐ。

さらに、塗装についてもこだわりを持つ。一般的なクリア塗装はヒノキ材に塗布した際、木材が黄みがかって見えることが多い。しかし同社のクリアホワイト塗装は、素地の色合いを残したまま、表面の汚れやキズを防ぐことができる。

また、同社は総合建材メーカーとしてフローリング以外の建材も取り扱っているため、フローリングに加え、階段や玄関まわりの部材もヒノキ材で揃えることができる。

朝日ウッドテックは、天然木を使ったペット用フローリング「ライブナチュラル for Dog」シリーズの販売を強化している。

一般的に防滑性を向上する際には、表面に凹凸をつけることが多いが、同社は塗料メーカーと共同で開発した強靭性とグリップ力を併せ持つ塗料を採用することで、天然木のなめらかな質感と、滑りにくさの両立を実現。塗料が強靭性とグリップ力を持たせる成分を含んでいるため、長期的に効果が継続する。

今年1月には、戸建用として表面に2㎜の挽き板を使用し、より天然木の豊かさを感じられるハイグレードタイプの「ライブナチュラル プレミアム for Dog」を発売するなど、豊富なラインアップを用意しており、右肩上がりの売れゆきだという。

購入を検討するエンドユーザーには、年に1~2回、大阪本社で開催する体験会や、フローリング体験キットのレンタルサービスを通じて滑りにくさを実感してもらい採用に繋げている。

今後はマンション直貼り用にも挽き板タイプの商品を発売予定だ。

永大産業が今年10月より販売開始した「Eグリーンフロア」は、同社初の基材にパーティクルボード(PB)を使用したシートフローリングだ。PBは、木材チップを何層にも重ねて成形した木質ボードで、原料に建築廃材や間伐材などが使われているため資源循環に貢献する。また、木質資源のまま長期間利用することで炭素固定期間を延ばし、CO2削減にも寄与するとされる。

永大産業の「Eグリーンフロア」。基材にパーティクルボードを採用した資源の有効活用とCO₂削減を両立させた環境配慮型フローリング

同社は約10年前から床材の基板にPBを使用する研究を開始。19年にPBの生産能力を高めることなどを目的に、日本ノボパン工業との合弁会社「ENボード」(静岡県駿東郡、藤本八郎社長)を設立したのち、約3年前から本格的な開発に乗り出したという。

一方で、通常、基材にPB使用した床材は、合板を使用するものに比べて重くなるという課題があった。この課題に対して、同社はPBに使用する木材チップの密度を下げることで、一般的なPB床材に比べて8~10%の軽量化を実現した。「人は30㎏を超えているかどうかで重さの感じやすさが変わるとされているが、『Eグリーンフロア』は、1梱包(6枚入り)でも重量が30㎏以下で、PBの床材では他にない軽さ」(PB事業部 企画管理課 池内貴宏 氏)だとする。

PBは木材チップの密度が高いほど強度が出るため、強度が必要な床材において重量を軽くすることは容易ではない。しかし、接着剤の工夫や木材チップの形状の均等性を高めることで強度を保ちつつ密度を下げることに成功。環境配慮性と施工性を両立した床材が実現した。
キャスター対応や床暖房対応など、基本的な性能は同社の他のフローリングと同じで、同社の内装建材のボリュームゾーンである「スキスムS」で展開している定番の木目調カラーを揃える。

今後は1×6尺サイズのシートフローリング以外の形状・用途のフローリング開発にも注力する。技術的なハードルは高いが、新たな用途開発へ積極的に取り組むとした。

三重県津市にフローリングの工場を持つDAIKENは、発売から10年を超えるロングセラー商品の戸建用シートフローリング「Trinity(トリニティ)」の販売に力を入れる。

「トリニティ」はシートフローリングでありながら、天然木を使用しているようなリアルな木質感を追求した商品。大きな特徴が、床基材の四周木口面に特殊加工化粧シートを巻き込む、特許技術による高い意匠性だ。一般的なシートフローリングは、溝加工部分の基材が露出するが、木口面にシートを巻き込むことで床材の継ぎ目にも表面と同じ意匠が連続し、立体感のある美しい仕上がりとなる。また、樹種ごとの手触りの違いをエンボス加工で再現しており、木の本物感を忠実に再現する。再現度の高さから、「突板や無垢フローリングを検討していたお客様が、実物を見て『この見た目なら、お手入れしやすいトリニティにしよう』と判断されるケースもある」(内装材事業部 事業企画課 大塚良平 課長)という。表面のシートは、キズや日焼けにも強く、美しさを長く保てるため、表面のキズや紫外線による変色を懸念するユーザーにも適している。

