ミサワホーム、5年間で営業利益167%増 海外事業が成長牽引
19年度の上場廃止以来、5年ぶりの決算報告会開催
ミサワホームが2019年に上場廃止して以来、約5年ぶりとなる決算報告会を開いた。2024年度決算は売上高4831億円、営業利益177億円で増収増益。海外事業の好調が成長をけん引した。
ミサワホームが約5年ぶりとなる決算報告会を開催し、24年度の決算と今後の展望を示した。同社は2019年に上場廃止し、2020年1月からPLTグループの一社となった。さらに、22年に作尾徹也社長が就任して以来、「新築」「ストック」「まちづくり」「海外」「ウエルネス」の5事業を主軸とするポートフォリオの多様化と多層化に取り組んできた。今回上場廃止以来初となる決算報告の場を設けた理由について、作尾社長は「各事業で力強い事業モデルを作るためにやってきたことが、1つ1つ形になってきた。また、昨年(24年)8月には、ミサワホームグループの存在意義を明確化した〝HOME〟をコアとする新たな企業理念体系を策定することができた。新しい姿のミサワホームをお披露目したかった」と説明した。
2024年度決算は、売上高4831億円(前年比528億円増)、営業利益177億円(前年比26億円増)と増収増益だった。米国ユタ州で戸建・集合住宅の建設、販売事業を展開するVisionary Homes(ビジョナリーホーム社)を24年6月に子会社化し、その新規連結分が反映したこと、国内新築事業の売上単価増などが成長につながった。
セグメントごとにみると、新築事業は、売上高2550億円、営業利益42億の増収増益となった。全体での受注棟数は前年比320減の5384棟となったが、受注単価が上がったことで受注金額は前年比8%増の2617億円となった。戸建住宅では、24年4月に発表したLCCMに対応できる新企画住宅「スマートスタイル・ルーミエ」に注力したことなどが奏功し、平均単価が3767万円と前年比で上昇し、棟数減をカバーした。分譲住宅を含む売上棟数は4086棟だった。
賃貸住宅でも高付加価値化や3、4階建てなどの大型化が進み、平均棟単価が8785万円と上がった。売上棟数は980棟、売上戸数は3390棟だった。
リフォーム事業、不動産事業、賃貸事業を含むストック事業は、売上高1057億円、営業利益55億円の増収増益だった。大型リノベーションを含むリフォーム受注金額が前年比2%増の697億円と好調だったほか、賃貸管理戸数も前年比2%増、601戸増の3万7749戸となった。買取再販も92件と多くはないが、前年比で25%増と伸びた。まちづくり事業は、売上高154億円、営業利益19億円の増収減益となった。アセット物件の売却があったため減益となったが、今期はマンション販売が増加する見込みだ。
米国、豪州で展開する海外事業は、売上高が前年比418億円増の1011億円、営業利益が前年比14億円増の60億円。売上高は、初めて1000億円超えとなった。米国の子会社2社目となるユタ州のビジョナリーホームを連結したこと、豪州事業において、工事を短期で回せるようになったことで大きく数字が伸びた。ウェルネス事業は、売上高59億円、営業利益1億円で前年比ほぼ横ばいだった。
20年度から24年度までの推移をみると、売上高は4期連続の増収となり、20年度の3910億円から24年度の4831億円へ23%増となった。営業利益も20年度の65億円から24年度の177億円へ167%増と大きく伸ばした。特にストック、まちづくり、海外各事業が伸びたことが成長の要因となった。作尾社長は「上場廃止以来、社員たちの途方もない頑張りのおかげで、売上を23%増、利益も120億ほど積むことができた」と手応えを語り、25年度目標について、「売上高5000億円、営業利益200億円を目指していきたい」と明かした。
中層木造建築用の新構法を拡大
宿泊施設など大型リノベにも注力
今後は「今のポートフォリオをより逞しいものにしていきたい」(作尾社長)と、各事業で成長が期待できる取り組みに注力していく。新築事業では、自社独自の「木質パネル接着工法」を応用した、中層木造建築用の新構法「CROSS MONOCOQUE」(クロスモノコック)を25年3月から東京都内で販売開始している。販売エリアを順次拡大しながら、中大規模建築の可能性を広げていく考えだ。また、新築住宅市場がより厳しくなっていくことを想定し、利益率の低い住宅部門の人材を「ストック、不動産事業など伸びしろのある部門にシフトし、育成していく」(作尾社長)と効率化も検討する。ストック事業では、住宅だけでなく宿泊施設や商業施設などを含めた大型リノベーションの受注増加に努める。賃貸も現在は首都圏中心に展開しているが、地方中核都市へのエリア拡大を検討している。
海外事業では、現在年間1900棟超の供給体制を築いているが、米国・豪州の住宅需要を背景に、さらに推進していく。30年以上力を入れてきたウエルネス事業では、長年培ってきた医療・介護のソリューションを活用し、他事業とのシナジー創出を目指す。作尾社長は「得意分野として育ってきたをまちづくりや新築、ストックの大型受注に役立てたい」と話した。また、「Membership of Business partner」と称し、エリアごとに地域密着を強化する。自治体、地域企業、教育機関、金融機関、医療機関、JAなど各団体など様々なステークホルダーとの協働を推進し、事業機会の創出に努めていく。
空間提案で広げるリフォーム事業
〜ミサワリフォーム目黒店の事例〜

ミサワホームのリフォーム事業売上高は、20年度の596億円から24年度の721億円と、この5年で安定的に拡大してきている。強化しているのが、「空間展示型」のショールームだ。建材やインテリアの並列展示ではなく、実際の住空間に近い空間展示をつくりイメージを膨らませてもらう狙いがある。
25年4月にオープンしたミサワリフォーム目黒店は、144㎡のショールーム、135㎡の同社オフィスからなる。ショールームは、子どもを持つ都心のパワーカップルによるマンションリノベーションを想定して作りあげた。リビングとダイニングは仕切りを設けず、家族が互いの存在を感じられる空間とした。リビングには、最近人気という水蒸気式の暖炉を設置。丸くくり抜いた折上げ天井や、暖炉上の壁は左官職人による塗りを施し、直線的になりがちなマンションの内装に有機性をもたせた。リビングの一角には、壁のない「ながらワークルーム」、個室ながらガラス窓を通じてリビングがみえる「集中ワークルーム」の、在宅勤務を想定した2種のスペースを設けた。リビングに向いたキッチンの背後には、大収納のカップボードを設け、すべてクローゼットのように扉で隠せるようにしている。洗濯、アイロンなどの家事効率化を図るランドリールームや、子ども用品の収納や学習スペースなどにもなる組み立て式「蔵収納」など、工夫を凝らしたデザイン、機能を提案し、感度の高い富裕層顧客に訴求する。
こうしたエリアごとのニーズに合わせた空間展示型ショールームを、今後全国各地にオープンしていく予定だ。


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