夏の住まいで涼しく暮らす
宅内熱中症と省エネを両立する
間もなく夏本番を迎える。
近年、毎年のように最高気温の記録更新が各地で続く。
エネルギー負荷低減で省エネが強く求められる反面、エアコンの使用を我慢することでの宅内熱中症が後を絶たない。
「夏を旨とすべし」と書かれた頃とは住宅のつくりも社会環境も大きく異なる。
しかし、“夏を快適に過ごしたい”という思いに変わりはない。
今、夏を快適に過ごすため、住宅にどのような工夫が求められるのか。
高気密化・高断熱化が急速に進むなかだからこそ、あらためて問われている。
今回は、外からの熱を遮る、日射を遮ぎる、という視点から商品や技術を追った。
屋根・壁で熱を反射する
遮熱塗料の効果で室内温度を抑制
屋根外壁からの暑さ対策で塗料による効果を得られるのが、遮熱塗料であろう。
ここでは遮熱塗料の市場動向と性能メカニズム、一般的な効果、代表的な塗料製品について紹介する。
夏場の住環境を快適に過ごすためには、屋根・外壁を「遮熱塗料」で塗り替えることも選択肢の一つだ。遮熱塗料は、屋根や外壁に塗るだけで室内温度の上昇を抑える機能を備えた塗料である。(一社)日本塗料工業会の2019年度の推計によると、国内で毎年3万5,000㎡の遮熱塗料が施工されている。これを住宅屋根に換算すると58万件に相当するほどだ。遮熱塗料の出荷数量も2021年度には過去最高を記録。2022年度の出荷実績は1万4,663tで、前年度を下回ったものの、建築塗料全体の出荷量に対して約5%前後を占める量まで伸ばしてきた。遮熱機能は一般的になってきており、各メーカーの商品ラインアップも充実してきている。しかし、工場や倉庫などの非住宅需要が市場を主導してきた面もあり、一般消費者への認知度向上は、依然として課題がある。性能・機能の理解が深まれば市場はまだまだ広がりそうだ。
遮熱塗料は一般塗料よりも太陽光のエネルギーのうち、近赤外波長域の反射率を高めている。屋根に塗装した場合、熱の元となる太陽光に含まれる赤外線を塗料に含まれる遮熱顔料により反射させ、屋根の温度上昇を抑える仕組みだ。これにより、室内の温度上昇を抑制し、快適な住環境をつくりだす。同時に、屋根の温度上昇を防ぐことで、省エネにつながり、屋根材の劣化速度を遅くする効果も生む。
遮熱塗料はよく断熱材と比較されるが、熱を制御するメカニズムが違う。遮熱塗料は、太陽光のエネルギーを反射させることで、熱を発生しにくくする効果がある。一方、断熱材は熱を室内に伝わりにくくする効果をもたらすが、一般的に表面温度の上昇を抑制する機能は備えていない。
では、遮熱塗料の効果はどれほどなのか。塗料メーカーのカタログ値では、その遮熱効果は「屋根の表面温度を約マイナス20℃」下げることや、「室内温度を約2.5℃低減」できる事例が紹介されている。ただし、その効果は物件や材質、塗料の種類や塗色などで大きく異なる。特に塗色により遮熱塗料の効果に大きな影響をもたらす。濃彩色(暗い)よりも淡彩色(明るい)の方が遮熱効果を得られると言える。ただ、日本の一般戸建住宅の屋根は濃彩色が伝統的に多く、昨今では外壁にも高級感やモダンなデザインによる濃彩色の住宅が増えてきている。こうした物件でも同色で塗り替えるとなれば、一般塗料よりも遮熱塗料は室内に入る熱の割合が20~40%も削減できるため、遮熱効果を実感できることだろう。
各メーカーは屋根と外壁両方を遮熱仕様とすることで、建物全体での熱緩和提案を実施している。この効果により夏場の冷房費も抑えられる効果をもたらす。消費者認知のために、こうした性能・機能を理解してもらえるよう、塗料製品のカタログもわかりやすいものに刷新されてきている。さらに、自社WEBサイトに遮熱塗料の専用ページを設け、製品のQ&Aを発信しているメーカーも増えてきた。
アレスダイナミックTOP遮熱
赤外線と紫外線を制御し外壁表面の温度上昇を抑える
遮熱タイプの外壁用塗料
住宅の塗り替え市場において、CO₂削減や光熱費低減、長期美観維持などのニーズから、遮熱性能や外壁の汚れにくさを求める声が増えている。
「アレスダイナミックTOP遮熱」は、同社独自の技術「ダイナミックIRブロック技術」により、熱を発生させる赤外線を反射する。具体的には、赤外線を反射させる特殊顔料配合の上塗りと、赤外線反射機能の優れた下塗りを組み合わせることで、上塗り部分を透過した一部の赤外線も反射させ、外壁の表面温度の上昇を抑制する。また、酸化チタンに紫外線が当たることで発生する塗膜劣化要因のラジカルの発生と活動を抑制し、塗膜の耐候性を飛躍的に向上させる「ラジカル制御技術」を採用。塗膜の劣化を抑制し、外壁を長期間にわたって保護できる。
