2025.6.12

ecomo/log build リモート施工管理が生みだす新たな経営スタイル

品質管理と積算の分離が実現する生産性向上

 

ecomoとlog buildは、リモート施工管理システム「Log System」を開発、生産性を大きく高めてきた。
log buildは住宅事業者に対して「Log System」の提供を通じてそのノウハウを伝授してきたが、その仕組みづくりをサポートするため品質管理や安全管理などを代行する「リモートダイコウ」の展開も始めている。

log build(神奈川県藤沢市、中堀健一社長)が開発した「Log System」は、現場をクラウド上に再現し、移動・再訪・抜け漏れのない施工管理を実現するリモート運用のためのツールだ。建築現場の属人性と非効率を可視化・再設計するために、中堀社長が代表を務めるビルダーであるecomoで蓄積した実務課題解決から出発した。ecomoは8年ほど前からDXを推進、特にオンラインによる施工管理に取り組んできており、現在、社員は18人、一人当たり売上高8000万円程度と、非常に高い生産性を実現している。

中堀健一社長は、インフレ時代に入った今だからこそ、生産性を上げるためにコストコントロールが重要と話す。長くデフレ時代が続くなか原価はどうにか抑えられてきた。しかし、人材不足のなか人件費が上昇し、資材単価も一カ月単位での乱高下が続いている。こうしたなかで、原価管理をおざなりにしコストコントロールができていない工務店が大打撃を受けている。見積段階の原価は日々変わり、着工段階での粗利が5%、10%ダウンすることが当たり前に起こるようになってきているからだ。

原価管理ができていない大きな理由の一つが現場監督の生産性の低さだ。「原価管理は現場監督の仕事の範疇になるが、この長いデフレ下で原価管理をしてきた現場監督はほとんどいなかったのではないか」(中堀社長)と指摘する。現場監督は複数の現場を掛け持ちし、移動時間だけで一日の大半を費やしてきた。原価管理はデスクワークであり、日中の現場作業が終わって帰社した後に行わざるを得ず、必然的に後回しにされてきたのである。

こうした現場監督の生産性を高めようと、開発したのが「Log System」だ。360度カメラとスマートフォンで現場の情報を簡単にVR化、スマートフォンやiPadでクラウド保存された現場空間を遠隔地で自由に動きまわることができる「Log Walk」。ビデオ通話でリモートによる現場チェックを可能とする「Log Meet」により、現場監督が現場に行くことなく、チェックや確認ができるようになる。

品質管理を現場監督から分離
確認の仕組み化が生む多くのメリット

中堀社長は「このインフレ下、工務店はコストコントロールを行う部署を作らなければ経営にならない」と言い切る。そのためecomoは、積算部をつくり現場監督が積算管理を行うようにし、品質管理部をつくり現場監督ではない担当者がチェックや確認を行う仕組みとした。現場でのチェック・確認、立ち合いによる是正などをしっかりと行わなければやり直し工事などが発生、後工程にも響き完工粗利を下げる原因ともなる。この作業を現場監督から切り離したのである。

品質管理に係る部分から解放された現場監督は、デスクワークに専念できるようになる。具体的には、ecomoの現場監督は施主との打ち合わせに参加し、図面や見積もりのチェックなど、着工前の工程の仕事を徹底的に行っている。見積もりの精度が高い現場監督が原材料額、取引額を毎日のようにチェックし社内に共有するため見積もり修正が日々行われ、着工時に価格が崩れているということがなくなった。コストコントールができるようになったのである。さらには、これまで現場から帰ってきて夜遅くまでデスクワークをせざるを得なかった現場監督の働き方改革にもつながった。

この仕組みにおいて大きな鍵を握るのが品質管理部。同部は、たった一人の女性が年間40棟近く、500項目程度のチェック・確認を行っている。さらにこの女性、住宅・建築についての経験は全くなく、同社には営業事務で入社してきた。その〝素人〟を品質管理に配置し、「Log System」によってオンラインによる品質管理、安全管理、進捗管理を行わせた。

具体的には、大工、設備、左官などそれぞれの職人用に作成した施工手順を説明する基準書に基づき、基準通りに行われているかどうかのチェックを品質管理部がリモートで行う。手戻りをなくすため、立ち合いによるチェックは欠かせないが、監督が忙しすぎるとなかなか時間が合わず後回しになるケースもある。しかし、ビデオ通話であれば「今からできますか」と10分の時間があればできる。また、安全管理も品質管理部の仕事で、「Log Walk」により一週間に一回、チェックリストに則って安全パトロールを行っている。

この品質管理部の仕事はさまざまなメリットを生む。現場のチェックや確認を仕組み化することで現場監督のスキルに左右されなくなり、誰が行っても同じ現場品質を確保することができる。また、安全管理を行うことで社員が時間を割いて不定期の安全パトロールをする必要がなくなり、スタッフの生産性向上にもつながる。

さらには「Log System」を活用することで顧客満足度を向上させるという効果もある。ecomoでは360度VRの映像を週一回、施主のスマートフォンに送信、品質管理のチェックもレポートとして送付している。施主はいつでも自分の家の工事の状態を見ることができ、安心感も高まるわけだ。

進捗・品質・安全の管理を代行し
リモート施工管理の立ち上げをサポート

ecomoでは「今では彼女なしでは回らない」(中堀社長)というくらいの役割を果たす品質管理の担当者である山本氏を「やまもっちゃん」と愛称で呼び、「Log System」を導入する住宅事業者に対して「御社のやまもっちゃんを作ってください」と提案している。「Log System」を活用することで現場監督を「現場に行く」という行為から解放し、積算などの前工程の仕事に専念してもらうことで、コストコントロールが機能し始める。そこで欠かせないのが品質管理部に相当する部署であり担当者の「やまもっちゃん」だからだ。

