エヌ・シー・エヌ、「SE構法」新バージョンで非住宅対応力強化
適応範囲拡大、在来比で壁量4分の1、コストダウンも
エヌ・シー・エヌは、独自の工法「SE構法」の新バージョンを開発し、同構法の登録施工店向けに6月1日から発売する。新技術により構法適用範囲を拡大し、非住宅建築物への対応を強化する。
エヌ・シー・エヌは1996年の創業以来、安心・安全な木造建築普及の実現のため、ラーメン工法を取り入れた独自の木構造「SE構法」を開発、提供してきた。高い耐震性と設計の自由度を保証する同構法は登録工務店を通じて全国に広がり、25年3月末までの累計供給数は3万986棟にのぼる。近年は中大規模木造建築の需要拡大の中で、非住宅での引き合いも大きく伸びている。
今回発表したSE構法バージョン3は、厳しい住宅市場の中で商品をより差別化したい、あるいは非住宅建築に挑戦したい顧客に向けて開発されたものだ。田鎖郁男社長は「住宅着工が減り、インフレが進む中で、ローコスト住宅は減少し、高い性能と高いデザイン性のニーズが増えていく。一方で、多くの工務店やハウスメーカーは非住宅へのシフトも計画している。技術開発を通して、大規模木造建築への挑戦と高性能なデザイン住宅づくりへのシフトチェンジを支援していきたい」と狙いを語る。このバージョンアップに向け、田鎖社長は社内の技術者に対して、大型木造建築への対応力強化、建築基準法改正による設計・デザイン制限への対応、それぞれコストを上げずに実現することを求めた。2015年ごろから研究を開始し、約10年の試行錯誤を経て、すべてを叶える新構法が完成した。
G‒BOARD+TN釘による高耐力壁実現
特に非住宅への対応を強化するため、様々な部品を改良した。まずは大規模建築を可能とする180㎜角の集成材をラインアップに加えた。プレカット工場も25年に新たに3工場の稼働を開始し、全国13工場のうち9工場に大断面加工機(フンデガー)を導入するなど供給体制も同時に整えた。150㎜角以上に対応する高耐力柱脚金物も開発し、従来の2.2倍にあたる性能を実現した。

さらに木質廃棄物を原材料とする構造用パーティクルボード「G‒BOARD」を標準採用した。同ボードはEPD認証を取得した東京ボードの佐倉工場で製造されている。G‒BOARDの性能を最大限に引き出すため、専用の「TN(Tough Nail)釘」も開発した。これまで使用していた釘より径を太くし、特殊なスクリュー形状とすることで、1本あたりの耐力を向上。この新たな釘だけでも開発に2年を要したという。このG‒BOARDを利用した場合の壁倍率換算は11.7倍。在来工法壁合板の2.5倍、従来のSE構法の6.8倍を大幅に上回る高耐力壁が実現した。これにより、地震時の建物変形を大幅に軽減し、壁量を減らした大空間の設計が可能となる。田鎖社長は「在来比で壁量を約4分の1にすることができ、市場に対して大きなインパクトとなるだろう」と期待する。
木材同士をつなげる金物も見直し、特許製法のプレスリングを採用することで金物幅を77㎜から61㎜にスリム化、重量も4.6㎏から3.95㎏へと軽量化した。製造過程において溶接工程もなくしたため、コストダウンにもつながった。
4月1日付けで(一社)日本建築センターから新たな構造評定を取得、適用範囲も拡大した。階高は4.5mから6.0mとなり、上限3000㎡だった延床面積と上限12mだった最大スパンがそれぞれ制限なしとなった。技術開発部の藤代東部長は「構造計算によって確認することができれば、制限を外していいと評価をいただいた。ただ、運搬の問題もあり、可能なのはトラックで運べるサイズまで」と説明する。
新バージョンの技術は、昨年9月にオープンした無印良品の2つの大型店舗に既に活用されている。無印良品唐津、日田両店舗は2000㎡超の木造平屋建築で、いずれも6mスパンのフレームを基本としており、柱は180×360㎜の2枚合わせ、梁は180×500㎜の2枚合わせとした。完成した店舗はすべて、柱と梁が現しになっており、SE構法新バージョンによる非住宅建築の可能性を示す例といえる。
年間供給目標は大規模・非住宅150棟、住宅1150棟
コストダウンにより住宅1棟あたりの売上は減るが、特に1案件あたりの受注額が大きい非住宅の供給を増やすことで売上増加につなげる。田鎖社長は「使う材料が減るので、合板自体の売上は減る。一概には言えないがイメージとしては住宅1棟あたり3万~5万円ぐらいのコストダウンになる。使いやすく、コストが下がらないと結局は使ってもらえないため、とにかく性能向上とコストを抑えることに努めた」と話す。年間供給目標は、大規模・非住宅で150棟、住宅1150棟の計1300棟としている。
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