DAIKENの「トリニティ」は、天然木を使用しているようなリアルな木質感を追求したシートフローリングで、今年から「ウォールナット柄(グレー色)」を追加した

また、24年4月には、幅が303㎜とワイドな「トリニティグランデ」の販売も開始した。一般的なフローリングに多い1尺×6尺サイズ(約303㎜×1818㎜)のため、施工業者も扱いやすく、より広がりのある伸びやかな空間を演出できる。

特に、昨年発売時に「トリニティグランデ」のみのカラーとしてラインアップした「ウォールナット柄(グレー色)」がシリーズ一番の人気で、今年から通常の「トリニティ」へもラインアップを追加した。

引き渡し前の補修に新商材

引き渡し前の補修の品質を高めるサービスも誕生している。

ナオス・テックは24年6月より新築住宅の引き渡し前に行う、リペア補修に代わる新たな補修として「シート補修工法」の提案を開始している。リペア補修とは、住宅引き渡し前に、工事段階でフローリングについた細かなキズを、専用の充填剤や塗料を塗って目立たなくする作業。ただ、作業者の技術によって仕上がりが左右されたり、経年によって補修箇所が目立ってくるという課題もある。「シート補修工法」は、シートを貼って仕上げるため、一律の品質で、年月が経っても違和感が生じない。また、印刷会社の協力のもとシートフローリングに使用されているデザインを幅広くカバーしており、周りのフローリングと全く同じ見た目を実現することができる。

【リフォーム】制度改正が追い風に 上貼りリフォームが活況

4号特例の縮小により、リフォームでも確認申請が必要となるケースが増えている。こうしたなか、申請を回避できる上貼りリフォームの需要が高まっている。

上貼り工法は既存床の解体が少なく廃材が少なく、高層マンションで課題となる廃材搬出の手間を軽減できることから、施主・施工業者の双方にメリットがある。さらに、コロナ禍以降テレワークが一般化したことで、工事時の近隣住居への騒音意識も高まっており、施工時の静音性が高い上貼りフローリングの採用が広がっている。

パナソニック ハウジングソリューションズは、業界最薄の約1.5㎜の厚みの上貼りフローリング「ウスイータ」が、販売累計100万坪を突破する人気を誇っている。

コロナ禍以降、在宅時間が増えたことでリフォームのニーズは高まっているが、特に20歳~35歳においてはインテリアにこだわってリフォームを行いたい傾向が強いという。また、リフォーム事業者にとっても、インテリアまで含めた空間提案をすることで、受注単価を伸ばすことができる。

「ウスイータ」は、1.5㎜の厚みのためノコギリを使わずカッターで切断ができ、上貼りした際にドア下部のカットが不要であったり、サッシ枠に合わせても段差ができにくく施工がしやすい。また、既存の床暖房機能も、温かさがほとんど変わらず使用できる。

パナソニック ハウジングソリューションズの「ウスイータ」は、業界最薄の約1.5㎜の厚みの上貼りフローリング。2003年の発売開始から販売累計100万坪を達成した人気商品だ

貼り換え工事の際に懸念される、撤去工数やコストの甚大さ、騒音・ホコリ問題、温水フロアの損傷などを気にせずに施工でき、リモートワーク中に他の部屋をリフォームすることもできる。

さらに、「ウスイータ」は、ウッドプラスチックボード(WPB)という木粉と樹脂、石灰を混ぜたものでできているため、「フローリング」を名乗れる点も強みだとする。実際に採用しているマンションオーナーなどからは「物件検索サイトなどでも、詳細条件を絞る項目に『フローリング』があり、フローリングを使用していると言えることが重要」という声もあり、採用への決定打になっていることが見受けられる。

カラーは豊富な10色展開で、表面色に合わせて基材も4色から使い分けているため目地部分も綺麗に仕上がる。小型犬の滑りに配慮した仕様や、防音直貼りフローリングの上から設置できるタイプも用意する。特にマンションでは、リフォーム時に防音フローリングに上貼りをしても遮音性能を維持できるエビデンスの提出を求められることもあるが、同社は遮音性能を低下せず使用できる検証データも持っており、柔軟に対応できる。

さらに、11月4日からは床暖房対応の上から貼れる耐熱タイプの「ウスイータ」にコスト優先型をラインアップ。通常、出荷時に貼り付けてある裏面テープを現場作業にすることで、標準価格を2割以上落とした。

同社は「2000年頃から増え始めた敷居と床の段差が3㎜以下のバリアフリー住宅がリフォーム適齢期に差し掛かっている。同時期の住宅は床暖房が設置されていることも多く、薄型の上貼りフローリングで床暖房の機能をそのまま使用できる『ウスイータ』の市場可能性はまだまだある」(建築システム事業部営業戦略企画部 営業推進担当 プレカット建材企画推進課 南出 皓一郎課長)と更なる市場拡大を目指す。