関西ペイント
03-5711-8904
https://www.kansai.co.jp/alesdynamic/
サーモアイSi
上塗りと下塗りのダブル反射で高い遮熱性を発揮
省エネと節電に貢献する屋根用遮熱塗料
サーモアイシリーズは、上塗りおよび下塗り塗料に遮熱機能を付与し、「ダブル反射」技術により高い遮熱効果を実現する。上塗りには遮熱機能だけでなく、同社技術の「赤外線透過テクノロジー」を採用。上塗り層で反射できない赤外線をなるべく吸収させずに透過させ、下塗り層まで到達させることで下塗りの遮熱性能との相乗効果を発揮する。太陽光の赤外線を効率良く反射し、夏場の屋根面の温度上昇を抑制し快適な環境をつくる。「サーモアイSi」(対象色:クールホワイト)は、屋根用塗料では初の環境ラベル「エコリーフ」認証を取得した。世界的にカーボンニュートラルへの対応が進むなかで、建設業界でも温室効果ガス排出量の把握、および削減ニーズが高まっている。エコリーフ認証を取得したことで、より質の高い環境情報の提供を行うことができる。
日本ペイント
03-5479-3614
https://www.nipponpaint.co.jp/products/building/49/
窓から日差しを遮る
オーニングやシェードが生む快適さ
夏に室内の温度上昇を抑えるためには、
窓の外側での日射を遮蔽するオーニングやシェードが有効だ。
機能やデザインなどさまざまな商品が開発されており、ライフスタイルにあわせて選ぶことができる。
夏の温度上昇を抑える、冷房効率を高めて省エネ化を図る、そのためには外からの厳しい日射を遮ることが重要となる。この日射遮蔽は、カーテンやブラインドなどを使って室内側で行うよりも、窓の外側で行う対策の方が効果が高いことがわかっている。
窓の外側で日射遮蔽を行う商品としては、オーニングやシェードがある。オーニングは取りつけたアームにより生地を張るもの。アームにより角度や張り出し幅を調節できることが特徴だ。また、自動開閉などの商品も販売されている。一方、シェードは金具やひもなどにより取り付けるもので、オーニングに比べて安価。また、生地の網目が大きいことから日差しをやさしく遮るといった特徴を持つ。これら以外にも外付けブラインド、スラット付き窓シャッターなども日差しを遮る効果を持つ。
オーニングやシェードの設置により、窓から直接日射が入らない、窓の外側に日陰ができ温度が下がる、窓そのものの温度上昇を抑えることができるといった効果を生む。例えば、(一社)日本オーニング協会によると、夏場に太陽光が差し込む部屋のエアコン稼働率は、カーテンやブラインドの設置で26%低減できるが、オーニングを設置した場合は67%も低減することができる。つまり冷房費用の約3分の2をカットできるということだ。
こうした商品について、各メーカーはさまざまな付加価値を加えている。例えば、オーニングであれば、アームの稼動の仕方を工夫、生地の勾配をよりフレキシブルに調整可能とし、季節ごとの日差しの変化に柔軟に対応できるようにしたもの、センサーで自動で開閉できるもの、また、オーニングにシェードを組み合わせ、上方向だけでなく前方向からの日差しを遮るようにしたものなど色々な工夫が施される。シェードも使用しない時に収納できるようにしたものなど機能性向上が進んでいる。
オーニングやシェードの生地もさまざまだ。より熱を遮り温度上昇を抑える、また、紫外線をカットするといった生地自体の機能向上が進む。また、住宅とのコーディネイトを重視し、豊富なカラーバリエーションを揃えるメーカーもある。
また、その施工についても、後付け可能でリフォームに適した商品などもラインアップされている。
オーニングやシェードは、日差しを遮るだけでなく、防水効果がある生地であれば雨除けにもなる。また、外からの視線を遮ることからプライバシー確保にも役立つ。
今、ベランダや庭先といったアウトドア空間と居室をつなげ、暮らしの価値を生み出す中間領域の活用提案が進んでいる。オーニングやシェードを開くだけで、ベランダなどがプライベートなゆとりある空間に早変わりする。
