2024.7.23

アールシーコア、営業利益10億円を目指す経営ビジョン

住宅に加え非住宅、移住促進など「オアシス業」戦略で巻き返し

執行役員の壽松木(すずき)康晴氏が代表取締役社長に就任し、創業者で前社長の二木浩三氏が代表取締役会長となった。4期連続の営業損失と苦しい経営状態が続いているが、新たな経営体制のもと、「オアシス業」戦略で盛り返しを図る。

経営ビジョンを説明する壽松木康晴代表取締役社長

壽松木康晴氏の代表取締役社長就任が6月20日の株主総会で正式に承認され、新社長就任とともに新たな経営ビジョンを発表した。これまで注力してきた新築戸建て住宅事業に加え、今後は非住宅事業、リゾート開発、地方自治体と組んだ移住促進活動など多角的に事業を展開する「オアシス業」を進めていく。壽松木社長は「現代社会で心が乾いている人に我々は潤いを提供することができるかもしれない。それはいわばオアシス作り。ブランド価値に自信を持ち、世の中の役に立つということを認識して生かしていく。こうした外向きの志向性を持つこと自体が、内向きだったアールシーコアにとって不足していた部分で、大きな方針転換。これを進めていくことが新社長の私に課せられたミッション」と決意を語った。

23年度決算(24年3月期)は売上高121億4200万円(前期比12.9%減)、営業利益4億9600万円の損失となり、4期連続の営業損失と苦しい状態が続いている。一昨年から財務再建に関わってきた壽松木氏は、社長を引き継ぐにあたり、「まずまっさきに頭に浮かんだのは、利益体質へと強化すること」。1999年から旗艦展示場としてきた代官山の土地を売却するほか、社内の財務整理も進め、ここにきてようやく「筋肉質な企業に生まれ変わった」と自負する。コロナ禍中は、対面接客やモデルハウスでの体験提供が限られたことで売り上げ減となったが、そうした市場環境に左右されない企業を目指す。「最低10億円の利益が出る体質にしていかなければいけない」と、創業以来到達したことのない営業利益10億超えを目標に掲げた。

戸建ては800棟/年を目指す
地域活性化で自治体と連携も

まず取り組むのは、BESSブランドの核である戸建事業の立て直しだ。20年以降、コロナの影響で集客に苦しんできたが、商品のリニューアル、オウンドメディアの充実などが奏功し、23年度の新規来場者数は前年同期比116.5%、受注棟数は438棟(前年度343棟)と上向いた。昨年10月に発売した縁側と独特の外観が特長の「三角WONDER 間貫けのハコ」も好評で、モデルハウスの増築に伴い、各地の展示場「LOGWAY」の集客が伸び、3、4月の売り上げは好調だった。問題は営業担当者が最盛期の半分となり、販売機会を損失している点だ。まず直営3拠点から営業の採用、育成を進め、コロナ前に達成していた年間800棟販売を目指す。

また、非住宅事業にも注力する。脱炭素社会の実現に向けて木造建築に関心が集まる中、「あきらかに非住宅分野におけるBESS事業の需要が増えている」と壽松木社長。23年12月には、日本初となる防火地域での3階建てCLTログハウスを東京都福生市で竣工。木材現しのログハウスは従来2階建てまでしか建築できなかったが、23年2月に「90分準耐火構造認定」を取得することで3階建てを実現させた。また、この6月には富山県富山市に、CLTログハウス造りの保育・子育て支援施設も竣工。地域の交流スペースやリモートワーク設備を備えた施設で地域住民に活用される予定だ。この2件はいずれも、(一社)ログハウス協会の令和6年度のコンテストで賞を受賞した。壽松木社長は「リゾート施設をログハウスで建てたいといった依頼は増えているが、現場を監理する資格者の確保が追い付かず、全てを受けきれていない状況。特建事業の売上高は年間10億円~20億円の規模だが、体制を強化して2倍、3倍に増やしていきたい」と話す。

昨年10月から販売する「三角WONDER 間貫けのハコ」
今年富山県富山市に竣工したCLTログハウス造の保育・子育て支援施設

また、ブランド力を生かして各自治体や企業とつながる動きも進めている。23年5月には長野県小諸市と「移住定住促進を軸にした地域活性化に向けた連携に関する協定」を締結した。同市内で、BESSが掲げる「梺(ふもと)ぐらし」(自然を身近に感じる大らかな暮らし)をテーマにした分譲地を開発し、既に全20区画を完売した。こうした取り組みが他市町村からも注目されており、現在小諸市以外の市町村とも協定の話を進めているという。リゾート施設の需要も高まっており、タイムシェア別荘など、今後案件はさらに増えていきそうだ。

今年4月からは「歳時住宅」と名付けるストック事業を本格的に開始した。BESS住宅の経年価値を独自の査定基準を用いて適正に評価するもので、中古仲介や、リフォーム、メンテナンス事業を行う。新築購入者にとっては、将来、家を手放す際の安心材料となる。また、住宅の価格上昇で手が届かなくなった客層にBESSの適正価格の中古住宅を提供するという両方の狙いがある。BESSファン同士で承継ができる仕組みを実現することで相乗効果を狙う。谷秋子取締役は「買取りでリスクを抱えるのではなく、仲介の中で独自評価をする仕組みで、東京で始めて全国に広げている最中。早めに200、300棟にもっていきたい」とした。

独特な商品名や、暮らしの提案など、二木会長が創業以来進めてきた尖ったブランド感覚は変えない。省エネなど時代の要請に対応し、引き続き二木会長のアイディアを生かしながら、年1回以上のペースでリニューアル商品や新商品を発表する目標も掲げた。

「唯一無二のブランドとしてあり続け、その存在価値を高めていくために、あえて厳しい道を進んでいきたい」(壽松木社長)と、オアシス業で復活を期す。

“内向き”から“外向き”へと方針を転換
二木浩三代表取締役会長

二木浩三代表取締役会長

これまでは私が強引ともいえるやり方でやってきたが、今後は会長として戦略面からサポートしていきたい。自分が引っ張っていくのではなく、経営陣からリクエストがあった時に対応する。これまでは意図した「内向き」の戦略、分かってくれる人だけでいい、という方針でやってきた。これからは逆に「外向き」になり、様々なきっかけから外部の方々と手を組んでやっていきたい。