戸建住宅リノベのトップランナー 設計スタッフが顧客の要望にきめ細かく対応
スタイル工房「アパートメントをコンバージョン、家族みんなの快適住宅へ」
ジェルコ リフォームコンテスト2023において、デザイン部門を受賞したスタイル工房の「アパートメントをコンバージョン、家族みんなの快適住宅へ」。
トップランナーが蓄積してきたノウハウが詰まった戸建リノベの優れた事例である。
スタイル工房は1989年創業。当初は下請けのリフォーム事業者としてスタートし、その後、約15年前に、現在の社名に変更し、設計スタッフが顧客の要望にきめ細かく対応するリノベーションを手掛ける今のスタイルに移行した。ショールームを設けての対応開始も先駆的だった。現在ではリノベーションのトップランナーとしての地位を確立している。三上勝司代表取締役は、「スタイル工房をスタートした20年ほど前はまだ、チラシを使ったリフォーム営業が主流の時代で、設計事務所や工務店も『儲からないし、手間はかかる』と、顧客一人ひとりの要望にきめ細かく対応していくリフォームは、注目されていない時代だった。しかし、現在のスタイル工房のような業態で始めてみると、パッケージのメニューではなく、自分の家を自分の要望通りに設計し、リフォームしてくれることを求めている層が、一定数いることがわかった。きちんと設計をする、設計事務所とリフォーム屋と工務店が合体したようなスタイルで進めていくと仕事の依頼も増え、それに合わせて社員も増えていった。今では80人近くまで増えている」と話す。
スタイル工房の草創のチーフプランナーは設計事務所出身の技術者が多く、確認申請などの技術的な課題にも対応することができる。チーム制でプロジェクトを進めることで、多様なニーズに対応している。顧客の要望に応じて、性能向上リノベーションから部分リフォームまで幅広く対応。性能向上リノベーションでは、顧客の予算に応じて性能レベルを選択できるようにしており、断熱性能の向上や耐震性の向上など、さまざまな要望に対応している。同社が手掛けるリノベーション事例は年間200件超に上るようになり、メンテナンスや修繕を含めるとその数倍になる案件を手がけている。同社HPでは、施工事例一覧を掲載しており、その数は年内に1000件を突破する見込みだ。マンションと戸建の事例がそれぞれ半々の割合となっている。
リノベーション業界全体でも人材不足が深刻化しているが、スタイル工房では社内外のスタッフを育成し、技術力を維持することにも注力。設計から施工まで一貫して行うことができることも強みの一つで、顧客の要望に高いレベルで応えている。三上代表は、「フルリノベと、部分リノベの両輪で事業を発展させていきたい。フルリノベに対応していくためには、当然、設計、施工のそれぞれの技術を継承していく必要がある。数年前に実施した市場調査では、経済的な理由もあるかもしれないが、ライフステージに合わせて、一度に全面リノベーションを行うのではなく、部分リノベを重ねながら、理想の住まいに近づけていきたいというニーズの方が圧倒的に多かった。採用の面でも部分リノベを進めていくことは理にかなっている。最初からレベルが高い人を集めることは難しい。部分リノベに取り組むことは、レベルアップを図るための訓練の場となる。そこで人材が育ち、やがてフルリノベのような難しい仕事にも取り組めるようになっていくので両面で進める方がいい」と話す。
スタイル工房立ち上げから関わってきたチーフプランナーの渡辺ノリエさんは、「20年以上スタイル工房でプランナーをしているが、時代時代でニーズは変わってきている。今は中古住宅を購入してリノベーションするケースに加え、相続で引き継いだ住まいをリノベーションしたいという要望も増えている。また、価格の高騰する新築マンションには手が届きにくくなっている中で、それならば、現在の住まいを充実させたいという人たちも多い。さらに、以前は築40年~50年の古い建物を、大がかりにリノベーションする仕事もたくさんあったが、近年ではリノベーションや建替えが進み、そこまで古い案件は年々少なくなっている。築20年くらいの建物であれば、40年~50年前の建物と比べると耐震や断熱性能も大きく改善されている。その性能の良くなった中でも、自分たちのライフスタイルに合わせたリフォームをしたいという人たちも増えている。仕事の幅が広がっている」と話す。
築古アパートを戸建住宅にコンバージョンする事例も手がけており、その事例の一つ「アパートメントをコンバージョン、家族みんなの快適住宅へ」は、(一社)日本住宅リフォーム産業協会が主催するジェルコ リフォームコンテスト2023において、デザイン部門の全国優秀賞の受賞作品に選出された。
施主の母が所有する、鉄骨造の4世帯からなるアパートを相続、すべての部屋が空くことになったため、4世帯分の部屋を1戸の住宅へとコンバージョンして、施主の4人家族が快適に暮らしやすくしたいという依頼であった。
チーフプランナーの渡辺ノリエさんが設計を手掛けた。4戸の玄関は活かしつつ、自由なプランを実現。「玄関からは小さかったお子様たちのためにクローゼットや洗面へ直行できる動線をつくり、ダイニングの一部は、明るさを確保するために吹抜けとし、そこに家の中心となる階段を新設した。LDKは、吹き抜けに続くキッチンを中心とした広々とした空間を実現し、2階の居室には、室内窓を設置するなど、採光や通風を確保しやすいように配慮した」。
渡辺さんは、「都市部に建つアパートであるため日当たりが悪かった。その問題を解消するために、階段の再構成と共に、吹き抜けを設けるなどの工夫を凝らした」と説明する。階段の再構成は、このリノベーションの重要なポイントであり確認申請も行った。「確認申請が必要なリノベーションは、どうしても手間やコストがかかるが、顧客の要望を叶えるために必要であれば、あえて確認申請を伴うリノベーションの提案をすることもある」。2025年4月以降は、4号特例の縮小により、木造住宅の構造の過半に手を加える大規模改修は、新たに確認申請を行うことが求められるようになった。階段の位置を移動したり新設するような改修は、すべて確認申請が必要になる。確認申請にも対応できる設計スタッフが多数在籍していることは、今後、一層大きな強みになっていきそうだ。
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