大和ハウス工業、在来工法の木造賃貸新商品開発 地域材活用で山、工務店、居住者つなぐ
分譲比率4割を維持
大和ハウス工業が在来工法を採用した木造賃貸商品を2026年に発売する。
地域材を使い、地元の工務店に施工依頼する新たなビジネスモデルを構築する。
大和ハウス工業の賃貸住宅事業が好調だ。2024年度の売上高は前期比10.1%増の1兆3760億円(うち海外1243億円)、営業利益は前期比12.2%増の1299億円(うち海外32億円)だった。25年度は前期比3.2%増の売上高1兆4200億円、営業利益は同5.5%増の1370億円を計画しており、順調に達成する見込みだ。ハウジング・ソリューション本部の竹林桂太朗集合住宅事業本部長は好調の理由について「大型物件が寄与している。また、家賃上昇のトレンドにより、アパート投資が加速したともいえる」と説明する。
入居者目線を事業の軸に
竹林本部長は、今後の方針として〝入居者重視〟を強調した。「オーナーの方々に相続税対策のために土地活用の賃貸住宅を提案するのがメインビジネスだが、安定的な賃貸事業成立には、入居者を一番大事にしなければならない。これまでの入居者アンケートでは、D︲ROOMに対して『意外と良かった』という声が多かったが、これを『やっぱり良かった』にすることが、私の大きなテーマ」と語った。さらに、「賃貸住宅は、生まれ育った家を出た後に初めて入る家。それがD︲ROOMだった場合、当社との接点ができる。賃貸住宅での経験が戸建住宅や分譲マンションに対して良い影響を与えられるよう、いい生活ができるアパートを提供していきたい」と、大和ハウス工業との最初の接点として、D︲ROOMの満足度とブランド力を高めていく考えを示した。
森の循環に賃貸住宅を組み込む
入居者目線を軸に事業再構築を図る上で、注力するポイントの1つが木造だ。同社は、ZEH‐Mに対応した鉄骨2階建て・3階建て賃貸住宅商品TORISIA(トリシア)の販売を2022年10月に開始した。それにより、ZEH‐Mの比率は22年度の14%から、24年度の73.1%まで向上した。ただ、鉄骨では寒冷地、多雪エリアでのZEH対応に限りがあること、価格が高いという声が多く寄せられたことなどから、木造への取り組みを強化している。その一歩として、24年4月に東急不動産ホールディングス傘下で木造建築の技術を持つTRDホームズを子会社化。大和ハウスウッドリフォームへと商号を変更した。第一弾として、杉並区下井草に木造2階建て8世帯の賃貸住宅を建築し、現在は満室で稼働している。
さらに2026年には、分譲限定で木造賃貸の商品を発売する。大きな特徴は、同社がデベロッパーの立場として商品のモジュールを提供し、建築は地場工務店が担うという点だ。構造や内装材には輸入材を用いる一方で、外装ルーバーに地域の間伐材を活用し、地域の木材需要と森林の再生に寄与する。竹林本部長は「15~20年のスパンでルーバーを付け替え、林業のサイクルの中にアパートを組み込む。地域の山、林業とつながっている地元の工務店に建てていただくことで地域の中で完結できる仕組み」と狙いを説明する。
内装材や住宅設備に工場出荷品を積極採用して品質を確保するほか、天井高を開放感ある3m仕様にし、土間や縁側スペースを採用するなど、上質な空間づくりにも努める。当初は低価格の木造賃貸商品として開発をスタートしたが、コンセプトを重視したことでコストアップした。それでも、価格は鉄骨造のTORISIAと同等以下になる見込みだ。「木造は後発なので、コンセプトが重要。山と居住者をつなげ、できるだけ地域産材を使用するなど住まいに愛着が湧く仕掛けをしたい。何より入居者の方々に支持していただけることを狙っている」(竹林本部長)と、特徴的な賃貸住宅の投入でブランド力を高める方針だ。
物件大型化、複数棟分譲に注力
賃貸住宅の分譲事業では、1都3県や名古屋、大阪などの都市部を中心に中高層RC造の物件を開発していく。東京都品川区に建築した28階建て458戸の「ロイヤルパークス品川」は今期内に外資系企業に売却済。同北区の「ロイヤルパーク赤羽」(3棟合わせ520戸、3店舗)も今後、売却する予定だ。さらに、工事監督不足と部材・資材などの輸送コスト削減を図り、地域のまちづくりにも貢献するため、同一区画内で複数棟を分譲する開発にも力を入れる。茨城県つくば市では、TORISIA13棟157世帯の「つくば陣場レジデンスラボタウン」(仮称)を計画中。埼玉県新座市でもTORISIA6棟60世帯のプロジェクトを進めている。現在は賃貸事業のうち、請負6割、分譲4割という比率になっており、「請負を弱くしてしまうとオーナーの方々へのフォローがなおざりになってしまう。分譲の40%という比率は守っていく」とした。
国内の賃貸事業が順調に推移している一方、設計、施工人材の確保が大きな課題となっている。自社施工だけでは手がける棟数に限りが出てくることから、「物件の大型化、ゼネコンに仕事を発注するデベロップメントの事業を拡大し」(竹林本部長)、生産性を高めていく考えだ。
海外は全体売上の約1割で、4カ国10都市で展開している。中心となる米国はスマイルゾーンを中心に16州で展開しており、11件3224室を稼働、開発する。豪州では26年3月にメルボルンにおいて初の賃貸住宅が竣工予定だ。
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