暑い夏場の日射遮蔽はもとより、一年を通じて豊かな住空間を生み出す魅力的な商品といえよう。
カフェリオ
日射と赤外放射を大幅にカット
フレキシブルに角度を調整できるオーニング
「カフェリオ」は、日差しを遮るロールタイプと、メッシュキャンパスで目隠し効果をプラスしたロールシェードタイプをラインアップするオーニング。オーニングの使用により日射と赤外放射を大幅にカット、室内のエアコンの効きを高め、省エネに貢献する。
ロールタイプ、ロールシェードタイプともに、左右のアームを別々に変化させることで、フレキシブルにキャンパス勾配を調整することができる。季節によって異なる日差しの変化に合わせてキャンパスを開閉することや、日差しの角度や敷地条件に合わせて角度を調整することも可能だ。ロールシェードタイプは、「オーニング+シェード」「オーニングのみ」「シェードのみ」と3パターンでの使用が可能。ライフスタイルやその日の気候に合わせて使い分けできる。
三協立山
0120-53-7899
https://alumi.st-grp.co.jp/products/deck/awning/caferio/
ボスコ スウェーデン
日差しの変化に合わせて角度や開閉の調整も簡単
北欧の雰囲気が感じられる窓用・テラス用オーニング
「ボスコ スウェーデン」は、北欧の雰囲気が感じられるシャープで軽快なフレームが印象的な窓用およびテラス用のオーニング。角度調整が簡単で、キャンバスの開閉も好きなところで固定できるようにしているため、日差しの変化に合わせた微調整も簡単に行える。
間口は0.8mから4mまで、出幅は0.6mから1.2mまでとなっており、さまざまな窓に対応できるようにサイズバリエーションを豊富に揃えている。また、キャンバスカラーは規格品で15色から、フリルの形状は3種類から選ぶことができ、壁面とのカラーコーディネートも行いやすい。
壁付型のほか、後付けしやすく設置場所も選ばない自立型も揃えている。風力や陽光の当たり方で自動開閉するセンサータイプとすることもできる。
タカノ
0120-85-3091
https://www.takano-net.co.jp/exterior/
エルパティオ・プラスRS
角度調整付きの暑熱対策機能に加え、
ロールスクリーン搭載で“くつろぎ感”を演出するオーニング
「エルパティオ・プラスRS」は、独自の3Dアームによる角度可変機能を実現したオーニング。左右のアームを15°~35°の幅で別々に変化させることで、西日などの日射角度に対応しつつ季節や時間帯によって日射遮蔽機能を発揮する。
RS(ロールスクリーン)タイプは、オーニングとスクリーンシェードを一体化した商品で、上方向の日射はオーニングが遮り、前方向からの日射はロールスクリーンが遮る。加えてオーニングを収納しロールスクリーンのみを簾のように使用することも可能だ。これにより日射遮蔽機能と近隣の視線を気にすることなくアウトドアリビングが楽しめる空間を創造ができる。オーニング本体色2色天幕生地の色は25色、ロールスクリーンは通気性に優れるメッシュ生地4色から選べる。
BXテンパル
0570-010-086(ナビダイヤル)
https://www.tenpal.co.jp/
スタイルシェード
“外付日よけ”で、太陽の熱を窓の外側でカット
デザイン性に富み、後付けも可能なシェード
「スタイルシェード」は、窓の外側で日差しをカットできる“外付日よけ”。取り付けることで太陽の熱を83%※1カットし、室内の温度上昇を抑制。冷房効率が高まるため、節電にもつながる。
操作は窓の上のボックスからサッと引き下げるだけ。使用しない時はすっきり収納できる。設置したり外したりという手間がない。施工は1窓あたり約30分※2。後付け可能で、リフォームにも最適だ。対象のサッシ、シャッター付きサッシでは、サッシ枠に引っ掛けて取り付ける「アナノン構造」を採用※3。メーカーによらず、ドライバー1本で取り付けできる。
日射遮蔽はもちろん、紫外線カットや目隠しなどさまざまな機能を付加した専用生地をラインアップ。デザイン性も富み、用途やライフスタイルに合わせて選べる。
LIXIL
0120-126-001
https://www.lixil.co.jp/lineup/window/styleshade/
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