ファミリー層の多い神戸・垂水で文化住宅を生かしたひとり親世帯応援住宅
For nest 旭が丘プロジェクト(ジェクトワン)
ジェクトワン(東京都渋谷区)が神戸市垂水区で、関西地方特有の縦割りアパートである〝文化住宅〟をリノベーション。ひとり親世帯支援住宅として活用する。
「文化住宅」とは、第二次世界大戦後の高度経済成長期に、関西地方を中心に建築された木造二階建て、棟割りアパートのこと。大正時代の急激な人口流入で大阪市内は膨張状態であったため、大阪市内へアクセスしやすい周辺地域に、地方から働き口を求めて多くの人々が移り住んだ。それまでの共同住宅は、風呂なし、トイレ・台所共用、玄関一つで各住戸は中廊下でつながっているものが一般的であったが、「文化住宅」は、各戸に独立した玄関があり、トイレも台所もついていることが多く、当時の最新式という意味で〝文化〟をつけて呼ばれたといわれている。
しかし、長い時間の中で多くが空き家となり壊されている。一方で、その建物の構成からアパート以上に密接な近隣関係を構築しやすく、空き家活用の舞台として注目度は高い。例えば、アーティストたちの職住拠点など人との近さが相乗効果を生み出すことを期待する施設に運用されることが多いという。

ひとり親世帯が住み心地の良い住まいへ
ジェクトワンは、立地条件や建物の特徴を生かした空き家活用事業「アキサポ」を運営しており、買取だけでなく、売らずに活用したいというニーズに対しても提案を行っている。定期借家契約のもと所有者が空き家をアキサポに貸すと、アキサポが費用負担をしてリノベーション工事を行い、一定期間、利用者へ転貸する。所有者には毎月決まった家賃収入が入るほか、契約期間終了後はリノベーションにより資産価値が向上した物件が返却される。
対応地域拡大のため、2023年3月に大阪支店を開設したが、23年度実績では空き家解決数全体の約2割が京阪神エリアとなるなど、関西エリアでも事業が急拡大している。
今回のプロジェクトで活用することになった文化住宅は、兵庫県神戸市垂水区の高台に位置する。所有者である相談者の母親が施設に入居後、建物の保全管理が難しいことからジェクトワンに活用を希望する相談があった。建物への思い入れがあるためすぐに売却をする意向はなく、初期コストを抑えつつ地域に貢献できるような建物にしてほしいとの要望であった。
建物は、相談者の母親とその親族が住んでいた戸建1戸と文化住宅4戸が組み合わされて出来ている。築54年で、文化住宅のうち3戸は15年以上空き室となっていた。通常の戸建住宅よりも規模が大きく、老朽化も進んでいたため、多額の工事費用が見込まれた。こうしたなか、国土交通省が行っている「人生100年時代を支える 住まい環境整備モデル事業」を活用することで、初期コストを抑えながら、建物を甦らせることに成功した。


同事業は、ライフステージに応じて変化する居住ニーズに対応して、高齢者、障害者、子育て世帯など誰もが安心して暮らせる住環境の整備を促進するため、モデル的な取り組みに対して支援を行うもの。物件のある垂水区は神戸市内でもひとり親世帯が多い地域で、市内の母子家庭の15・8%、父子家庭の15・5%が同地域に居住している(平成31年3月 神戸市「ひとり親家庭実態調査」)。ひとり親世帯の住環境への悩みとして「子どもが集中して学習するスペースがない」や「子どもの声が迷惑にならないか」といった声が挙げられることから、ひとり親世帯が程よい距離感で助け合うことができ、住み心地のよい住環境を提供することを目指した。賃料は管理費込で5万6000円~5万8000円。対象は未就学児~中学生の子どもを持つひとり親を想定している。
古い建物を面白がって愛着を生む
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