2024.6.19

木構造デザイン、児童養護施設「星美ホーム サローネ」プロジェクトが完成

難しい木構造、構造設計と生産の「つなぎ役」として貢献

児童養護施設「星美ホーム サローネ」(東京都北区)が完成した。木造軸組工法の一般流通材を使用しコストを抑えつつも、特殊な屋根構造のため試行錯誤が続いたが、同社が構造設計と生産の「つなぎ役」となりサポートした。

エヌ・シー・エヌの関連子会社である木構造デザインが関わった児童養護施設星美ホーム「サローネ」プロジェクトが完成した。

同施設は社会福祉法人扶助者聖母会 星美ホームが運営。保護者のいない子どもや虐待されている子どもなどを自立まで養護する児童養護施設として約80年の歴史を持つ星美ホームには、かつて子どもたちが日々遊び、クリスマスなど特別な日には劇を催す建物「サローネ」があったが、18年老朽化のため取り壊された。

再建にあたり星美ホームは、新進気鋭の建築家、藤原徹平氏が率いるフジワラテッペイアーキテクツラボに設計を依頼。単なる生活空間ではなく、遊戯の場などを設けたいという星美ホーム側の要望で、国が規定する児童養護施設の基準からは外れ、助成金補助の対象にはならなかったが、星美ホーム関係者を中心に寄付を集め、多くの人の協力をもらいながら、新しい「サローネ」の計画を進めた。

「コスト削減」と「大空間の創出」の両立という依頼を受けて、フジワラテッペイアーキテクツラボは、在来工法をベースに90角の柱など、一般流通材を多用しコストを抑え、また、三角トラスを多用し、約6mの高さを持つ広々としたホール空間を創出するプランを提案。特殊な構造のため、木材調達、加工、さらに施工の難しさが課題となった。そこで白羽の矢が立ったのが木構造デザインだ。

木構造デザインは「中大規模木造建築、特に特殊な構造プランの場合は、構造設計とプレカット、そして施工、プランを現場で実現するまでの『あいだ』の役割を担う人材がまだまだ少ない。構造設計から木材調達、加工、施工までサポートできる会社が求められていた」(福田浩史社長)と立ち上げられた会社だ。それだけに今回のプロジェクトにおいても「設計者の感性を崩さずにどう生産の実務につなげていくのか、我々の真骨頂を発揮することができた」(福田社長)と話す。同社がプレカットできる業者を探し、応じたのが日本の集成材業界のパイオニアであるティンバラム社。その工場と何度も調整し、現場へとつなげた。

フジワラテッペイアーキテクツラボ 設計チームの中村駿太氏は、「一般流通材を使い、住宅を得意とする工務店が作れるレベルにすることで、建築費を下げられる。ゼネコンが入らないでつくれるものを目指した。登り梁を回転させながら組み上げる難しい加工、施工が求められたが、現場で大工とやり取りをして微調整できることも木造の良さ」と話す。

新設された「サローネ」は既に利用されており、藤原徹平氏は「シスターも子どもたちも喜んでくれ、手をかけて作ったことを感じてくれている。子どもたちへのギフトにできた」と手応えを語った。