三井ホーム/三井不動産 築250年超の歴史建造物 「旧用賀名主邸」を改修
三井ホームと三井不動産が、東京都世田谷区用賀にある築250年超の歴史建造物「旧用賀名主邸」を耐震改修した。制震システム導入と屋根の軽量化により、伝統的な意匠を残しながら安全性の高い建物へと再生した。
三井ホームと三井不動産が、現代の技術を用いて歴史的建造物の耐震改修を行った。対象となった建物は、世田谷区用賀の住宅街に現存する「旧用賀名主邸」。江戸時代後期に用賀村名主を勤めた飯田家の旧家であり、初代の飯田図書吉慶が、16世紀の永禄元亀時代に小田原北条氏の命により、当地用賀の開発を行ったとされている。
2006年まで飯田家の住居として使用されていたが、老朽化などにより居住が困難となり、以降、テレビ、映画、雑誌などのロケーションスタジオとして、幅広く活用されている。三井不動産レッツ資産活用部は、約20年前から現オーナーである16代目の飯田浩一氏から資産相談を受けており、安全な形で次世代に残したいという飯田氏の要望を受け、耐震改修を実施した。同部が総合計画、三井ホームが設計、施工をそれぞれ担当した。
耐震ダンパー&屋根軽量化で耐震診断0.3→1.0へ
建物本来の意匠、美しさを保存するため、従来の耐震改修とは違う手法を取った。「この建物は、釘や金物を使用していない伝統工法で建てられたもの。一般的な耐震改修では基礎を補強したり、接合部に金物を付けたり、耐力壁を増やしたりするなどの方法があるが、この建物でそうした改修をすれば、解体箇所が増えてしまうため、違う方法を考えた」(三井ホーム 東京支社東京オーナーサポート部 内田敦副部長)。特徴的な取り組みの1つが、「Hi ダイナミック制震工法」の採用だ。同工法は、江戸川木材工業が開発した技術で、建物の壁に複数の制震オイルダンパーを取り付けることで、地震時の柱、梁、壁などへの負担を軽減することができる。今回は、特徴的な意匠がある建物南側には手を入れず、その他の部屋に計5ヵ所の制振ダンパーを設置し、建物全体の耐震性を高めた。
また、屋根の軽量化もはかった。改修前の屋根は、瓦の下に土を敷いて固定する伝統的な工法である「土葺き瓦屋根」であり、㎡あたり約80㎏、推定300㎡であるため総重量約24tもの重さがあった。その屋根を防水を施した上で軽量の金属屋根に替え、㎡あたり約5㎏、総重量約1.5tまで軽量化した。屋根総重量を約16分の1としたことで、建物全体の軽量化、さらに耐震アップにつなげた。
こうした特徴的な耐震工事の取り組みにより、工事前の耐震診断では上部構造評点0.3と倒壊する危険性が高い数字となっていたが、工事後は震度6強の地震で倒壊しないレベルの1.0まで向上した。また、建物南側の3間続きの和室や縁側など伝統的な意匠部分を手を入れずに保存することができた。改修費用は公表していないが、一から建て直すより約5分の1の費用で済んだという。
他の旧耐震住宅にも対応可能
日本の伝統的な住文化を残す古民家は注目を集める一方、住む、あるいは商業などで使用するには耐震性や断熱性が不十分であり、工事の大変さや費用など課題が多くある。今回の改修例は他の古民家改修にも転用できる技術であり、活用が期待できる。
三井不動産ソリューションパートナー本部レッツ資産活用部の石田宏次氏は「これから旧耐震住宅の改修需要も増えていくと予想できる。対応できるよう努めていきたい」と話した。
倒壊リスクなくなり安心 また住めるかも…
現オーナー 飯田浩一氏
私自身も生まれた時から、25歳まで住んでいました。古い建物なので、地震の度に建物が揺れて大きな音がするなど、大変怖い思いをしてきました。さらに雨漏りや冬場の寒さなど居住環境としては厳しいものがありました。オーナーとして、この家をどうしていくかと考えた時に、耐震性などの制約を無くすことができれば可能性が広がると感じたため、改修をお願いしました。改修を終え、倒壊による近隣へのリスクなどがなくなり、心配事がなくなりました。再び住めるなという印象も持ちました。今後は、地域の方々にこの建物を面白いと思ってもらえるよう、活用を考えていきたいです。
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