New   2025.7.31

交換できるくん、施工込み住宅設備ECの仕組みを住宅事業者などに提供

将来的に物販やアプリ開発で差別化も視野

 

住宅設備機器のネット完結型交換サービスを展開する交換できるくん(栗原将社長、東京都渋谷区)は、クラウド型プラットフォーム「Replaform(リプラフォーム)」を伊藤忠エネクスホームライフとの共同で開発した。

1998年に創業した交換できるくんは、2001年にウェブサイトを開設して以来、その安価で手軽なサービスが広がり、現在は年間5万件強の施工を行う規模にまで拡大している。同社事業の大きな特徴が、蛇口やビルトインコンロ、トイレ、エアコンなどの簡易な工事のみで交換できる住宅設備機器の販売・施工にターゲットを絞っている点。こうした交換需要については、現場調査を実施し、見積りを作成し、工事業者を手配しといった手間がかかるが、受注金額は少額に留まってしまうため、住宅事業者やリフォーム事業者にとっては利益確保が難しいという問題がある。

同社では、商品選択から調査、見積作成、見積の提出、注文までをネットで完結できる仕組みを構築することで、こうした問題を解決している。現場調査は顧客から送られる画像や過去のデータを元に実施し、24時間以内に見積りを提出することが可能だ。さらに自社で商品を在庫する拠点と全国規模での施工体制を持っているため、工事も迅速に対応できる。さらに、無料で10年保証も付与している。

「Replaform」のサービスイメージ図

こうした同社が構築してきた住宅設備ECの仕組みをクラウド型プラットフォーム「Replaform」(https://replaform.net/)として、ハウスメーカーやマンション管理会社、不動産事業者などに提供していく。

なかなか利益を確保することが難しい少額の交換工事だが、ハウスメーカーなどにとっては重要な顧客とのタッチポイントであり、LTV(Life time Value=顧客生涯価値)を高めていく上では見逃せないことも事実だ。そのため、効率的に交換需要に対応できる同社が構築した住宅設備ECの仕組みを利用したいという要望が寄せられていたという。

そこで、今回、クラウド型プラットフォーム「Replaform」の開発に至った。導入した会社は、簡単に住宅設備交換ECサイトを立ち上げることができ、そのサイトからの運営は、交換できるくんの子会社であるKDサービスが見積、施工、アフターサポートまで対応する。

KDサービスの吉田正弘代表取締役社長は「住宅設備自体は額が小さい。例えば、当社の蛇口の売れ筋であるTOTOの水栓(GGシリーズ)は、当社の場合、工事と10年保証付きで3万数千円ほど。これを一般的なリフォーム会社が現地調査した上で施工すると赤字になってしまう。販売価格をより高くするか、そもそも注文を受けない方がいいとなる。一方、住宅の新規顧客が減るなかで、既存のお客様とのタッチポイントを増やし、いかに収益を上げるかが重要になってきている。マンション管理会社やハウスメーカーが、既存のLTVをあげようとするときに、住宅設備交換という10年のタッチポイントはちょうどいい。そうした状況の中、交換できるくんの仕組み自体をパッケージして外部提供できればと思いこのサービスを始めた。同じようなサービスを一から作ろうとすれば、かなりの時間と費用がかかる。我々が試行錯誤しながら20年以上かけて今の形を作ったように、仕組みを育てるにも5年、10年かかる。それをサブスクのような形で提供し、我々のサービスを使用してもらえれば、双方のメリットがある」と、サービス開始の背景を語った。

KDサービスの強みは、仕入と施工体制にある。物流倉庫を全国9カ所に持ち、大量調達するため価格を抑えることができる。夏ならエアコン、冬なら給湯器など季節商品を重点的に入荷するといった取り組みを進めることで、商品提供スピードの速さを確保している。また、北海道から九州まで全国に250名超の自社「交換士」を抱えているため、対応もスムーズにできる。「全国施工を展開している会社でも、仕組みは下請企業で構成されるネットワークの場合が多い。その場合当然バトンパスが増えるので、時間、手間やコストがかかり品質もコントロールしづらくなる。当社は社員の他に、専任契約する個人事業主の交換士が所属し、交換士はそれぞれ仕事内容やスケジュールなどを専属マネージャのような役割の部署とコミュニーケーションを取っているため、より効率的に工事を進めることができる」吉田社長)。

KD サービスの池田峻二執行役員セールス部 部長(左)と吉田正弘代表取締役社長

24年11月に「交換技能アカデミー」という教育施設を設立し、若手の育成、多能工化にも注力している。「エアコンの技術者は6~9月まで稼ぎ、その後仕事が繁盛期に比べると少なくなる。ガス・水道・電気を扱える多能工化によって仕事を平準化することが可能になる。アカデミーでは今後、現役のエンジニアに向けて多能工を育成するためのプログラムも検討している」(吉田社長)。KDサービスの交換士は多くが週休2日で、その4割以上が年収1000万円を超えているという。こうした人材確保の努力が、仕組みの構築、サービスの向上につながっている。

「Replaform」には、既に大手企業をはじめ、30~40社が興味を持ち、導入を検討しているという。池田峻二執行役員セールス部 部長は「購入履歴などのデータについては、それぞれの会社ごとに提供する。その情報こそが金額ではない価値を持っているのではないか」と話す。

なお、野村不動産グループ、パナソニック ホームズとは一部サービス利用に関する業務提携を既に締結している。野村不動産グループが提供する「野村のクラスマ」で新たに開始した住宅設備機器交換サービスの指定工事店として24年3月から対応する。パナソニックホームズは、コールセンターで受けた依頼を、KDサービスが受け、それ以降の対応を担う。今年4月から関東(東京・神奈川・埼玉)で先行導入し、7月ごろから全国へ順次拡大する。

現在は「交換できるくん」が元々展開していたサービスを提供する形だが、定期的に交換が必要となる換気扇のフィルターなどの物販サービス、「Replaform」専用スマートフォンアプリの開発などで「交換できるくん」との差別化も将来的に検討している。