ナオス・テックは、完全責任施工によるフローリングリフォームを行い、6期連続で約20%ずつ業績を伸ばしている。SNSで存在を知った施主から逆指名で採用されるケースも多く、一度採用したリフォーム事業者はリピート採用に至るため、取り扱い事業者の拡大につながっているという。

同社の最大の特徴は一貫した責任施工体制だ。同社は上貼り改修にあたって独自の施工方法を確立しており、施工を任せる事業者には一から研修を行っている。

「リフォーム事業者にとっても施工まで任せられるため負担が少なく採用しやすいのではないか」(越村朋弘 営業部 取締役部長)とみる。上貼りリフォームは、巾木や敷居との段差などの調整が必要で手間がかかるため、敬遠する職人も少なくない。また、既存のフローリングと上貼りフローリングとの相性などが原因で施工後に剥がれや浮きが出るリスクもある。同社は、こうした上貼りリフォーム特有の懸念を完全責任施工体制によって払拭。施工を一貫して管理することで、採用へのハードルを下げた。責任施工であれば、施工者の人柄や技術を把握できるため品質管理がしやすく、販売後に不具合が発生した際も、履歴をさかのぼって施工者や使用材料を確認できるため、迅速な対応が可能となる。佐藤喜政 会長は、「住宅の長寿命化が進むなか、建材メーカーにも、売って終わりではなく販売後の責任を果たす姿勢が問われている」と強調する。

同社はフローリング改修用の商材として「ナオスフローリング」と「ナオスシート」の2つを展開する。

「ナオスフローリング」は、3㎜の厚みでありながら、さね形状と専用接着剤により強固に接着できる上貼りフローリング。接着に両面テープを使用しないため、スライドで確実にフローリング同士を固定することができる。特に、クッション性の高い防音フローリングの上から貼れる製品は業界にほとんどなく、強みになっている。この点についても施工まで一体で行うからこそ品質を保証できるという。

ナオス・テックの「ナオスフローリング」。一貫した責任施工体制が同社の特長で、「建材メーカーにも販売後の責任を果たす姿勢が問われている」と強調する

一方、「ナオスシート」は、厚み約0.02㎜のオレフィンシートで、対傷性、耐候性、耐汚染性の3機能を備える。「切って、張る」だけの簡便な施工方法であるため、工期短縮、工事費低減などが期待できる。近年、築後20~30年程度経ち、フローリングの表面のシートが剥がれてくる住宅が目立っているという。こうした住宅に対して、既存フローリングの状態が比較的よければ、「ナオスシート」コストを抑えて簡単に改修ができる。

また、当初は想定していなかった使い方として、敷居周りへの部分的な採用も多いという。

上貼りフローリングで改修した際に、既存の床の厚みに合わせて設置してある敷居の周りにはフローリングを貼ることができない。そのため、従来は上貼り改修をしても敷居周りだけは既存床のままで見栄えが悪くなっていた。

フローリングを貼れない敷居周りを「ナオスシート」で化粧すれば、見た目の悪さが改善されるため、施工業者から「痒い所に手が届く商品」として重宝されているという。

DAIKENは、今年2月に「イエリアフロア3Tセレクト プレミアムウッド柄」を発売している。同社としては初の3㎜厚の薄さで上張り後でも建具開閉時にも干渉しにくく、床暖房にも対応する。また、薄板でありながら本実加工を四周に施しており、しっかりと固定できるため、下地の不陸による段差が起きにくい。

6月にはペット対応の仕様も追加。小型犬の歩行に配慮した滑りにくさを実現する表面仕上げを施しているほか、優れた耐傷性、防汚性を有し、爪痕など室内でペットを飼うことで生じる床面のキズや、よだれや尿(アンモニア)、吐き戻しにも配慮している。同社は床材だけでなく壁やドアでもペット対応の商品を展開しているため、ペットを飼育している家庭向けに空間ごとの提案ができる。

朝日ウッドテックは、業界初の、既存の床暖房の機能をそのまま使える上貼りの天然木フローリング「ライブナチュラル スマートレイヤー for Dog」を25年11月に発売する。同社は、業界で初めて床暖房対応のフローリングの発売を行い、過去にガス会社で販売していた温水床暖房対応の薄型上貼りフローリング商品も手掛けるなど豊富な実績がある。反りや剥がれといったトラブルに対する知見も多いとし、長年のノウハウを詰め込んだ高い品質に自信を持つ。

朝日ウッドテックの「ライブナチュラルスマートレイヤーfor Dog」は、業界初の床暖房に対応した天然木上貼りフローリングだ

また、厚みが薄すぎると下地となる既存フロアの反りや不陸の影響で、表面が映出するトラブルが発生しやすいが、同商品は基材が3.9㎜と適度に厚みがあり、下地の不陸が追従しにくくなっていることがポイントだ。

