一次消費エネルギーへの注目度の高まりを背景にPPA事業の全国展開に注力
TEPCOホームテック 代表取締役社長 青木 貴洋 氏
太陽光発電設置の動きが加速するなか、TEPCOホームテックは今年4月に太陽光発電設備の設置件数が1万2000件を超えた。
青木貴洋 社長に今後の方向性や注力する取り組みを聞いた。
――社長に就任されてから1年と少し経ちましたが、社長という立場で住宅の省エネ市場を見た時に感じることはありましたか。
社長に着任したとき、既に東京都の太陽光発電の設置義務化が決まっていました。そのため、当社の事業としては追い風を感じていました。また、その後、国の方でも住宅トップランナー基準の見直しに向けた会議で、太陽光搭載率の数値目標が掲げられました。
省エネに関する住宅の基準は、一昔前まで断熱性能がメインで、さらに過去をさかのぼると、「夏をもって旨とすべし」という言葉にある通り、開放的で風通しの良い住宅が伝統的に好まれてきました。このような背景があり、気密・断熱性能を向上することに対しても様々な意見がありましたが、ここにきて、住宅省エネ化への波が一気に押し寄せています。
さらに、先日は、現行のZEHを上回る、新たなGX ZEHの定義も発表されました。GX ZEH+、GX ZEH、Nearly GX ZEHでは、蓄電池の導入も要件に入っているなど、いよいよ住宅における一次エネルギーの重要度が増してきているなと感じています。住宅の太陽光発電などの事業は今後も市場が成長していくのではないでしょうか。
住宅価格が高騰する中、太陽光発電や蓄電池などの設備の価格を上乗せして販売することは大変です。そのため、当社が得意とする、住宅ローンに設備費を上乗せしないPPA第三者所有モデルなどの方法を採用する動きがさらに加速していくと思っています。
――現在、特に注力している事業はありますか。
昨年度は、東京都の太陽光発電義務化の動きに合わせて、都内で多くの住宅を建てられるパワービルダーや分譲事業者の方との協業を進めてきました。一方で今年度は、住宅トップランナー基準の27年度目標に向けて、全国の住宅事業者の方と連携を強化したいと考えています。
27年度を基準年度とする住宅トップランナー基準で興味深いのは、分譲住宅に比べて注文住宅に対する基準が厳しい点です。外皮性能はそれぞれZEHに相当する強化外皮水準ですが、一次エネ基準BEI(※再エネは除く)は、分譲住宅が0.8なのに対して注文住宅は0.75と、より高い省エネ性能が求められます。その分コストアップは避けられません。従来、注文住宅を請け負う住宅事業者の方は、太陽光発電の設置に関しても自社で行うという会社が多かったのですが、今、改めて訪問すると、「新たな住宅トップランナー基準を達成するとなると、PPAなどの方法も必要だ」と考えが変化している会社も少なくありません。
ただ、当社は東京電力が母体にあるため、関東圏ではサプライチェーンを構築しやすいのですが、他のエリアに行くと縁が薄く、ここが一つの課題でもあります。しかし、現在の売上の2~3割は既に東京電力エリア外です。そのため、全国展開をしているハウスメーカーや地場に強い住宅事業者などと協力して、事業エリアの拡大に注力しています。今年4月には、太陽光発電設備の設置件数が1万2000件を突破したというリリースも出しましたが、こうした実績をもとに関東以外のエリアでも採用を伸ばしていくつもりです。
――施工業者の研修も行っているそうですが。
24年に研修施設「エネカリ テック スクエア」(東京都北区)を開設しました。実際に太陽光発電設備などを施工する事業者を対象に順次研修を行っています。
職人のレベルアップ、特に、太陽光発電の設置については新築住宅と既存住宅で手順が異なるため、その違いを学んでもらうことを目的としています。例えば、既存住宅に太陽光発電を設置する場合、パワコンも配線も住宅の外に設置するため、住宅がどのような構造かはほとんど影響しません。一方で、新築住宅の場合は配線を住宅の中に通すため、軸組工法の家なのか、2×4工法の家なのか住宅の構造を知ったうえで工事をする必要があります。
当社は、安全・品質を非常に重要視しています。そうした考え方を、研修を通して理解していただき、顔が見える関係性を築ければと思っています。
――直近では、住友不動産と提供しているサービス「すみふ×エネカリ」で、薄型太陽光パネル設置の実証実験を開始しました。
大きな流れとして、将来的に薄膜型の太陽光発電設備が市場に出てくることが期待されています。すでに封止材(太陽電池セルを外部環境から保護するフィルム)がガラス製ではないペロブスカイト太陽電池やフレキシブル太陽電池などが普及し始めてきました。こうした動きを受けて、我々も薄膜型の太陽光発電設備がどんなものなのか知見を持つことが大事だと考え始めました。
薄型太陽光発電設備の最大の特徴は軽さです。耐震の観点から見ると、屋根は軽い方がいい。そのため、選択肢のひとつとしてラインアップできれば強みになります。一方で、屋根に載せた際の耐久性はどうなのかなど分からないことも多く、課題はまだまだあります。
また、実証を行ってみて気付いたこともあります。住宅の屋根は案外、平らではないということです。凹凸がある上に薄型太陽光発電設備を貼るのは簡単なことではないなと感じました。こうした気づきをもとに、我々の事業ではどのように活用するべきなのか、どうすれば商品化できるかを考えている最中です。
太陽光発電市場が盛り上がり、様々な企業が参入してきています。そうした仲間と切磋琢磨しつつ、新たな市場を目指すために、まずは全国展開を着実に進め、一歩ずつ事業拡大を狙えればと思っています。
(聞き手:町田結香)
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