現場監督が現場で行っていたチェックや確認、報告書作成までを、log buildが「Log System」を使って行う「リモートダイコウ」

ただ、どうしても人を配置する余裕がない事業者がいる。また、人を配置しても育つかわからない、現場の職人に撮影させられるか分からないといった不安もある。そこで24年夏頃から始めたのが「リモートダイコウ」だ。

このサービスは、現場監督が現場で行っていたチェックや確認、報告書作成までを、log buildが「Log System」を使って行うサービス。つまり進捗管理、品質管理、安全管理を代行するというものだ。実際に現場に行くよりも人件費は安く済み、しっかりとチェックを行うことができる。その分、現場監督はコストコントロールなどに専念することができる。

log buildでは、これから「Log System」を導入しようとする事業者への新規立ち上げのサポートとして、また、品質管理担当を置いたがどのように進めて良いか分からない、といった導入済みの顧客に対して「リモートダイコウ」を提案。また、コスト削減を目的に活用している事業者もいるという。現在、ハウスメーカーから小規模工務店まで幅広い規模の会社の物件をチェックしている。品質管理の組織なり人材が整うまでは「リモートダイコウ」を行い、準備ができたらそのまま引き渡す。希望があれば引き続きlog buildが代行を続けても良い。例えば、急遽、現場監督や品質管理担当が退職したのでつなぎの間に活用する事業者もいるという。

人手不足、資材費高騰が続くなか、住宅事業者の生産性向上が必須の時代を迎えている。リモート施工管理ツールは、社内の仕組みを再構築することで生産性向上はもとより顧客満足度向上までを実現する住宅事業者の経営改善につなげることができるものといえる。


「段取り八分」を取り戻すためのリモートダイコウ

Log Systemの導入で現場監督がどう変わるか(1棟あたりの工数・コスト削減試算)

※1時間あたり5,000円での換算で記載。

Log Systemの導入で現場監督がどう変わるか(1棟あたりの工数・コスト削減試算)

たとえば、年間40棟を3名の現場監督でまわしている住宅会社では、1人あたり13〜14棟を担当し、多くの業務を抱えています。巡回、進捗確認、品質チェック、発注、施主対応など幅広く、一棟あたり100時間以上かかることもあります。業務が多くなるほど、大事な仕事に手が回らなくなるのが現実です。

中堀健一社長

こうした負担を軽減できるのがLog Systemです。これまで1棟で60回ほど現場に通っていた会社が、Log Walk(360度撮影)やLog Meet(遠隔立ち会い)、リモートオペレーターの活用により、訪問回数が20回以下になりました。しっかり定着している会社では、10回以下の運用も実現しています。

Log Systemは現場に行かなくてよくする道具ではなく、「現場でしかできないことに時間を使えるようにする仕組み」です。訪問回数の削減で、1棟あたり約75時間の余白が生まれます。その時間で、見積や発注、原価管理、職人との調整、施主・近隣対応、トラブル対応など、監督が本来向き合うべき仕事に集中できます。これらはすべて、会社の粗利や信頼に直結する重要な業務です。

さらに、記録とルールが整えば、属人化も解消されます。教育や引き継ぎも「人から人」だけでなく、「記録から人へ」自然に移行し、現場に出続けなくても人が育つ仕組みが整っていきます。

現場監督とオペレーター(リモートダイコウ)の役割分担(比較表)

Log Systemを活用することで、現場監督が担っていた全ての業務をリモート化するのではなく、
現場の価値が高い業務に集中し、チェックや記録などの再現可能業務はオペレーターが担う体制へ移行できる。

現場監督とオペレーター(リモートダイコウ)の役割分担(比較表)

「現場監督の仕事は、段取り八分。」
これは、昔から業界で言われ続けてきた言葉です。

工事が始まる前の準備こそが、現場の品質や工程、そして顧客満足度を決める──だからこそ、監督は本来“前工程”にもっと時間をかけるべき存在です。

ですが今、現場ではどうでしょうか。地鎮祭でお施主様と初めて顔を合わせ、そのまま慌ただしく着工に入る。設計の不整合、納まりの確認、職人とのすり合わせに追われ、「本当はやるべきだった段取り」に手が回らない。それが積み重なって、手戻りや是正、現場の混乱につながってしまう──そんな状況を多くの会社が抱えています。

log buildが提案している「リモートダイコウ」は、そんな今の現場を支えるための“現場管理の一部を代行するサービス”です。
具体的には、Log Systemを活用しながら、進捗確認・品質チェック・安全パトロール・是正指示・記録作成などを、私たちが代わりにリモートで実施します。

「職人さんに撮影をお願いできるか不安」
「社内に運用を定着させる人がいない」
「まずは使える形を見せてほしい」
──そういった声に応えるため、システムが現場に根づくまでの初期フェーズを私たちが伴走し、必要な管理業務を代行するのが、このサービスの本質です。

もちろん、監督の仕事をすべてリモートに置き換えるわけではありません。

むしろ、「監督にしかできない大切な仕事」に集中してもらうために、Log buildが担えるところはしっかりと引き受ける。それが「段取り八分」を取り戻すための、一つの答えだと私たちは考えています。
リモートダイコウは、ITサービスではなく“現場を想う仕組み”です。