現在リフォーム適齢期を迎えているストック住宅の多くは、天然木のカラーフロアが採用されている。一方、これまでの上貼り床材は、ほぼすべてシート仕上げであり、こうした市場に対して、同社では業界初の床暖房に対応した天然木上貼りフローリングとして提案を進める。

また、防滑性を備えた「for Dog」シリーズで、小型犬の足腰に負担を与えたくないエンドユーザーへも積極的に訴求していきたい考え。「特にペットを飼育している家庭では、仮住まいが難しいという理由でリフォームを諦めている家庭も少なくない。『ライブナチュラル スマートレイヤー for Dog』は、8畳程度なら約1日で施工できるため、これまでフローリングリフォームを諦めていた層にアプローチできる」(マーケティング部プロモーション推進室 西村公孝室長)。

同社は「抗ウイルス性能」、「抗菌性能」、「耐薬品性能」、「耐汚染性能」、「室内空気環境性能」の5つの衛生性能において、一定の基準を満たした天然木製品を「HYGIENIC(ハイジェニック)」仕様として天然木フローリング商品に標準採用しており、高い機能性も特徴となっている。

素材の色味を生かしたものに加え、近年トレンドのアッシュ系カラーに着色した商品も展開する。

無垢材をサンディングで長く使うサービスも

省施工、廃材ロスなどの観点で上貼りリフォームが大きな注目を浴びるなか、無垢材のフローリングであれば、表面を磨く〝サンディング〟で長く同じ床材を使用できるとして、サンディングサービスを提供する企業も現れた。

ウッドワンは、24年11月から「無垢フローリング ピノアース」を対象に表面のサンディングサービスを開始した。表面を磨くことで新築時のような輝きを取り戻すことができるほか、カラーの変更もできる。「住宅市場がスクラップ&ビルドからストック活用へと変化し、今後は住宅にどのように手を掛けていくかが大切になっていく。サービスを通じて、50年、60年後の住宅でも安心してフローリングを使用してもらいたい」(間宮マネージャー)考えだ。

当初は広島県に限定していたが、今年10月から、関東以西へとサービスのエリアを拡大した。

【非住宅】非住宅建築物でも木造化の波 新市場での可能性

国を挙げた木材利用推進の流れを受け、非住宅建築物でも木造化の動きが少しずつ高まっている。

令和6年度「森林・林業白書」によると、24年の着工建築物における非住宅・中高層建築物の木造率(床面積ベース)は6・2%にとどまる一方、低層で床面積が500㎡未満の建築物では、住宅の技術を応用できる場合も多く、木造率は45%と比較的高くなっている。また、現時点では木造率が低い中大規模建築物についても、建築基準法の改正により燃えしろ設計が可能となるなど、採用拡大への取り組みが進められており、今後の市場拡大が見込める。
こうした背景から、各社は非住宅分野へ向けてもフローリングの提案を加速させている。

朝日ウッドテックは、非住宅フローリング「MESSAGE(メッセージ)」シリーズから、来年1月にオフィス向けの商品を発売する。オフィス用は、既存の床にタイルカーペットが採用されていることが多い。そのため、タイルカーペットと並べても段差を生じない厚みに設定した。さらに、オフィスなどで配線スペースを確保する目的で設置される二重床下地OAフロアの境界を跨ぐような寸法設計をしている。また、オフィスは賃貸契約の場合も多いため、契約終了後に原状復帰がしやすいつくりになっている。

DAIKENは、非住宅建築物向けに、耐久性に優れた土足対応の天然木突板床材「コミュニケーションタフ」シリーズを展開する。96㎜幅の「DW」と147㎜幅の「FW」の2サイズの設定で、各商品にモルタル下地用、木下地用を揃える。

カタログ品以外に、表面材に地域産材を用いる対応も行っており、需要の高さを感じているという。

日本に多いヒノキやスギといった樹種は、強度が低く床材として採用しづらいが、木材の空隙部に樹脂を含浸・硬化する同社独自のWPC加工を施すことで土足用としても採用できる耐久性能を実現した。

また、ホテルなどに適した防音床タイプも人気が高い。ホテルの床には防音性能を高めるためにカーペットが使われていることが多いが、掃除がしにくい弱点がある。そのため清掃性の高いフローリングが近年注目を集めている。

24年6月にはWPC樹脂とコーティング塗料の一部に植物由来の原料を配合した「バイオリーフ」シリーズの追加も行った。環境配慮商品を積極的に採用したいという住宅事業者が増えるなか、どのような提案を行っていくかがカギになっている。

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制度改正や環境意識の高まりを背景に、フローリング市場は今まさに転換期にある。市場の変化の中で、施工性と付加価値を両立する新たな商品が次々と生まれている。住まいの質を支える基盤として、大きな可能性を持つフローリング業界の今後の提案に注目したい。